掲載日:2022年1月21日

第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月20日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は3.6と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約147となっている。新規感染者は20代を中心に増加している。まん延防止等重点措置が適用されている沖縄県、山口県及び広島県を始め、東京都や大阪府など関東や関西地方などの都市部のみならず、その他の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。また、全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。

オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。

実効再生産数:
全国的には、直近(1/3)で1.43と1を上回る水準となっており、首都圏では1.45、関西圏では1.42となっている。

地域の動向等

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

重点措置区域

沖縄の新規感染者数は今週先週比が1.1だが、報告者数が実態を反映していない可能性に留意が必要。さらに、約673と全国で最も高い。20代以下が中心であるが、10代以下や60代以上も増加傾向。病床使用率は6割弱、重症病床使用率は6割強。山口の新規感染者数は今週先週比は1.6で、約130。病床使用率は4割強。広島の新規感染者数は今週先週比は1.9で、約257。病床使用率は4割強。

北海道

新規感染者数は今週先週比が5.6と急速な増加が続き、約90(札幌市約120)。20代以下が中心。病床使用率は1割強。

北関東

茨城、栃木、群馬では新規感染者数の増加が続き、それぞれ約66、84、110。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、栃木では2割強、群馬では4割弱。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は今週先週比が4.0と急速な増加が続き、約229。20代以下が中心。病床使用率は2割強、重症病床使用率は2割弱。埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約129、123、124。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、埼玉では約3割、千葉では1割強、神奈川では2割弱。

中京・東海

愛知の新規感染者数は今週先週比が4.8と急速な増加が続き、約148。20代以下が中心。病床使用率は1割強。岐阜の新規感染者数は今週先週比が4.2と急速な増加が続き、約97。静岡、三重でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約103、85。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、岐阜では3割弱、三重では2割強。

関西圏

大阪の新規感染者数は今週先週比が4.6と急速な増加が続き、約303。20代以下が中心。病床使用率は3割弱。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約149、217、169、125、126。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、滋賀では約5割、京都では約3割、奈良では4割弱、兵庫では3割強、和歌山では8割強。

九州

福岡の新規感染者数は今週先週比が5.9と急速な増加が続き、約163。20代以下が中心。病床使用率は約1割。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約140、120、185、88、89、75。大部分の地域で今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、佐賀では3割弱、長崎、大分、鹿児島では2割強、熊本では約3割、宮崎では2割弱。

上記以外

青森、宮城、秋田、山形、新潟、石川、福井、山梨、長野、鳥取、島根、岡山、徳島、香川、愛媛、高知では、それぞれ約76、30、25、26、87、57、59、94、88、63、117、95、32、61、100、38。病床使用率について、新潟、香川、愛媛、高知では2割強、山形、山梨では3割強、長野では3割弱、鳥取、島根では3割強、徳島では約2割。

今後の見通しと必要な対策

  • 全国の新規感染者はオミクロン株への置き換わりとともに急増している。既に重点措置区域とされている3県に加え、1月21日から新たに1都12県に重点措置が適用される。今回の感染者急増は忘年会、クリスマス、年末・年始や1月の連休などによる接触機会の増加の影響が大きかったと考えられるが、オミクロン株の特性と現在の感染者数の増加速度やPCR検査陽性率などの推移から、今後も全国で感染の急拡大が継続するおそれがあり、早期の対策が必要。
  • デルタ株からオミクロン株へと置き換わりが進んでいるが、デルタ株による感染者も検出されている。デルタ株による感染はより重症化しやすく、実際に重症例も発生している。夜間滞留人口については、都市部を中心に増加傾向が見られる。現在の若年層中心の急激な感染拡大が継続する場合、健康観察者や自宅療養者の急増への対応も含め、軽症・中等症の医療提供体制等が急速にひっ迫する可能性がある。さらに、今後高齢者に感染が波及することで重症者数の増加につながる可能性もある。また、一般医療におけるICUや病棟の場において、入院患者における新型コロナ陽性者の発生することや、感染により基礎疾患が増悪することで、入院を要する感染者が増加することにも注意が必要。このため、できるだけ早期に感染拡大を抑えていくことが必要。
  • オミクロン株の特徴に関する知見
    【感染性・伝播性】
    オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。
    【感染の場・感染経路】
    国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様に飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。
    【重症度】
    オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い可能性が示唆されているが、オミクロン株感染による入院例が既に増加している地域もある。
    【ウイルスの排出期間】
    オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出については、ワクチン接種の有無にかかわらず時間の経過とともに減少し、従来株と同様に発症又は診断日から10日目以降において排出する可能性は低いことが示された。
    【ワクチン効果】
    初回免疫によるオミクロン株感染に対する発症予防効果は著しく低下するが、重症化予防効果は一定程度保たれている。また、ブースター接種によるオミクロン株感染の感染予防効果や入院予防効果が改善することも報告されている。
  • オミクロン株による感染拡大を踏まえた取組
    【国内の監視体制】
    全国的に感染拡大が進む中で、オミクロン株への置き換わりの状況を含めた地域の感染状況に応じた監視体制を継続させる必要がある。急速な感染拡大が生じている地域では、これまでに得られた知見等も踏まえた検査・積極的疫学調査の重点化や療養体制の切替えを実施すべき。また、重症者やクラスター事例においてはデルタ株の確認も必要。なお、一定数のゲノム解析によるモニタリングを継続する必要がある。
    【自治体における取組】
    自治体では、地域の感染状況及び今後の感染者数や重症者数の予測に基づき、必要病床数と医療従事者の確保や地域に必要な保健所機能の維持と体制強化のための応援確保、自宅療養者に対する訪問診療やオンライン診療体制の構築について機動的に取り組むことが必要。その際、高齢者や基礎疾患のある者など、重症化リスクのある患者を対象とする経口治療薬や中和抗体薬を迅速に投与できる体制を確保することが求められる。
    【検査の実施】
    感染拡大地域では、基本的対処方針に基づき、高齢者施設等の従業者等への積極的な検査の実施が求められる。また、感染に不安を感じて希望する方を対象とした無料検査を受けることが可能となったが、感染が急拡大している地域では、検査需要の急増と検査能力に注意が必要であり、優先度の高い検査が確実にできる体制を確保することが必要。
    【ワクチン未接種者、追加接種者への情報提供の再強化】
    特に、未接種者へのワクチン接種を進めることが重要であり、自治体においては、ワクチン接種に至っていない方への情報提供を進めることが求められる。あわせて、既に開始している追加接種を着実に実施していくことも必要。その際、医療従事者等や高齢者の方々を対象とした前倒し接種を円滑に実施することが求められる。
    【水際対策】
    入国時検査での陽性者をオミクロン株陽性者とみなして対応するとともに、海外における流行株監視のため、陽性者に対する全ゲノム解析を継続させることが必要。入国後の待機期間について、10日間に短縮されたが、待機期間を含め、今後の水際対策については、海外及び国内のオミクロン株の流行状況なども踏まえて引き続き検証する必要がある。
  • 地域における各事業の業務継続計画の早急な点検が必要
    • 地域で感染が急拡大することにより、特に医療機関、介護福祉施設では、職員とその家族の感染や、濃厚接触による職場離脱の可能性が高い。また同様のことは社会維持に必要なその他の職場でもおこりうるため、業務継続計画の早急な点検が必要である。また、オミクロン株について新たに得られた科学的知見等を踏まえ、医療従事者に限らず、濃厚接触者の健康観察期間を短縮化することに加え、地域の判断により、社会機能の維持に必要な者においては、検査を組み合わせることで、さらなる期間の短縮化を可能とした。ワクチン未接種者の療養期間についても、ワクチン接種者と同じで良いとした。引き続き、健康観察期間や療養期間について、適切に見直していくことが求められる。
  • 現在の感染状況を市民や事業者の皆様と広く共有して、感染拡大防止に協力していただくことが不可欠
    • 行政・事業者・市民の皆様には、重点措置区域だけでなく、全国でオミクロン株による感染が拡大している状況にあるとの認識をもって行動していただくことが必要。
    • オミクロン株においても基本的な感染対策は重要であり、ワクチン接種者も含め、マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要である。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播力が高いため、一つの密であってもできるだけ避けた方がよい。
    • 外出の際は、混雑した場所や感染リスクの高い場所を避けることが必要。飲食店を利用することが必要な際は、換気などの感染対策がされている第三者認証適用店を選び、できるだけ少人数で行い、大声・長時間を避けるとともに、飲食時以外はマスクを着用することが必要。
    • ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の指針に従って受診や検査をすることが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan