掲載日:2022年3月10日

第75回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月9日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第75回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.90となり、直近の1週間では10万人あたり約329人と減少が継続している。年代別の新規感染者数は全ての年代で減少が継続している。

まん延防止等重点措置が適用されている18都道府県のうち15都道府県で今週先週比が1以下となり、新規感染者数は減少が継続している。一方、今月6日の期限をもって重点措置区域の適用が解除された13県のうち、福島県、高知県、佐賀県及び宮崎県で今週先週比が1以上となっている。

全国の新規感染者数減少の動きに伴い療養者数は減少するとともに、重症者数及び死亡者数は減少傾向となっている。

実効再生産数:
全国的には、直近(2/20)で0.95と1を下回る水準となっており、首都圏では0.95、関西圏では0.93となっている。

地域の動向

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

<重点措置区域>
北海道

新規感染者数は今週先週比が0.82と1を下回り、約234(札幌市約317)。30代以下が中心。病床使用率は4割弱。

東北

青森の新規感染者数は今週先週比が1.09と増加に転じ、約256。30代以下が中心であり、特に10歳未満で増加。病床使用率は5割弱。

北関東

群馬の新規感染者数は今週先週比が0.96と1を下回り、約217。30代以下が中心。病床使用率は5割弱、重症病床使用率は2割強。栃木でも今週先週比が0.81と1を下回り、新規感染者数は約201。茨城では今週先週比が1.13と増加に転じ、新規感染者数は約340。病床使用率について、茨城では4割弱、栃木では3割強。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は今週先週比が0.88と1を下回り、約497。30代以下が中心。病床使用率は5割弱、重症病床使用率は約4割。埼玉、千葉、神奈川でも今週先週比がそれぞれ0.90、0.94、0.97と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約386、376、452。病床使用率について、埼玉では5割強、千葉では約6割、神奈川では6割強。重症病床使用率について、埼玉では2割弱、千葉では1割強、神奈川では3割強。

北陸

石川の新規感染者数は今週先週比が0.91と1を下回り、約245。30代以下が中心。特に10代で増加するとともに、10歳未満が高水準で横ばいに推移。病床使用率は3割強。

中京・東海

愛知の新規感染者数は今週先週比が0.88と1を下回り、約373。30代以下が中心。病床使用率は約6割、重症病床使用率は2割強。岐阜、静岡でも今週先週比がそれぞれ0.82、0.90と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約200、239。病床使用率について、岐阜、静岡では4割強。

関西圏

大阪の新規感染者数は今週先週比が0.79と1を下回っているが、約507と全国で最も高い。30代以下が中心。病床使用率は7割強、重症病床使用率は5割強。京都、兵庫では今週先週比がそれぞれ約0.83、0.90と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約353、399。病床使用率について、京都では6割強、兵庫では約6割。重症病床使用率について、京都では3割強、兵庫では2割強。

四国

香川の新規感染者数は今週先週比が0.99と1を下回り、新規感染者数は約281。30代以下が中心。病床使用率は3割強、重症病床使用率は約2割。

九州

熊本の新規感染者数は今週先週比が1.11と増加に転じ、約252。30代以下が中心。病床使用率は4割強。

<重点措置区域以外>
沖縄

新規感染者数は今週先週比が1.13と増加が続き、約365。新規感染者は30代以下が中心であり、50代以下で増加。病床使用率は4割強、重症病床使用率は3割強。

上記以外

宮城、秋田、山形、福島、福井、島根、山口、愛媛、高知、佐賀では、それぞれ約193、152、130、134、350、105、153、144、193、293。いずれも今週先週比が1を上回る水準で増加。宮崎では今週先週比が1.0となり、約140。岩手、新潟、富山、山梨、長野、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、岡山、広島、徳島、福岡、長崎、大分、鹿児島では、それぞれ約149、109、304、182、118、213、386、462、174、122、202、160、236、356、175、194、172。いずれも今週先週比が1を下回る水準。病床使用率について、岩手、宮崎では約4割、宮城、山形、福島、長野、三重、和歌山、島根、徳島、愛媛、佐賀、大分では3割強、秋田、広島、高知では4割弱、新潟、福井、鳥取、長崎では2割強、富山では3割弱、山梨、岡山、山口、鹿児島では4割強、滋賀では7割強、奈良では約6割、福岡では5割強。重症病床使用率について、宮城、徳島、愛媛では約2割、奈良では7割弱、高知では3割弱。

 ※病床使用率、重症病床使用率については、内閣官房ホームページより。

今後の見通しと必要な対策

  • 新規感染者数は、全国的にみれば、実効再生産数及び今週先週比が1以下と減少が続き、直近1週間の移動平均も減少傾向にあるが、そのスピードは緩やかな状況。新規感染者における10代以下の割合は増加傾向が続き、依然として高い水準。また、介護福祉施設における高齢者の感染が継続している。
  • 感染レベルが高かった多くの地域では減少傾向が続くが、比較的感染レベルが低かった地域では減少傾向が弱く、下げ止まりや増加が見られたりと、感染状況の推移に地域差がある。特に、下げ止まりや増加の地域では10代未満が増加していることが多い。
  • 夜間滞留人口は重点措置区域の一部で増加している。また、2月下旬に重点措置区域の適用が解除された地域の一部では、夜間滞留人口が直近1週間で減少しているものの解除前より増加しており、新規感染者数の増加傾向も見られる。
  • 現在の感染状況は、継続的な減少傾向が見られた昨夏の感染拡大状況とは異なり、新規感染者数の減少は緩やかであり、少なくともしばらくの間、新規感染者数が高いレベルで推移していくことが予想される。今後BA.2系統に置き換わることで再度増加に転じる可能性や、年度末を迎えることによる感染状況への影響に注意が必要である。
  • 報告の遅れにより、陽性者数の公表データが実態と乖離している可能性が指摘されており、流行状況の判断にあたっては、他の指標(例えば東京都のモニタリング項目としては、発熱等相談件数、検査人数、救急医療の東京ルールの適用件数、入院患者数、重症患者数など)も継続的にモニタリングしていくことが重要。
  • 全国の感染者数の減少が続いても入院者数は横ばい又は減少が緩やかな地域も多く、当面は軽症・中等症の医療提供体制等のひっ迫や、一部の地域では高齢の重症者による重症病床使用率の高止まり傾向が続く可能性がある。今回の感染拡大における死亡者は、80歳以上の占める割合が高くなっている。感染前の状況としては、医療機関に入院中の方や高齢者施設に入所中の方が多く、高齢者の中には侵襲性の高い治療を希望されない場合や基礎疾患の悪化などの影響で重症の定義を満たさずに死亡する方など、コロナが直接の死因でない事例も少なくなく、基礎疾患を有する陽性者でコロナ感染による肺炎が見られなくても感染により基礎疾患が増悪することや、高齢の感染者が心不全や誤嚥性肺炎等を発症することで、入院を要する感染者の増加にも注意が必要。
  • 救急搬送困難事案について、非コロナ疑い事案及びコロナ疑い事案ともに全国的には減少傾向となったが、多くの地域で未だに高水準にあり、通常医療、特に救急医療に対して大きな負荷がかかっている。

オミクロン株の特徴に関する知見

【感染性・伝播性】

オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。

【感染の場・感染経路】

国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様に飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。

【重症度】

オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い可能性が示されているが、オミクロン株感染による入院例が既に増加している。現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても限られたデータではあるが季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、今後もさまざまな分析による検討が必要。

【ウイルスの排出期間】

オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出については、ワクチン接種の有無にかかわらず時間の経過とともに減少し、有症状者では、発症日から10日目以降において、また、無症状者では、診断日から8日目以降において排出する可能性が低いことが示された。

【ワクチン効果】

初回免疫によるオミクロン株感染に対する発症予防効果は著しく低下するが、入院予防効果は一定程度保たれている。また、ブースター接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、ブースター接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。国内でも新型コロナワクチンの2回及び3回接種によるオミクロン株への有効性に関する症例対照研究の暫定報告があり、オミクロン株に対するワクチンの有効性に関する知見も増えてきている。

【BA.2系統】

海外の一部地域ではBA.2系統による感染が拡大している。国内におけるオミクロン株は、当初BA.1とBA.1.1の海外からの流入がともにあったものの、その後BA.1.1が多数を占めるに至り、現在も主流となっているが、BA.2系統も検疫や国内で検出されており、今後、BA.2系統への置き換わりが進むとの推定も示されている。この場合、感染者数の増加(減少)速度に影響を与える可能性がある。なお、BA.2系統はBA.1系統との比較において、実効再生産数及び二次感染リスク等の分析から、感染性がより高いことが示されている。BA.2系統の世代時間は、BA.1系統と比べ15%短く、実効再生産数は26%高いことが示された。BA.1系統とBA.2系統との重症度の比較については、動物実験でBA.2系統の方が病原性が高い可能性を示唆するデータもあるが、実際の入院リスク及び重症化リスクに関する差は見られないとも報告されている。また、英国の報告では、ワクチンの予防効果にも差がないことが示されている。BA.1系統ウイルス感染後におけるBA.2系統ウイルスに再感染するリスクについてはまだ明らかではない。

オミクロン株による感染拡大を踏まえた取組

【感染急拡大地域におけるサーベイランス等】

発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討が必要。また、変異株監視体制について、オミクロン株への置き換わった地域においては、ゲノムサーベイランスで動向の監視を継続することが必要。さらに、重症例やクラスター事例等では、変異株PCR検査や全ゲノム解析による確認が求められる。

【自治体における取組】

自治体では、地域の感染状況及び今後の感染者数や重症者数の予測に基づき、必要病床数と医療従事者の確保や地域に必要な保健所機能の維持と体制強化のための応援確保、自宅療養者に対する訪問診療やオンライン診療体制の構築について機動的に取り組むことが必要。その際、高齢者や基礎疾患のある者など、重症化リスクのある患者を対象とする経口治療薬や中和抗体薬を迅速に投与できる体制を確保することが求められる。

この時期は、通常医療でも救急搬送が必要な急性疾患が多くなるため、コロナ医療と通常医療とのバランスに留意すべき。感染が急拡大した場合には、重症化リスクの高い方について、迅速かつ確実に受診・健康観察に繋げることが必要。また、コロナに罹患していても、基礎疾患の治療が継続できるような体制を整えることが必要。

健康観察等の重点化や患者発生届の処理の効率化など事務連絡に基づき、効率的な保健所業務の実施が求められる。あわせて、流行株の特性を踏まえた対策の最適化について検討することが必要。特に、濃厚接触者の特定や待機については、オミクロン株感染の流行により、感染レベルが高く保健所の濃厚接触者の特定に時間を要するような状況となっていることを踏まえ、その対象など戦略の検討が必要。

【ワクチン未接種者、追加接種者への情報提供の再強化】
  • 3回目接種率について、65歳以上高齢者では約60%を、全体では約25%を超えたが、高齢者を中心とする重症者・死亡者を最小限にするため、また同時に、現在の感染状況を確実に減少傾向へと向かわせるためにも、高齢者への接種を迅速に進めるとともに、65歳未満の対象者への追加接種をできるだけ前倒しすることが求められている。

  • 自治体では、ワクチン接種に関する情報提供を進めることが重要。未接種者へのワクチン接種とともに、初回接種から6か月以降の追加接種によりオミクロン株に対してもワクチンの有効性が回復することから、追加接種を着実に実施していくことも必要。また、ワクチン接種者においてはコロナ後遺症のリスクが低いとの報告がある。

  • さらに、5歳から11歳までの子どもへのワクチン接種が開始された。特例臨時接種として実施されているが、その際、努力義務の規定はこれらの小児について適用しないことを踏まえ、接種を進めていくことが必要。また、小児への感染予防を期待して、保護者や周囲の大人がワクチンを接種することも重要。

【水際対策】

3月からの入国者の待期期間の緩和などの措置の実施とともに、引き続き、海外及び国内のオミクロン株など変異株の流行状況なども踏まえて水際対策の段階的な見直しを検証していく必要がある。また、入国時検査での陽性者は、海外における流行株監視のため、全ゲノム解析を継続させることが必要。

オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底

感染が広がっている場面・場所において、オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底が求められる。

  • 学校・幼稚園・保育所等においては、新型コロナウイルス感染陽性者や濃厚接触者が多くの地域で増加している。子どもの感染対策の徹底はもとより、教職員や保育士などに対する積極的なワクチンの接種促進も含め感染対策の徹底が必要。また、分散登校やリモート授業などの組み合わせによる教育機会の確保や社会機能維持にも配慮する必要がある。あわせて、家庭内における感染対策を徹底することも求められる。
  • 高齢者の感染を抑制するため、介護福祉施設における対策を徹底していくことが重要。このため、入所者及び従事者に対するワクチンの追加接種を進めるとともに、従業者等へは積極的な検査を実施することも必要。また、施設等における感染管理や医療に関して外部からの支援が重要。
  • 職場においては、社会機能維持のため、業務継続計画の活用に加え、企業におけるテレワークの活用や休暇取得の促進等により、出勤者数の削減に取り組むとともに、接触機会を低減することが求められる。また、従業員の体調管理を徹底することが必要であることに加え、職域におけるワクチンの追加接種を積極的に進めるべきである。
現在の感染状況を市民や事業者の皆様と広く共有して、感染拡大防止に協力していただくことが不可欠
  • 行政・事業者・市民の皆様には、オミクロン株においても基本的な感染防止策は有効であることから、不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続していただくことが必要。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播性が高いため、一つの密であってもできるだけ避けることが必要。さらに、個人の重症化予防・発症予防だけではなく、周囲の人々への感染を防ぐ効果を期待して、ワクチンの追加接種を受けていただくことが重要。
  • 外出の際は、混雑した場所や換気が悪く大人数・大声を出すような感染リスクの高い場面・場所を避けることが必要。行動はいつも会う人と少人数で。飲食は、できるだけ少人数で黙食を基本とし、飲食時以外はマスクの着用を徹底することが必要。
  • ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をすることが必要。
  • これからの年度末に向けて、卒業式・春休み・3連休・お花見等の多くの人が集まる機会が増える。これまでこのような機会をきっかけに感染が拡大したことから、感染防止策の徹底が必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan