国立感染症研究所

掲載日:2021年4月15日

第30回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年4月14日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第30回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日ベースでは、3月上旬以降増加が続いており、直近の1週間では10万人あたり18人となっている。関西圏での急増に伴い、3月下旬から増加率も高くなっている。新規感染者数の増加に伴い、3月下旬以降重症者数も増加が継続している。 

実効再生産数:
全国的には、2月下旬以降1を超えており、直近(3/28時点)で1.18となっている。3/27時点で宮城は1を下回っているが、1都3県、大阪・兵庫・京都、沖縄では1を上回る水準となっており、特に、大阪・兵庫・京都では、1.54となっている。

影響が懸念されるN501Yの変異のある変異株(VOC)の感染者の増加傾向が継続。特に、大阪、兵庫で多くの感染が確認されており、機械的な試算ではあるものの、スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合が高い水準で推移しており、周辺自治体でも変異株(VOC)による感染者数が増加している。さらに関西だけでなく、東京、愛知など多くの自治体でもその割合が上昇し、急速に置き換わりがおきつつある。

地域の動向

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

①首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は3月中旬以降増加が続き、約25となっている。変異株(VOC)割合も上昇。神奈川、埼玉は4月に入り増加の動きが見られ、千葉は、横ばいから減少傾向だが、東京近辺で感染者数が高い水準となっている。東京では、3月中旬以降入院者数が増加に転じ、病床使用率も上昇し、入院・療養等調整中も増加傾向。
②関西圏・中京圏・九州
関西では変異株への置き換わりが進んでいる。また、全世代で感染者が増加しているが、特に20-30代が増加している。大阪、兵庫では3月中旬以降感染が急速に拡大し、京都、奈良、和歌山でも3月下旬以降大きく増加。大阪では、増加率の低下は見られるものの、大阪市内以外でも感染が拡大しており、新規感染者数も約71となっている。大阪、兵庫では、新規感染者数の増加に伴い、病床使用率、重症病床使用率とも上昇が継続しており、医療提供体制が大変厳しい状況となっている。愛知でも3月下旬以降20-30代を中心として新規感染者数の増加が継続し、約15人となっており、増加率も高い水準が続いている。福岡も4月に入り増加の動きが見られ、増加率も上昇している。
③上記以外の地域
沖縄では3月下旬以降感染が急速に拡大。増加率の低下は見られるものの、新規感染者数は約57となっている。感染者は20-50代が多いものの、入院者数も増加。宮城、山形では感染が急速に拡大していたが、3月末以降減少に転じ、新規感染者数は、それぞれ約27、約15となっている。山形では、高齢者の割合が増加し、足下で下げ止まりが見られており留意が必要。福島では20-30代の感染者が急増。その他の地域の中でも、クラスターの発生等により感染者数が急速に増加する地域が生じている。四国でも愛媛で20-30代の感染者増加によりが高止まり、徳島でも増加が継続。

感染状況の分析

感染が拡大している自治体において、20-30代の増加が中心となっている地域が多い。今後、高齢者層への感染の波及が進むと、重症者数の増加につながる可能性が高い。

感染の状況は、全国一律ではなく、地域ごとに異なっており、全国的なトレンドだけでなく、それぞれの地域での感染の動向を踏まえた対応が必要。

関西圏での感染拡大が強く懸念される状況が継続。大阪・兵庫だけでなく、周辺自治体でも感染者数が増加している。周辺でも変異株による感染者数の急速な増加に注意が必要。大阪では人流の減少傾向が見られるものの、新規感染者数の減少に繋がるには一定の期間を要すると考えられ、今後も感染拡大が継続し、入院患者数も増加することが予想される。医療提供体制は既に厳しい状況にあり、更なる対策の徹底と支援が求められる。

首都圏では、東京で緊急事態宣言解除後夜間滞留人口が急増した。その後減少に転じたものの、20代、30代の感染は拡大し、全体でも感染者数の増加が継続。大阪、兵庫を中心とした関西圏では、緊急事態宣言措置等による時短要請等が解除されてから人流が拡大し、解除後3週間程度で感染拡大がみられた。東京では、スクリーニング検査による変異株(VOC)の割合が上昇傾向にあり、東京を中心とした首都圏でも、関西圏と同様、今後、感染拡大の継続や急拡大が懸念される。

