掲載日:2021年7月26日

第44回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年7月21日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第44回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約18、今週先週比も上昇傾向が続いている。東京を中心とする首都圏だけでなく、関西圏をはじめ多くの地域で新規感染者数が増加傾向となっている。重症者数、死亡者数は下げ止まりから横ばい。また、感染者に占める高齢者割合は引き続き低下傾向。

実効再生産数:
全国的には、直近(7/4時点)で1.17と1を上回す水準が続いており。首都圏では1.17、関西圏では1.27となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は増加が続き、約59、今週先週比は上昇傾向で1.49と、急速な感染拡大が継続。20-40代が多く、65歳以上は実数では増加がみられるものの、割合は約4%まで低下。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数は横ばいだが、入院者数や調整中の者は増加傾向であり、高流量の酸素投与が必要な患者も増加。感染者数がこのまま増加すると、入院療養等の調整の遅れや一般医療も含めた医療への負担が懸念される。一方で、埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数は20-30代中心に増加が続き、それぞれ約27、27、33。3県とも今週先週比の1以上が3週間以上継続し、埼玉で1.87、千葉、神奈川でも1.4弱で、感染者数が急速に増加。いずれも30代以下が約6割。重症病床使用率は概ね2割を切る水準が継続。東京では夜間滞留人口の減少が続いているが、前回の緊急事態措置の際と比べ、緩やかな減少となっている。一方、埼玉では夜間滞留人口の増加が継続。千葉、神奈川では横ばい。措置の強化からまだ1週間であり、東京を中心に少なくとも当面は感染が拡大することが強く懸念される。
沖縄
新規感染者数は増加に転じ、約38。20-30代が中心。一方で、これまでの新規感染者の減少に伴い、病床使用率は低下傾向。重症病床使用率は厳しい状況が継続。夜間・昼間とも滞留人口が増加し、特に夜間滞留人口は緊急事態措置適用前の水準に戻りつつあり、感染の拡大が懸念される。
関西圏
大阪では、新規感染者数は20代中心に増加が続き、約24。今週先週比の1以上が2週間継続し、上昇傾向で1.89。感染者数が急速に増加。入院者数は下げ止まりから増加傾向となっているが、重症者数は減少傾向が継続。重症病床使用率は12%程度で横ばい。夜間滞留人口は増加が続いており、感染拡大が続くことが懸念される。
上記以外
まん延防止等重点措置が解除された北海道、愛知、福岡では、新規感染者数が再度増加傾向となり、それぞれ約12、7、10。いずれも、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。北海道、愛知、福岡では夜間滞留人口の増加もみられ、特に、北海道、福岡で急激に増加。感染の拡大が懸念される。 その他の地域でも新規感染者数の増加が見られており、特に、石川、鳥取では15を超えて増加傾向が続いており、留意が必要。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、クラスターが複数報告され、市中での感染も観察されている。スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算)は、全国的には21%程度で上昇が続いている。B.1.1.7系統の変異株(アルファ株)よりも感染性が高いことが示唆されており、今後置き換わりが進むことが予測され、注視していく必要がある。

今後の見通しと必要な対策

  • 直近の感染状況において、医療機関や福祉施設のクラスターの割合は低下している。一方で、職場・会食・学校・保育施設などを介した感染は継続しているため、これらの場における感染予防が重要となる。軽い風邪症状でも早期の受診と簡易キットも活用した検査を進めることが必要。また、家庭内での感染も多い。家庭内でも軽い風邪症状がある場合には、家庭内でもマスク着用などの感染予防策が重要。
  • これまでも首都圏での感染拡大が起こっている中で、連休の後には、各地での感染拡大する傾向が見られている。明日からは4連休が始まり、今後も夏休み、お盆などを迎えるが、既に各地で感染の拡大がみられており、更なる感染拡大に繋げないよう、各自治体は、一層の危機感をもって、感染対策に取り組むことが必要。
  • このためにも、7月16日の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長談話「夏休み期間中の感染拡大を防ぐために」もあるように、帰省や旅行での県境を越えるような移動は慎重を期していただくとともに、普段会わない人と会う機会は、感染拡大のリスクが高くなることから、必要最小限にすることが必要。4連休を含め夏期休暇中は家族など普段会う人とできるだけ自宅ですごしていただくことが重要。
  • 東京、沖縄、埼玉、千葉、神奈川、大阪では、緊急事態措置やまん延防止等重点措置が講じられているにも関わらず、急速に感染者数が増加している。7月8日に改訂された基本的対処方針に基づく対策の徹底により、感染拡大を早期に抑えることが求められる。飲食における感染がその後の家庭や会社等での感染につながることも考慮し、宅飲みや路上飲みを含めた飲食の場面への対策を徹底すること。休暇中はできるだけ自宅で過ごしていただくとともに、職場ではテレワークの徹底と健康観察・感染対策の徹底。また、不要不急の外出・移動は自粛するとともに、そうした取組をしっかり発信していくことが重要。
  • 各自治体では、感染状況や医療提供体制の負荷の状況を踏まえ、機動的な介入により急拡大を抑制することが必要である。また、感染拡大が一定期間は継続することも前提に、宿泊療養施設の確保や自宅療養環境の体制整備も含め医療提供・公衆衛生体制の確保・連携を進めておくことが必要。
  • ワクチンの接種が高齢者中心に進み、新規感染者数に占める高齢者の割合が昨年秋以降で最も低い水準となっており、新規感染者数の増加に比べ、重症者数の増加が抑えられている傾向もみられる。また、接種歴別に人口当たりの感染者数を見ると、65歳以上では、2回接種で未接種と比べ大幅に低下しているというデータもあり、こうした点について引き続き分析が必要。治療薬についても中和抗体薬が新たに特例承認され、選択肢も増加している。一方で、40、50代の感染者数が増加しており、高齢者以外にも引き続き接種を着実に進める取組が必要。また、ワクチンについては、接種進展に伴う効果について適切に分析・評価するとともに、ワクチン接種が十分に進んだ後の適切な感染防止策等の在り方についても検討していくことが必要。
  • 置き換わりが進むデルタ株については、L452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、引き続き積極的疫学調査や検査の徹底等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、各国の感染状況等も踏まえ、引き続き迅速に対応することが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan