国立感染症研究所

掲載日:2021年9月9日

第51回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月8日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第51回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数は、ほぼすべての地域で減少が続いているが、報告日別では、直近の1週間では10万人あたり約81と依然高い水準であり、未だに多くの地域でこれまでにない規模の感染者数の発生が継続している。年齢別に10万人あたりの感染者数をみると、10-40代の減少割合が高く、なかでも20代の減少が最も多い。これに比して、高齢の感染者の減少は小さいことには注意が必要。

新規感染者数の減少に伴い、療養者数は減少傾向となったが、重症者数は高止まりで、過去最大の規模が継続している。また、死亡者数も増加傾向が続いている。多くの地域で公衆衛生体制・医療提供体制が厳しい局面が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(8/22時点)で0.87と1を下回る水準となり、首都圏では0.83、関西圏では0.97となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)

東京では、新規感染者数は減少が続いているが、依然として約112で100を超える高い水準となっている。入院者数は20-50代を中心に高止まりし、70代以上の割合が増加。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者は、50-60代が中心だが、70代以上で増加傾向が見られる。入院者数と重症者数は共に過去最高の水準だが減少の動きも見られ、療養等調整中数も減少が続いている。一方で、救急医療の受け入れなど一般医療の制限は継続している。

埼玉、千葉、神奈川でも、新規感染者数は減少に転じているが、それぞれ、約85、112、110で依然として高い水準。いずれも10-50代が中心。病床、重症病床の使用率は高止まりしており、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は、神奈川では足下で増加に転じているが、東京、埼玉、千葉では減少が見られている。

沖縄
新規感染者数は約212と全国で最も高い水準だが、今週先週比が0.74で、減少が継続。20-30代が中心だが、未成年の割合も上昇。重症病床使用率は9割前後を継続し、厳しい状況が続いている。夜間滞留人口は、減少に転じている。
関西圏

大阪では、新規感染者数は減少が続いているが、約165と依然として100を超える非常に高い水準。20-30代が中心。入院者数と重症者数の増加が継続。夜間滞留人口はお盆明けから増加が続いており、感染の再拡大に留意が必要。滋賀、京都、兵庫でも、新規感染者数は減少が続き、それぞれ、約63、104、96。京都、兵庫では、入院者数が急速に増加。京都では、夜間滞留人口の減少が見られず、注視が必要。

その他、奈良では新規感染者数は減少に転じ、約83。和歌山では減少が続き、約39。

中京・東海
愛知では、新規感染者数の減少に転じているが、約144と依然として100を超える非常に高い水準。一方、岐阜、静岡、三重では減少が続き、それぞれ、約71、60、71。愛知、三重では、重症病床使用率が5割を超える水準。夜間滞留人口は愛知、岐阜、静岡では低い水準で推移。三重では減少に転じている。
北海道
新規感染者数は今週先週比が0.57で、減少が続き、約31(札幌市約46)。入院者数は減少傾向で、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口は減少が続いている。
九州
福岡では、新規感染者数は、減少が続いているが、約91。入院者数は高止まりし、厳しい状況となっている。重症病床使用率は2割を切る水準。夜間滞留人口は減少に転じている。その他九州各県では新規感染者数の減少が続いており、佐賀、長崎では、重症病床使用率が2割を切る水準。
その他緊急事態措置対象地域

宮城では、新規感染者数は減少が続き、約30。茨城、栃木、群馬では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ約53、41、42。

岡山、広島では、新規感染者数は減少の動きが見られ、それぞれ、約51、50。岡山では病床使用率が5割を切る水準。

その他重点措置対象地域
福島、富山、石川、山梨、香川、愛媛、高知では、新規感染者数の減少が続き、それぞれ、約19、23、20、34、28、13、51。特に、石川、山梨、愛媛、高知では、重症病床使用率は2割を切る水準。

今後の見通しと必要な対策

  • 全国的にほぼすべての地域で感染者数の減少が続いている。感染場所として、飲食店や学校などの割合が減少し、自宅及び事業所の割合が増加している。感染者数が減少している要因としては、多くの市民の感染対策への協力に加え、夏休み中の連休やお盆の影響が減り、気温の低下など季節的な要因、ワクチン接種が現役世代を含めて進んできていること、さらには緊急事態宣言・重点措置地域における人流の減少、情報効果による行動変容等が考えられる。
  • 今後は、ワクチン接種率がさらに高まることも期待される一方、9月の連休や大学などの学校再開、社会活動の活発化、滞留人口の動向などもあり、感染状況を注視していくことが必要。このため、今後も、着実な感染の抑制につながるよう、家庭、職場、学校などにおける感染対策に加え、国と自治体が必要な取組を継続することが必要。
  • ワクチンの効果もあり、死亡者数は、過去の感染拡大期と比べれば低い水準であるものの増加が続いている。高齢の感染者や高齢者施設のクラスターの増加もあり、今後さらに死亡者数が増加することが懸念される。
  • 依然として高水準の感染者数が続いており、引き続き、災害レベルの状況にあるとの認識での対応が必要。 多くの地域で医療・公衆衛生体制の厳しい状況が続き、少なくとも一般医療が制限されない感染状況まで改善するために必要な対策を継続するとともに、医療体制の強化、保健所業務の重点化や支援の強化などが引き続き必要である。
  • なお、地域の状況に応じ、対策の緩和を検討する際には、早期のリバウンドを避けるために、段階的な対応が必要。また、中長期的には、冬に向けて更に厳しい感染状況が生ずる可能性もあり、ワクチン接種の推進や積極的な検査の実施、中和抗体薬の活用など様々な取組を総合的に進めて行くことが必要。
★自分や家族の命を守るために必要な行動を

既にワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも、外出はなるべく避けて、家庭で過ごしていただくことが必要。外出せざるを得ない場合も遠出をさけ、混雑した場所や時間など感染リスクが高い場面を避けること。引き続き、ワクチン接種を積極的に進めるとともに、少しでも体調が悪ければ検査・受診を行うこと。

★基本的な感染対策の徹底を

基本的感染防止策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、従業員がワクチンを受けやすい環境(ワクチン休暇など)の提供、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者は出社させず休ませることなどを徹底すること。

★最大限に効率的な医療資源の活用を

中和抗体薬の活用や、重症化に迅速に対応できる体制の早急な整備を進め、地域の医療資源を最大限活用して、必要な医療を確保することが求められる。さらに、今後も冬に向けて更に厳しい感染状況が生ずるという前提で、臨時の医療施設などの整備を含め、早急に対策を進める必要がある。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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