国立感染症研究所

掲載日:2021年8月4日

第45回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年7月28日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第45回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、報告日別では、増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約28。今週先週比が1.54と急速に拡大している。東京を中心とする首都圏だけでなく、関西圏をはじめ全国の多くの地域で新規感染者数が増加傾向となっており、これまでに経験したことのない感染拡大となっている。また、連休による影響で、今後の報告数が上積みされる可能性も留意する必要がある。

実効再生産数:
全国的には、直近(7/11時点)で1.27と1を上回る水準が続いており、首都圏では1.26、関西圏では1.39となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

首都圏(1都3県)
東京では、新規感染者数は増加が続き、約89。今週先週比は1.49と急速な感染拡大が継続。20-40代が多く、65歳以上の割合は約3%まで低下しているものの、実数では増加がみられる。本来であれば入院すべきだが自宅待機を余儀なくされる者や入院者数や調整中の者は増加が続いている。高流量の酸素投与が必要な患者も増加しているとの指摘もある。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者数も増加傾向となり、年代別では40-50代が最大となっている。感染者数の急増が続けば、入院療養等の調整の遅れや一般医療も含めた医療への負担が懸念される。一方で、埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数は20-30代中心に増加が続き、それぞれ約43、40、45。3県とも感染者数が急速に増加。東京では夜間滞留人口が前回の緊急事態措置の際と比べ、緩やかな減少にとどまっている。一方、千葉では夜間滞留人口が増加。埼玉、神奈川では減少しているものの、大きな減少が見られておらず、東京を中心に当面は感染拡大の継続が見込まれる。
沖縄
新規感染者数は増加が続き、約83。今週先週比が上昇傾向で2.15と急速な再拡大となっている。20-30代が中心だが高齢層でも増加が見られる。入院者数は増加に転じ、重症病床使用率は厳しい状況が継続。夜間・昼間とも滞留人口が大幅に減少し、今回の緊急事態措置中の最低水準に再び到達。新規感染者数の減少につながるか、注視が必要。
関西圏
大阪では、新規感染者数は20-30代中心に増加が続き、約36。今週先週比は1.52と急速な感染拡大が継続。入院者数は増加傾向だが、重症病床使用率は約13%。夜間滞留人口は減少に転じたが、依然高い水準で、感染拡大が続くことが懸念される。 京都、兵庫、奈良でも、新規感染者数の増加が続き、それぞれ、約19、16、14。いずれも、重症病床使用率は2割を切る水準が継続しているが、兵庫、京都では夜間滞留人口の増加が続いており、感染拡大が続くことが懸念される。
上記以外
まん延防止等重点措置が解除された北海道、愛知、福岡では、新規感染者数の増加傾向が続き、それぞれ約16、10、21。いずれも、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。いずれも夜間滞留人口の減少が見られるが、北海道、福岡では、依然高い水準であり、感染の拡大が懸念される。 その他の地域でも新規感染者数の増加が見られており、茨城、栃木、石川では15を超えて増加傾向が続いている。特に、石川では飲食店などのクラスターで約38、夜間滞留人口も増加している。重症者数は1人で横ばいだが、入院者数は増加しており、留意が必要。
まん延防止等重点措置が解除された北海道、愛知、福岡では、新規感染者数が再度増加傾向となり、それぞれ約12、7、10。いずれも、病床使用率、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。北海道、愛知、福岡では夜間滞留人口の増加もみられ、特に、北海道、福岡で急激に増加。感染の拡大が懸念される。 その他の地域でも新規感染者数の増加が見られており、特に、石川、鳥取では15を超えて増加傾向が続いており、留意が必要。

変異株に関する分析

  • B.1.617.2系統の変異株(デルタ株)は、スクリーニング検査での陽性率(機械的な試算)が、全国的には約33%で上昇が続いており、置き換わりが進んでいる。特に、東京では、4割を超えている。

今後の見通しと必要な対策

  • 東京、沖縄、埼玉、千葉、神奈川、大阪では、緊急事態措置やまん延防止等重点措置が講じられているが、滞留人口の減少は限定的で感染拡大を防ぐに至っていない。デルタ株への置き換わりも進む中で、これまでにない急速な感染拡大となっている。
  • 特に、東京では感染者の増加が続き、40-50代を中心に入院者の増加が続いており、既に一般医療への影響が生じている。熱中症などで救急搬送が増加するなど一般医療の負荷も増加する中で、このままの状況が続けば、通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される。埼玉、千葉、神奈川および感染が拡大している地域でも今後同様の状況が生じることが強く懸念される。こうした危機感を行政と市民が共有出来ていないことが、現在の最大の問題。
  • 7月8日に改訂された基本的対処方針及び7月16日の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長談話「夏休み期間中の感染拡大を防ぐために」に基づく対策の徹底により、感染拡大を速やかに抑えることが求められる。改めて、マスク、手指衛生、人との距離の確保などの基本的感染防止対策のほか、職場での感染防止策の強化とテレワークを徹底すべき。また、飲食の場面への対策を徹底すること。さらに、職場、学校、家庭において、少しでも体調が悪い場合、軽い症状でも早めの受診、積極的な検査につなげることが必要。こうした取組をしっかり発信していくことが重要。
  • 各自治体では、感染状況や医療提供体制の負荷の状況を踏まえ、機動的な介入により急拡大を抑制することが必要である。その際には、高齢者のワクチン接種が進んだことにより、感染者数の増加に比べて、重症者数は低くなる傾向にあるが、入院者数や自宅療養者数、調整中の者の数などその他の指標も踏まえ、公衆衛生・医療提供体制の負荷の状況や見込みをとらえることが求められる。感染拡大が一定期間は継続することも前提に、宿泊療養施設の確保や自宅療養環境の体制整備も含め医療提供・公衆衛生体制の確保・連携を進めておくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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