愛知では、3月下旬以降20-30代を中心として感染者数の増加が続いており、 スクリーニング検査による変異株(VOC)割合も上昇傾向。近隣の三重や岐阜でも感染者の増加が見られており、今後の感染拡大が懸念される。

沖縄では、県独自の対策が始まり、感染者数の伸びには鈍化が見られるものの、引き続き増加傾向は継続、若年層を中心とした感染拡大が見られる。いずれも、引き続き今後の推移に留意が必要。

クラスターの発生場所は多様化しており、医療機関、福祉施設、学校、職場、飲食店、会食、スポーツ関連などがある。注意すべきクラスターとして、昼カラオケ、飲食店なども継続している。

必要な対策

感染の急拡大を受け、まん延防止等重点措置区域とされた地域(宮城、東京、大阪、京都、兵庫、沖縄)では、同措置の適用に当たって講ずべきとされた、飲食店に対する20時までの時短要請等、飲食店への見回り・働きかけの徹底、重点検査、医療提供体制の確保、飲食店へのカラオケ設備の利用自粛要請といった取組を着実に行うことが必要。特に、大阪、兵庫では、多数の感染者数が発生している中で変異株(VOC)の報告も増加。既に、医療提供体制が厳しい状況であるが、今後も増加が予想される重症者の病床や従事者の確保が最優先で求められる。国からの支援も機動的に行うことが必要。大阪市内以外や近隣の京都、奈良、和歌山でも感染が急速に拡大しており、人の移動に伴う変異株の他地域への流出を出来るだけ防ぐためにも、不要不急の外出や移動を避けることが必要。また、感染状況、人流の変化、医療提供体制などを注視して、必要な場合には、速やかに適切な対策を追加することが求められる。さらに、感染拡大の要因の分析とそれを踏まえた対応が必要。

首都圏では、東京で増加が継続し、埼玉、神奈川でも増加が見られており、夜間滞留人口の動向、変異株検出割合などからも今後の動きが強く懸念される。緊急事態宣言解除後の関西圏と同様、東京だけにとどまらず、周辺自治体も含め、感染の急速な拡大が生ずる可能性もある。感染状況に応じた十分な対策を遅滞なく行うとともに、感染の再拡大を前提とした検査・相談体制、宿泊療養、自宅療養を含めた医療提供体制を速やかに整えることが必要。

愛知をはじめ、その他の感染が増加している地域でも、感染状況を注視し、必要な感染抑制のための取組を、速やかに実施していくことが必要。飲食店に対する適切な時短要請や飲食店への見回り・働きかけの実施、外出自粛要請、検査を遅滞なく実施できる体制の拡充、濃厚接触者および感染源の迅速な調査などの対策が求められる。その上で、更なる感染拡大に対応するための医療提供体制や公衆衛生体制の確保が必要であり、国からも必要な支援を行うことが必要。

20-30代を中心とした感染拡大の傾向が全国的に見られている。この世代における感染拡大の要因を抑制し、さらに高齢者層への感染の波及にも警戒が必要。感染の拡大を防ぐために、3密など人が集まる機会を避け、様々な機会などに伴う宴会は避けていただくことが必要。また、昼カラオケや接客を伴う物販など高齢者が集まる場面、日中も含めた長時間の会食をはじめ、クラスターが発生しているような事例も含め、そのリスクの適切な周知と感染予防のための注意喚起が必要。また、有症状者への受診の呼びかけと迅速な検査対応が必要。

感染者の増加に伴い、医療施設や福祉施設の職員の感染防止が重要。そのために、感染予防策の徹底や発生時の迅速な対応、職員の定期的な検査とともに、軽い症状の職員が迅速に検査できるような体制整備が必要。

N501Yに変異のある変異株(VOC)については、感染者数が増加してくる中で、地域ご との 感染状況やその感染性、病原性等の疫学情報についての評価・分析を踏まえた対応を速やかに実施していくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

 

 

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