掲載日:2022年1月13日

第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月13日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第67回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は8.5と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約41となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でもこれまで経験したことのない速さで新規感染者数が急速に増加している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。

大部分の都道府県でオミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、オミクロン株への急速な置き換わりが進んでいる地域もある。オミクロン株の伝播性が高いことを踏まえると、今後感染拡大が急速に進み、自宅・宿泊療養者や入院による治療を必要とする人が急激に増え、軽症・中等症の医療提供体制等がひっ迫する可能性に留意する必要がある。

実効再生産数:
全国的には、直近(12/28時点)で2.29と2を上回る水準となっており、首都圏では2.27、関西圏では1.98となっている。

地域の動向等

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

重点措置対象地域

重点措置対象地域の沖縄県、山口県及び広島県では、いずれも急速な増加が続いている。沖縄県では、新規感染者数は今週先週比が7.6で、約605と全国で最も高い。20代以下が中心。病床・重症使用率は4割強。山口県では、新規感染者数は今週先週比は3.6で、約81。病床使用率は4割強。広島県では、新規感染者数は今週先週比は9.6で、約135。病床使用率は約3割。

北海道

新規感染者数は今週先週比が5.2と急速な増加が続き、約16(札幌市約19)。病床使用率は1割を切る水準。

北関東

茨城県、栃木県、群馬県では、新規感染者数の増加が続き、それぞれ約17、25、36。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、栃木県と群馬県ではいずれも2割弱。

首都圏(1都3県)

東京都では、新規感染者数は今週先週比が8.5と急速な増加が続き、約57。20代以下が中心。病床使用率は約1割。埼玉県、千葉県、神奈川県においても新規感染者数の増加が続き、それぞれ約29、28、29。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。

中京・東海

愛知県では、新規感染者数は今週先週比が12.0 と急速な増加が続き、約31。20代以下が中心。病床使用率は1割を切る水準。岐阜県では、新規感染者数は今週先週比が6.8と急速な増加が続き、約23。静岡県、三重県でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約21、15。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。

関西圏

大阪府では、新規感染者数は今週先週比が8.2と急速な増加が続き、約65。20代以下が中心。病床使用率は2割弱。滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県においても新規感染者数の増加が続き、それぞれ約46、52、27、44。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、滋賀県では4割弱、京都府では3割弱、奈良県では2割強。

九州

福岡県では、新規感染者数は今週先週比が13.4と急速な増加が続き、約28。20代以下が中心。病床使用率は1割を切る水準。佐賀県、熊本県、鹿児島県においても新規感染者数の増加が続き、それぞれ約48、31、48。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。

上記以外

その他の地域でもほぼ全ての地域で新規感染者数の急速な増加が続き、特に、新潟県、福井県、長野県、島根県では、それぞれ約25、28、36、32。病床使用率について、長野県では2割強、島根県では約4割。

今後の見通しと必要な対策

  • 1月9日よりまん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県のみならず全国の新規感染者は急増しており、あわせてオミクロン株による感染例も増加して、すでにデルタ株からオミクロン株へと置き換わりが進みつつある。一方、デルタ株による感染者も検出されており、デルタ株感染はより重症化しやすいため、警戒が必要である。夜間滞留人口については、全国的な傾向として年始には減少していたものの、直近では再び増加に転じている。年末・年始の帰省や1月の連休などによる人の移動や普段会わない人との接触に加え、気温の低下に伴い屋内での活動が増えていることも踏まえると、今後も感染の急拡大が継続するおそれがある。
  • 今後の拡大傾向によっては、医療提供体制のひっ迫や重症化リスクの高い人々への感染拡大が懸念される。オミクロン株について、国際機関や諸外国からの報告や、国内の感染事例からも暫定的な情報が得られつつある。流行株がデルタ株からオミクロン株へと急速に置換が進んでおり、伝播性の高さが懸念される。また、オミクロン株はデルタ株に比して、世代時間、倍加時間や潜伏期間の短縮化、二次感染リスクや再感染リスクの増大が確認されている。しかし、国内ではこれまでのところ、多くの感染が従来株やデルタ株と同様の機会(飲食など)で起きており、感染経路(飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等)について変化を示唆する所見は示されていない。ワクチンについては、初回免疫によるオミクロン株感染に対する重症化予防効果は一定程度保たれているが、発症予防効果は著しく低下することや、ブースター接種によるオミクロン株感染に対する有効性についても海外で報告されている。また、デルタ株と比較してオミクロン株による感染は重症化しにくい可能性が示唆されているが、現在の若者中心の感染拡大により療養者数が急激に増加した場合には、軽症・中等症の医療提供体制等が急速にひっ迫する可能性があること、さらに、今後高齢者に感染が波及することで重症者数の増加につながる可能性があることに留意が必要。また、一般医療におけるICUや病棟の場において、入院患者における新型コロナ陽性者の発生にも注意が必要。
  • 水際及び国内の各現場において、オミクロン株による感染拡大を踏まえた取り組みが求められる。
    • 水際では、現状ではオミクロン株対策のため、入国時検査での陽性者をオミクロン株陽性者とみなして対応するとともに、陽性者に対する全ゲノム解析を継続させることが必要。今後の水際対策については、海外及び国内のオミクロン株の流行状況なども踏まえて引き続き検証する必要がある。
    • 国内では、オミクロン株による感染拡大が進む中で、引き続き、オミクロン株への置き換わりの状況を含めた地域の感染状況に応じた監視体制を継続させる必要がある。国内でオミクロン株による急速な感染拡大がまだ見られていない地域では、検査体制の徹底による早期探知、迅速な積極的疫学調査や感染拡大防止策の実施が必要。また、急速な感染拡大が生じている地域では、これまでに得られた知見等も踏まえた検査・積極的疫学調査の重点化や療養体制の切替えを検討すべき。
    • 自治体では、地域の感染状況及び今後の感染者数や重症者数の予測に基づき、必要病床数と医療従事者の確保や地域に必要な保健所機能の維持と体制強化のための応援確保、自宅療養者に対する訪問診療やオンライン診療体制の構築を機動的に取り組んでいくことが求められる。
  • 地域における各事業の業務継続計画の早急な点検が必要である。

    地域で感染が急拡大することにより、特に医療機関、介護福祉施設では、職員とその家族の感染や、濃厚接触による職場離脱の可能性が高い。一部の地域では、多くの医師や看護師等の医療従事者が感染し、又は濃厚接触者となり欠勤となることで、病院機能の低下が懸念される事案も生じている。このため、オミクロン株感染者の濃厚接触者であっても、医療従事者の場合には、毎日検査等により勤務できることについて、再周知を徹底していくことが必要である。また、感染者の療養期間と濃厚接触者の健康観察期間についても、科学的知見に基づき、適切に見直していく必要がある。さらに、同様のことは保健所を含む自治体や交通機関などすべての社会機能維持に関わる職場でも起こりうる。このような事態に備えるため、先日改定された基本的対処方針も踏まえ、業務継続計画の点検を実施すべきである。また、職場ではテレワークの活用も求められる。

  • ワクチン未接種者、追加接種者への情報提供の再強化が必要である。

    オミクロン株による急速な感染拡大が懸念される中で、特に、未接種者へのワクチン接種を進めることも必要であり、自治体においては、ワクチン接種に至っていない方への情報提供を進めることが求められる。あわせて、すでに開始している追加接種を着実に実施していくことも必要。その際、医療従事者等や重症化リスクが高い高齢者の方々を対象とした前倒しを円滑に実施することが求められる。また、特例承認された経口治療薬は一定の重症化予防効果が期待されており、在宅療養者の経過観察などを行う医療機関について、当該経口治療薬を処方する機関としての登録の加速が求められる。また、感染拡大地域においては、基本的対処方針に基づき、高齢者施設等の従業者等への積極的な検査の実施が求められる。

  • オミクロン株による急速な感染拡大の想定を広く共有することが必要である。
    • 行政・事業者・市民の皆様には、国内でのデルタ株からオミクロン株への置き換わりが進み、今後も感染拡大が継続することを想定すべき状況にあるとの認識をもって行動していただくことが必要。
    • これまでに得られた知見から、オミクロン株においても基本的な感染対策は重要であり、ワクチン接種者も含め、マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要である。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播力が高いため、一つの密であってもできるだけ避けた方がよい。
    • オミクロン株による感染が確認された地域等においては、感染に不安を感じて希望する方を対象とした無料検査を受けることが可能となったが、感染が急拡大している地域においては、検査需要の急増と検査能力に注意が必要であり、優先度の高い検査が確実にできる体制を確保すべき。
  • 感染拡大防止のためには、市民や事業者の皆様の協力が不可欠となる。

    ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、積極的な受診と検査が推奨される。特に、医療提供体制のひっ迫が懸念されるような急速な感染拡大が見られる地域では、より慎重な判断と行動が求められる。外出の際は、混雑した場所や感染リスクの高い場所を避けることが必要。飲食店を利用することが必要な際は、換気などの感染対策がされている第三者認証適用店を選び、できるだけ少人数で行い、大声・長時間を避けるとともに、飲食時以外はマスクを着用することが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan