掲載日:2022年1月27日

第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月26日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比は2.2と急速な増加が続き、直近の1週間では10万人あたり約276となっている。新規感染者は20代以下を中心に増加しているが、年代別の割合では20代が減少する一方、10歳未満が増加している。まん延防止等重点措置が適用されている16都県のうち、沖縄県以外の15都県では急速な増加が継続している。沖縄県では今週先週比が1を下回る水準となっているが、新規感染者について20代中心に若年層で減少する一方、60代以上で増加していることに留意が必要。また、重点措置区域以外の地域でも新規感染者数の急速な増加が継続している。全国で新規感染者数が急速に増加していることに伴い、療養者数が急増し、重症者数も増加している。

オミクロン株のいわゆる市中感染が拡大しており、多くの地域でオミクロン株への急速な置き換わりが進んでいるが、引き続き、デルタ株も検出されている。

実効再生産数:
全国的には、直近(1/9)で1.37と1を上回る水準となっており、首都圏では1.45、関西圏では1.42となっている。

地域の動向等

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

<重点措置区域>
首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は今週先週比が2.5と急速な増加が続き、約482。20-30代以下が中心であるが、10代以下も増加傾向。病床使用率は3割強、重症病床使用率は約3割。埼玉、千葉、神奈川でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約254、256、278。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、埼玉では約4割、千葉では約3割、神奈川では3割強。

群馬、新潟

群馬の新規感染者数は今週先週比が2.4と急速な増加が続き、約230。20代以下が中心。病床使用率は5割強。新潟の新規感染者数は今週先週比が1.9と急速な増加が続き、約141。20代以下が中心。病床使用率は2割強。

中京

愛知の新規感染者数は今週先週比が2.5と急速な増加が続き、約295。20代以下が中心。病床使用率は2割強。岐阜、三重でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約188、142。岐阜では今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、岐阜では5割強、三重では3割強。

広島、山口、香川

広島の新規感染者数は今週先週比が1.4と増加が続き、約334。30代以下が中心。病床使用率は約4割。山口、香川でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約171、124。香川では今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、山口では約5割、香川では約4割。

熊本、長崎、宮崎

熊本の新規感染者数は今週先週比が1.8と増加が続き、約284。20代以下が中心。病床使用率は5割弱。長崎、宮崎でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約249、192。いずれも今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、いずれも3割強。

沖縄

新規感染者数は今週先週比が0.8と1を下回る水準となっているが、報告者数が実態を反映していない可能性に留意が必要。また、約547と全国で最も高い。新規感染者は30代以下が中心であるが、10歳未満や60代以上は増加傾向。病床使用率は6割強、重症病床使用率は7割弱。

<重点措置区域以外地域>
北海道

新規感染者数は今週先週比が2.8と急速な増加が続き、約202(札幌市約284)。20代以下が中心。病床使用率は2割強。

関西圏

大阪の新規感染者数は今週先週比が2.0と急速な増加が続き、約513。20代以下が中心。病床使用率は約5割、重症病床使用率は約2割。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約246、374、340、248、213。京都、兵庫、奈良では今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、滋賀では4割強、京都では3割強、奈良では約6割、兵庫では4割強、和歌山では7割強。重症病床使用率について、京都、和歌山では2割強、奈良では3割弱。

九州

福岡の新規感染者数は今週先週比が2.7と急速な増加が続き、約350。20代以下が中心。病床使用率は2割強。佐賀、大分、鹿児島でも新規感染者数の増加が続き、それぞれ約224、192、153。大分、鹿児島では今週先週比が2を超える急速な増加。病床使用率について、佐賀では3割強、大分では約4割、鹿児島では4割弱。

上記以外

青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、富山、石川、福井、山梨、長野、静岡、鳥取、島根、岡山、徳島、愛媛、高知では、それぞれ約112、29、71、73、58、51、142、161、59、143、100、164、153、206、114、161、199、64、135、90。病床使用率について、青森では約2割、岩手では約3割。山形、岡山では3割弱、福島、長野、高知では4割弱、茨城、富山、静岡、鳥取、徳島、愛媛では2割強、栃木、石川、島根では3割強、山梨では5割強。

今後の見通しと必要な対策

  • 全国の新規感染者はオミクロン株への置き換わりとともに急増している。既に重点措置区域とされている16都県に加え、1月27日から新たに18道府県に重点措置が適用される。今回の感染者急増は忘年会、クリスマス、年末・年始や1月の連休などによる接触機会の増加の影響が大きかったが、感染の場は家庭、職場、学校、医療機関、介護施設などに広がりつつあると考えられる。夜間滞留人口については、重点措置区域ではおおむね減少傾向にあるが、一部で増加している区域もある。今週先週比や実効再生産数からは、増加速度の鈍化傾向も見られるが、オミクロン株の特性やPCR検査陽性率などの推移から、今後も少なくとも短期的には全国で感染拡大が継続すると考えられ、オミクロン株の特性を踏まえた対策を迅速に実施する必要がある。
  • 学校・幼稚園・保育所等において、新型コロナウイルス感染陽性者や濃厚接触者が多くの地域で増加している。感染拡大地域においては、これらの施設における基本的な感染防止対策の強化と徹底が求められるとともに、教育機会の確保や社会機能維持にも配慮する必要がある。
  • オミクロン株へと置き換わりが進んでいるが、デルタ株による感染者も検出されている。デルタ株による感染はより重症化しやすく、実際に重症例も発生している。オミクロン株による感染拡大が先行した沖縄県では若年層で感染者数が減少しているが、60歳以上で増加が継続するとともに、入院例も増加し続けている。今後他の地域でも同様の傾向が見られる可能性がある。若年層中心の急激な感染拡大により、健康観察者や自宅療養者の急増への対応も含め、軽症・中等症の医療提供体制等が急速にひっ迫する可能性がある。さらに、その後、高齢者に感染が波及することで重症者数が増加する可能性もある。また、基礎疾患を有する陽性者でコロナ感染による肺炎が見られなくても、感染により基礎疾患が増悪することで、入院を要する感染者が増加することにも注意が必要。例年でも、この時期は救急搬送事案が多く発生しており、救急搬送困難事案に係る状況調査によれば、コロナ疑い事案のみならず非コロナ疑い事案も増加している。コロナ疑い事案の急増もあり、救急搬送困難事案は、昨年の同時期や夏の感染拡大時を上回る状況にある。通常医療、特に救急医療に対して既に大きな負荷がかかっている。
  • オミクロン株の特徴に関する知見
    【感染性・伝播性】
    オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。
    【感染の場・感染経路】
    国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様に飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。
    【重症度】
    オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い可能性が示唆されているが、オミクロン株感染による入院例が既に増加している地域もある。
    【ウイルスの排出期間】
    オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出については、ワクチン接種の有無にかかわらず時間の経過とともに減少し、従来株と同様に発症又は診断日から10日目以降において排出する可能性は低いことが示された。
    【ワクチン効果】
    初回免疫によるオミクロン株感染に対する発症予防効果は著しく低下するが、重症化予防効果は一定程度保たれている。また、ブースター接種によるオミクロン株感染の感染予防効果や入院予防効果が改善することも報告されている。
  • オミクロン株による感染拡大を踏まえた取組
    【感染が急拡大している地域における検査・診断及びサーベイランス】
    検査診断体制や保健所への届出処理がひっ迫し、公表データと実態との乖離が懸念される。発生動向を把握するため、実効性ある適切なサーベイランスの検討が必要である。さらに、これまでの知見等も踏まえた検査・積極的疫学調査の重点化などを実施すべき。また、基本的対処方針に基づき、高齢者施設等の従業者等への積極的な検査の実施が求められる。また、感染に不安を感じて希望する方を対象とした無料検査を受けることが可能となったが、検査需要の急増と検査能力に注意が必要であり、優先度の高い検査が確実にできる体制を確保することが必要。
    【国内の変異株監視体制】
    全国的に感染拡大が進む中で、オミクロン株への置き換わりの状況を含めた地域の感染状況に応じた監視体制を継続させる必要がある。また、重症者やクラスター事例においてはデルタ株を含めてゲノム解析による確認も必要。また、海外の一部地域ではBA.2系統による感染が拡大している。現状、国内におけるオミクロン株の主流はBA.1系統であるが、BA.2系統も検疫や国内で検出されている。今後も一定数のゲノム解析によるモニタリングを継続する必要がある。なお、BA.1系統とBA.2系統との比較において、現時点では入院率に関する違いは明確になっていない。
    【自治体における取組】
    自治体では、地域の感染状況及び今後の感染者数や重症者数の予測に基づき、必要病床数と医療従事者の確保や地域に必要な保健所機能の維持と体制強化のための応援確保、自宅療養者に対する訪問診療やオンライン診療体制の構築について機動的に取り組むことが必要。その際、高齢者や基礎疾患のある者など、重症化リスクのある患者を対象とする経口治療薬や中和抗体薬を迅速に投与できる体制を確保することが求められる。あわせて通常医療とのバランスに留意すべき。感染が急拡大した場合には、地域の感染状況に応じて、迅速に受診・健康観察に繋げるための対応を具体的に講じ、外来診療の機能不全を防ぐことが必要。
    【ワクチン未接種者、追加接種者への情報提供の再強化】
    特に、未接種者へのワクチン接種を進めることが重要。自治体では、ワクチン接種に至っていない方への情報提供を進めることが求められる。あわせて、既に開始している追加接種を着実に実施していくことも必要。その際、医療従事者等や高齢者の方々を対象とした前倒し接種を円滑に実施することが求められる。
    【水際対策】
    入国時検査での陽性者をオミクロン株陽性者とみなして対応するとともに、海外における流行株監視のため、陽性者に対する全ゲノム解析を継続させることが必要。入国後の待機期間について、10日間に短縮されたが、待機期間を含め、今後の水際対策については、海外及び国内のオミクロン株の流行状況なども踏まえて引き続き検証する必要がある。
  • 地域における各事業の業務継続計画の早急な点検が必要
    • 地域で感染が急拡大することにより、特に医療機関、介護福祉施設では、職員とその家族の感染や、濃厚接触による職場離脱の例が増加している。また同様のことは社会維持に必要なその他の職場でもおこりうるため、業務継続計画の早急な点検が必要である。また、オミクロン株について新たに得られた科学的知見等を踏まえ、医療従事者に限らず、濃厚接触者の健康観察期間を短縮化することに加え、地域の判断により、社会機能の維持に必要な者においては、検査を組み合わせることで、さらなる期間の短縮化を可能とした。ワクチン未接種者の療養期間についても、ワクチン接種者と同じで良いとした。引き続き、健康観察期間や療養期間について、適切に見直していくことが求められる。
    • 社会機能維持のためにも、企業におけるテレワークの活用や休暇取得の促進等により、出勤者数の削減に取り組むとともに、接触機会を低減することが求められる。
  • 現在の感染状況を市民や事業者の皆様と広く共有して、感染拡大防止に協力していただくことが不可欠
    • 行政・事業者・市民の皆様には、重点措置区域だけでなく、全国でオミクロン株を主体とした感染が急速に拡大している状況にあるとの認識をもって行動していただくことが必要。
    • オミクロン株においても基本的な感染防止対策は重要であり、ワクチン接種者も含め、不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続することが必要である。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播力が高いため、一つの密であってもできるだけ避けることが必要。
    • 感染拡大地域では学校活動などにおける基本的な感染防止対策の強化が求められるが、教育機会の確保や社会機能維持も必要。
    • 外出の際は、混雑した場所や感染リスクの高い場所を避けることが必要。行動は少人数で。飲食店を利用することが必要な際は、換気などの感染対策がされている第三者認証適用店を選び、できるだけ少人数で行い、大声・長時間を避けるとともに、飲食時以外はマスクを着用することが必要。
    • ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をすることが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan