掲載日:2021年5月13日
(一部訂正:2021年5月14日)

第34回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年5月12日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第34回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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直近の感染状況等

全国の新規感染者数は、報告日別では、ほぼ上げ止まりから横ばいで、直近の1週間では10万人あたり約31人となっている。発症日別でもほぼ上げ止まり。全国的な感染拡大という状況ではなく、地域差が大きく見られ、急速に増えているところと、定常状態から減少傾向にあるところが混在している。重症者数、死亡者数も増加が続いており、更に増加する可能性が高い。

実効再生産数:
全国的には、低下傾向で推移しており、直近(4/25時点)で0.99となっている。

今後、緊急事態宣言の効果およびGWの影響が、新規症例数の増減として観察される。しかし、GW中は診療および検査数が減少し、診断や検査の報告も遅れることからGW明けの報告数が大きくなっていることも留意する必要がある。

感染状況の分析【地域の動向等】

※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。実効再生産数は、1週間平均の直近(4/25時点)の値

①関西圏
  • 大阪、兵庫を中心に、医療提供体制や公衆衛生体制の非常に厳しい状況が継続。救急搬送の困難事例が継続し、一般医療を制限せざるを得ない危機的な状況が続いている。また、自宅および宿泊療養中の症状の悪化に対して迅速な対応が困難となっている。必要な医療を受けられる体制を守るためには、新規感染者数の減少を継続させることが必須。
  • 大阪、兵庫、京都、奈良では全年齢層で新規感染者数が高い水準であり、特に、20-30代が高くなっている。大阪では、まん延防止等重点措置(重点措置)の開始から5週間、緊急事態措置の開始からは2週間経過。先週今週比は直近の約1週間は1以下で推移し、新規感染者数も減少に転じているが、約68と非常に高い水準。
  • 大阪では、夜間滞留人口・昼間滞留人口が、1度目の緊急事態宣言時の最低値水準にまで急減したあと下げ止まり。大阪、兵庫、京都で実効再生産数は0.88、0.94、0.91となっており、今後新規感染者の減少が見込まれるが、減少が継続するか注視が必要。
  • 兵庫、京都、奈良、和歌山では、新規感染者数は減少傾向だが、約49、33、42、14と和歌山以外は依然として高水準。滋賀では再度増加の動きが見られ約25と高い水準ある。
  • 関西圏の周辺自治体も感染者数の動向に注視する必要がある。
②首都圏(1都3県)
  • 東京では、重点措置の開始から1ヶ月、緊急事態措置の開始からは2週間経過、埼玉、千葉、神奈川では、重点措置の開始から3週間経過した。東京、埼玉では、新規感染者数が上げ止まっているとは判断できない。千葉、神奈川では上げ止まりから横ばい傾向。東京、埼玉、千葉、神奈川の新規感染者数は、約41、21、15、19。20-50代が多数を占めている。先週今週比は低下傾向で、GW後に概ね1以下。実効再生産数は1.10、1.01、1.09、1.02であり、横ばいから微増が続く可能性。
  • 東京では、感染は都心を中心に周辺にも広がりが継続。夜間滞留人口・昼間滞留人口は減少が継続し、2回目の宣言中最低値よりも25%低い水準に到達。直近では下げ止まりつつあるも顕著な増加には転じていない。
  • 埼玉、千葉、神奈川では、夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに2回目の宣言中の最低値に到達したが、GW後半からGW後にかけて下げ止まり。千葉・神奈川では昼間滞留人口が増加に転じている。
  • 首都圏の今後の人流の推移と、人流の減少による新規感染者数へ影響を注視する必要。
③中京圏
  • 愛知では、重点措置の開始から3週間経過、本日から緊急事態措置が開始。新規感染者数は増加が継続し、約40。先週今週比は3月下旬から約7週間1以上を継続。 20-30代が中心だが、ほぼ全世代で新規感染者数が増加傾向。医療および保健所への負荷が増加し、医療提供体制が厳しい状況。名古屋市をみると飲食店、医療機関、介護施設、学校、スポーツ施設、デパート、外国人コミュニティなど多様なクラスターが発生。
  • 夜間滞留人口は継続して減少し、2回目の緊急事態宣言時の最低値を下回る水準にまで到達。一方、昼間滞留人口はGW後半から増加に転じている。実効再生産数は1以上が続いており、 新規感染者数の増加が継続する可能性。
  • 5月9日から岐阜、三重に重点措置が適用されたが、岐阜では新規感染者数が急増しており、約38。発症日別でも増加が継続。先週今週比は4月上旬から約5週間1以上を継続。今後も増加が継続する可能性。三重では、4月末から新規感染者数は減少傾向。先週今週比も5月になり1以下で、新規感染者数は約16まで減少。
④九州
  • 福岡では、本日から緊急事態措置が開始されたが、4月中旬以降、20-30代を中心として新規感染者数の急増が続いており、約57。先週今週比は4月上旬から5週間1以上を継続。重症者数も大きく増加。病床の占有率も急速に高まっており、医療提供体制への負荷が大きくなっている。
  • 夜間滞留人口・昼間滞留人口ともに減少するも、2回目の緊急事態宣言時の最低値水準には依然として届かず。実効再生産数は1以上が続いており、新規感染者数の急速な増加が続く可能性。
  • 九州各県でも、新規感染者数が大きく増加しており、九州全体に感染が拡大。特に、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎では、それぞれ約42、25、34、42、30と高水準。鹿児島では横ばいで約21となっている。長崎、宮崎、鹿児島では先週今週比も2週間1以上を継続。福岡を除く各県計の実効再生産数は、1.00であるが、報告日別の感染者数の動きをみると、今後も増加が継続する可能性がある。
⑤その他まん延防止等重点措置地域(北海道、沖縄、愛媛)
  • 北海道では、5月9日から重点措置が適用されたが、札幌市で若者を中心とする新規感染者数の増加が継続し、約47と高い水準。発症日別の感染者数も増加が続く可能性。札幌市は約86とより高い水準で、GW終盤から札幌から道内各地へ感染が拡大している状況。先週今週比は4月上旬から約5週間1以上を継続。実効再生産数は1.30と高い水準。また、札幌の医療提供体制は厳しい状況で、市外への広域搬送事例も見られている。 GWに伴う人の移動や会合などの影響で札幌以外の報告も増加、今後も感染拡大が予想される。北海道全体の感染レベルを下げるための更なる取組が必要。
  • 沖縄では、重点措置の開始から1ヶ月経過。新規感染者数は、4月半ば以降減少傾向が続いていたが、再度増加の動きがみられ、約3738(2021.5.14訂正)と引き続き高水準。20-30代が中心だが、病床の逼迫が厳しい中で、入院者数の増加が危惧される。 今後、GWに伴う観光客など人の移動の影響に注意が必要。
  • 愛媛では、まん延防止等重点措置の開始から2週間経過。 4月下旬以降新規感染者数が減少傾向となり、約10まで減少。
⑥上記以外の地域
  • その他の地域でも、感染者数が急速に増加する地域や継続的に増加が続いている地域がある。
  • 特に、岡山、広島では、新規感染者数が約47、3250、36(2021.5.14訂正)と非常に高く、先週今週比1以上が岡山では6週間、広島では4週間を超えており、関西や、愛知での上昇の際と同様の傾向が見られる。実効再生産数も1.27、1.48と高水準であり、今後も感染の拡大が続く可能性がある。比較的人口規模も大きく、周辺への影響も懸念され、感染のレベルを下げるための特段の取組が求められる。
  • 福島、群馬、石川、山口、香川では新規感染者数が15を超えており、特に、群馬、石川、香川では新規感染者数が約27、29、2828、30、30(2021.5.14訂正)と高い水準、実効再生産数が1.55、1.10、1.68となっている。群馬、香川では先週今週比1以上が2週間以上継続しており、医療提供体制への影響が危惧される。また、福島は会津地区で新規感染者数が急増し、同地区では50を超えている。

<変異株に関する分析>

  • 英国で最初に検出された変異株(B1.1.7)の割合が、スクリーニング検査では、西日本では概ね7割を超える水準となっており、従来株からほぼ置き換わったと推定される。東京でも6割程度、北海道でも8割程度など他の地域でも置き換わりが進んでいる。また、感染研による民間検査機関でのスクリーニングの分析では、多くの地域で既に変異株へ置き換わっている。
  • 現段階では、年代特異的な感染拡大の傾向は見られておらず、小児の症例数が顕著に多いとは認められない。
  • B1.1.7は、非N501Y変異株に比べて特に40-64才の重症化リスクが高まっている所見があるが 、更なる精査が必要である。
  • いずれにしても、 B1.1.7による重症化リスクが高まっている可能性を想定して、医療体制の整備や治療を行う必要がある。

必要な対策

緊急事態宣言が延長されたが、これに伴う取組により、感染を着実に抑える必要がある。このため、緊急事態措置区域とされた地域及びまん延防止等重点措置区域とされた地域では、これらの措置の適用に当たって講ずべきとされた取組を着実に行うとともに、変異株(VOC)の感染性の高さも踏まえ、今後もタイムリーに対策を検討し、実施していくことが求められる。

上記の他、岡山、広島、九州各県をはじめ新規感染者数が高い水準にあり、かつ急激に増加・継続している地域では、医療提供体制への負荷も既に大きくなりつつあり、必要な取組を速やかに実施・強化すべきである。

また、各自治体で取組を進めるに当たっては、公衆衛生および感染症の専門家の助言を対策に役立てる会議体などの仕組みを設け、早い段階からの取組や今後の見通しを踏まえた医療提供体制を確保するための連携体制の構築などを機動的に行うことが求められる。

クラスターの多様化がみられ、飲食店に限らず、職場、部活やサークル活動、カラオケなど様々な場所での感染が報告されている。職場での感染も目立ってきており、テレワークの活用等により出勤を抑制するとともに出勤した場合でも、食事など感染のリスクとなる場を避けるなど対策の強化が求められる。

マスクの着用等基本的な感染予防の重要さを発信することが必要。また、密閉、密集、密接の重なる三密の場面だけでなく、二つあるいは一つだけの要素でも感染のリスクがあり、そうした場面を避けるべきことについても改めて周知が必要。

B1.1.7への置き換わりが進む中で、地域ごとの感染状況や疫学情報についての評価・分析 を踏まえつつ、新たな変異株への対応も強化するため、ウイルスゲノムサーベイランスによる実態把握に重点をおいて対応を行うことが必要。特に、新たにVOCと位置づけられたB.1.617(インドで最初に検出された変異株)については、ゲノムサーベイランスにより全国的な監視を行いつつ、L452R変異を検出するPCR検査を実施して監視体制を強化するとともに、積極的疫学調査等により、国内における感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、インド、パキスタン、ネパールに関する水際措置の強化が行われたが、今後も、国外での発生状況等も踏まえて、迅速に対応することが必要。

ワクチンについて、立証されている発症予防効果に加え、各国での実使用後になされた研究等から重症化予防効果、感染予防効果を示唆する報告がなされている。ワクチン接種が広く進み、こうした効果が発現されれば、重症者数、さらには感染自体が抑制されることも期待される。高齢者へのワクチン接種が始まっているが、国と自治体が連携して、可能な限り迅速・効率的に多くの人に接種を進めることが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等


【訂正履歴】

(2021年5月14日) 数値に一部誤りがありましたので、下記のとおり訂正しました。

感染状況の分析【地域の動向等】

⑤その他まん延防止等重点措置地域(北海道、沖縄、愛媛)

 沖縄について

 訂正前: 再度増加の動きがみられ、約37と引き続き高水準

 訂正後: 再度増加の動きがみられ、約38と引き続き高水準

 

⑥上記以外の地域

 訂正前: 岡山、広島では、新規感染者数が約47、32と非常に高く、

 訂正後: 岡山、広島では、新規感染者数が約50、36と非常に高く、

 

 訂正前: 群馬、石川、香川では新規感染者数が約27、29、28と高い水準

 訂正後: 群馬、石川、香川では新規感染者数が約28、30、30と高い水準

 

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