国立感染症研究所

掲載日:2021年9月22日

第52回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年9月16日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第52回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約42と、この3週間で約63%減少している。新規感染者は50代以下が中心。

新規感染者数の減少に伴い、療養者数は減少傾向。重症者数も減少に転じているが、過去最大の規模が継続している。一方、死亡者数は増加傾向が続いている。改善傾向はみられるものの、多くの地域で公衆衛生体制・医療提供体制の厳しい局面が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(8/30時点)で0.71と1を下回る水準が続き、首都圏では0.68、関西圏では0.79となっている。

感染状況の分析【地域の動向等】

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

首都圏(1都3県)

東京では、新規感染者数は減少が続いているが、依然として約57と高い水準となっている。入院者数は20代以上では減少に転じているものの、10代では横ばい。人工呼吸器又は人工心肺を使用している重症者は、50-60代が中心だが、全体的には減少傾向となった。入院者数も減少の動きとなり、自宅療養者・療養等調整中数も減少が続いている。一方で、救急医療の受け入れなど一般医療の制限は継続している。埼玉、千葉、神奈川でも、新規感染者数は減少に転じているが、それぞれ、約52、46、51で依然として高い水準。病床、重症病床の使用率は減少に転じている。東京、埼玉、千葉では、夜間滞留人口が足下で微増。

沖縄
新規感染者数は約128と全国で最も高い水準だが、今週先週比が0.63で、減少が続く一方、未成年の割合が上昇。重症者数も減少に転じ、重症病床使用率も約6割まで減少した。しかし、入院率は約10%と低い水準となっており、自宅療養者・療養等調整中数は10万人あたり約252と高い水準を継続。
関西圏

大阪では、新規感染者数は減少が続いているが、約88と高い水準となっている。入院者数は増加が継続。滋賀、京都、兵庫でも、新規感染者数は減少が続き、それぞれ、約24、48、57。いずれも、入院者数が減少に転じている。その他、奈良、和歌山では新規感染者数は減少が続き、それぞれ、約38、14。

中京・東海
愛知では、新規感染者数の減少に転じているが、約77と高い水準となっている。岐阜、静岡、三重では減少が続き、それぞれ、約33、26、30。いずれも、重症病床使用率は5割を切る水準。三重では、夜間滞留人口が足下で微増。
北海道
新規感染者数は今週先週比が0.55で、減少が続き、約15(札幌市約23)。入院者数も減少が続き、重症病床使用率は2割を切る水準が継続。夜間滞留人口は、増加に転じており、新規感染者数の動向に注視が必要。
九州
福岡では、新規感染者数は減少が続き、約42。入院者数は減少に転じている。重症病床使用率は2割を切る水準が継続。その他九州各県では新規感染者数の減少が続いている。
その他地域
  • 緊急事態措置対象地域:茨城、栃木、群馬、広島では、新規感染者数は減少が続き、それぞれ約33、28、19、26。群馬では、病床使用率が減少に転じ、5割を切る水準。栃木では、夜間滞留人口が増加に転じており、新規感染者数の動向に注視が必要。
  • 重点措置対象地域:宮城、福島、石川、岡山、香川では、新規感染者数の減少が続き、それぞれ、約17、12、16、20、8。

今後の見通しと必要な対策

  • 今回の流行拡大局面では、伝播力のより高いデルタ株への置き換わりが進むなかで、7月の4連休や夏休みに向けて、20代から50代のワクチン接種が途上の世代の行動が活発となり、普段会わない人との接触機会が増えたと考えられる。また、この時期は暑さにより、屋内での活動が増えた可能性もある。
  • 一方、その後の減少局面においては、連休や夏休みの影響の減少、長雨の影響等により外出が減少した可能性、感染者急増や医療ひっ迫の情報・報道などがメディア効果を発揮し行動変容が起きた可能性、さらにワクチン接種が現役世代を含めて進んできていることなどが考えられる。さらに、通常、流行の後半に見られる病院や高齢者施設のクラスターの発生がワクチン接種により抑制され、高齢者層への流行の遷延が見られていない。
  • これらを踏まえると、今後は、ワクチン接種が更に進むことによる効果が期待される一方、シルバーウィーク、大学等の学校再開などにより、普段会わない人との接触機会が再び増えることで、感染者数がまだ十分低い水準に至らない段階において減少が鈍化し、再度上昇につながる懸念もある。従って、必要な対策を継続してできるだけ感染者数を減少させ、リバウンドを予防することが求められる。また、今後も感染リスクの高い場所において感染が循環・維持される可能性があるため、ハイリスクな場を見極め、対策を強化することが必要になる。
  • なお、地域の状況に応じ、対策の緩和を検討する際には、早期のリバウンドを避けるために、段階的な対応が必要。また、感染の急拡大に伴い積極的疫学調査の対象を重点化していた地域における通常化に向けた取組なども必要。
★自分や家族の命を守るために必要な行動を

既にワクチンを接種した方も含め、自分や家族を守るためにも、外出はなるべく避けて、できるだけ家族やいつもの仲間だけで過ごしていただくことが必要。外出せざるを得ない場合も遠出や大勢で集まることを避け、混雑した場所や時間など感染リスクが高い場面を避けること。引き続き、ワクチン接種を積極的に進めるとともに、少しでも体調が悪ければ検査・受診を行うこと。

★基本的な感染対策の徹底を

基本的感染防止策のほか、業種別ガイドラインの再徹底、職場での感染防止策の強化、従業員がワクチンを受けやすい環境の提供、会議の原則オンライン化とテレワーク推進、有症状者は出社させず休ませることなどを徹底すること。自治体でもワクチン接種をより受けやすい環境整備と、接種にまだ至っていない方への情報提供を進めること。

★最大限に効率的な医療資源の活用を

地域の医療資源を最大限活用して、一般医療への影響を最小限に抑えつつ、コロナ医療に必要な医療を確保することが求められる。さらに、今後も冬に向けて更に厳しい感染状況が生ずるという前提で、地域全体の医療提供体制の在り方の整理や臨時の医療施設・入院待機施設の整備、自宅・宿泊療養の体制強化、医療人材確保の仕組みの構築などについて、早急に対策を進める必要がある。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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