国立感染症研究所

乳幼児から大学生までの福祉施設・教育機関(学習塾等を含む)関係者*
の皆様への提案

(*保育所、放課後児童クラブ、認定こども園、幼稚園、放課後デイ、特別支援学校、小中学高等学校、大学等の長、養護教諭、園医・校医、大学健康管理センター長、学習塾等の代表者・健康管理者を想定)

2021年8月20日時点

国立感染症研究所実地疫学研究センター

 

2021年5月下旬以降、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスデルタ株が国内でもまん延し、それまでの状況とは異なる状況が認められており、小児等の低年齢層の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者数の増加もその一つに挙げられます。当センターはこれまで、自治体の皆様とともに複数の小児事例の調査に従事してまいりました。現時点で、デルタ株を念頭に、クラスターに共通すると思われる代表的な所見を提示し、共通する対策に関して以下のように提案を行います。なお、本稿においては、幅広く乳幼児から大学生までを対象としており、対策を講ずるべき環境として、保育・(授業を中心とする)教育等の場を中心とする保育所・学校等での生活、部活動/課外活動、寮生活/合宿等宿泊活動を念頭に置いています。ご参考になれば幸いです。

 

代表的な所見:

  • 10代以下の感染者数が増加傾向にある。保育所・幼稚園において、これまで保育士・教員における感染の検出が主であったが、園児の感染例が増加している
  • 特に小学生を中心とする授業の場で、教職員を発端とした、比較的規模の大きなクラスターが複数発生した
  • 小学校において、児童を端緒とした、同じクラス内等の規模の小さな感染伝播は多く見受けられたが、児童間の感染伝播が規模の大きなクラスターに至ったケースは確認出来なかった
  • 障害児通所支援事業所での感染が各地で散発しており、長期化する場合がある
  • 学習塾における比較的規模の大きなクラスターが散見される
  • 中学生以上では、部活動等・寮生活において、適切なマスク着用や身体的距離の確保等の感染予防策の不十分な生徒・学生間の長時間に渡る交流が、感染伝播に寄与していた。特に部活動等において、最近は大会や遠征時のクラスターが複数発生した
  • 感染しても無症状・軽症が多く行動範囲も広い大学生は市中で感染が拡大する要因の一部を占める
  • 特にデルタ株流行後、小児から家庭内に広がるケースが増えている

共通する対策に関する提案(既に実施に取り組まれている施設等多数あり):

  • 初等中等段階ではやむを得ず学校に登校できない児童生徒等に対する学びの保障を確保することを主目的として、加えて高等学校・大学ではオンライン(オンデマンド)の促進により、理解をより高める側面を含めて、ICT等を活用した授業の取組を進める
  • 教職員(塾を含む)それぞれがCOVID-19の感染経路に基づいた適切な予防法、消毒法について習熟し、園児・児童・生徒・学生、保護者、自施設に出入りする関係者に対して正しく指導出来るようにする
  • 上記を目的とした、地域の感染管理専門家(感染管理認定看護師等)からの指導/協力を仰ぐ体制を構築する
  • 教職員、園児・児童・生徒・学生は、全員が出勤・登園・登校前の体調の確認、体調不良時のすみやかな欠席連絡および自宅待機時の行動管理をより徹底する。中学生以下の有症時には受診を原則とする
  • 各施設の健康管理責任者は、当該施設の教職員、園児・児童・生徒・学生がCOVID-19の検査対象になった場合の情報を迅速に把握する。対象者の検査結果判明まで、範囲を大きく、例えばクラス全体として、園児・児童・生徒・学生・教職員等に対して感染予防に関する注意喚起を厳重に行う
  • 対象者が陽性となった場合の施設のスクリーニング検査の実施と施設内の対策は保健所からの指示に従う。流行状況等によって、保健所による迅速な指示が困難な場合には、クラス全体等幅広な自宅待機と健康観察、有症状時の医療機関への相談を基本に対応する。体調確認アプリ(例:N-CHAT)や抗原定性検査の活用は、施設における発生時の自主的な対応として有用である
  • 教室、通学バス(移動時全般)、職員室等における良好な換気の徹底に努める。施設内では、効率的な換気を行うためのCO2センサーの活用も推奨される
  • 塾では児童・生徒・学生・講師等の体調管理を徹底した上で、密にならない工夫とともに換気の徹底(特に入れ替わり時。場合によってCO2センサーの活用)、リモート授業の活用も検討することが推奨される
  • 人の密集が過度になるリスクが高いイベント(文化祭、学園祭、体育祭等)においては延期や中止を検討し、感染リスクの低い、あるいはリスクを低減できると考えられたイベントについては事前の対策を十分に行う
  • 教職員は、健康上等の明確な理由がなければ、新型コロナワクチン接種を積極的に受ける
  • 部活動については日々の体調の把握や行動管理への注意を基本とした活動を行う一方で、やむを得ず県境をまたいだ遠征が必要な場合には、2週間前から引率者、児童・生徒における上記注意事項の遵守を強化し、出発前3日以内(出来るだけ出発当日)を目途に、抗原定量検査あるいはPCR検査を受ける
  • 大会遠征時には教職員を含む引率者や児童・生徒ともに、競技外での他校との交流は部活動の範囲に留める
  • これまで以上に保健所との連携(報告や相談)を強化する。保健所が多忙を極める場合、特に発生時の対応については、当センターは保健所と連携を取りながら施設へ助言を行うことも可能である(連絡先は末尾)

上記の対策に関する主な項目について、以下のようにまとめる(2021年8月20日時点)。

 

保育所・放課後児童クラブ・幼稚園・認定こども園・障害児通所支援事業所

特別支援

学校

小学校

中学校

高等学校

大学等

ICT等の活用推進

教職員における

感染予防法の習熟

ワクチン接種

の重要性

(教職員および対象年齢の生徒・学生)

体調確認アプリ活用

主に教職員対象の抗原定性検査の自主的な活用

中学生まではスクリーニング対象としては慎重に検討すべきであり、原則として、有症時の早期受診を促す。高等学校以上では状況に応じ、学生に対するスクリーニングが可能な場合があると考える

部活動等や寮生活における感染対策強化

以上、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

国立感染症研究所実地疫学研究センター

連絡先 outbreak[アットマーク]nih.go.jp
※[アットマーク]を@に置き換えて送信してください

 

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