国立感染症研究所

掲載日:2022年3月24日

第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年3月23日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第77回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.79となり、直近の1週間では10万人あたり約232と減少が継続しているが、連休による数値への影響に注意が必要。 また、年代別の新規感染者数は全ての年代で減少が継続している。

重点措置区域の適用が解除された18都道府県すべてにおいて、今週先週比が1以下となっている。

全国の新規感染者数減少の動きに伴い、療養者数、重症者数及び死亡者数は減少が継続している。

実効再生産数:
全国的には、直近(3/7)で0.96と1を下回る水準となっており、首都圏では0.97、関西圏では0.92となっている。

地域の動向

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

北海道

新規感染者数は今週先週比が0.95と1を下回り、約200(札幌市約266)。20代が中心。病床使用率は約2割。

北関東

茨城の新規感染者数は今週先週比が0.98と1を下回り、約338。20代以下が中心。病床使用率は約3割。栃木、群馬でも今週先週比はそれぞれ0.90、0.88と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約170、193。病床使用率について、栃木では2割強、群馬では約4割。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は今週先週比が0.81と1を下回っているが、約341と全国で最も高い。20代以下が中心。病床使用率は3割強、重症病床使用率は約3割。埼玉、千葉、神奈川でも今週先週比がそれぞれ0.91、0.81、0.76と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約322、280、322。病床使用率について、埼玉では約4割、千葉では3割強、神奈川では4割強。重症病床使用率について、神奈川では2割強。

中京・東海

愛知の新規感染者数は今週先週比が0.72と1を下回り、約207。20代以下が中心。病床使用率は約4割。岐阜、静岡、三重でも今週先週比がそれぞれ0.73、0.81、0.76と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約131、181、146。病床使用率について、岐阜では3割強、静岡では2割強、三重では3割弱。

関西圏

大阪の新規感染者数は今週先週比が0.66と1を下回り、約269。20代以下が中心。病床使用率は約5割、重症病床使用率は約4割。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山でも今週先週比がそれぞれ0.75、0.73、0.71、0.64、0.75と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約270、217、233、239、109。病床使用率について、滋賀では約5割、京都では4割強、兵庫では約4割、奈良では4割強、和歌山では2割強。重症病床使用率について、奈良では3割強。

九州

福岡の新規感染者数は今週先週比が0.77と1を下回り、約249。20代が中心。病床使用率は3割強。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島でも今週先週比がそれぞれ0.67、0.67、0.63、0.77、0.88、0.91と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約175、106、158、125、130、136。病床使用率について、佐賀では2割強、長崎では約2割、熊本では約3割、大分では2割強、宮崎では2割弱、鹿児島では4割弱。

沖縄

新規感染者数は今週先週比が1.0となり、約291。新規感染者は20代以下が中心であり、20代の増加傾向に注意。病床使用率は2割強。

上記以外

重点措置区域の適用が解除された18都道府県のうち、上述の15都道府県以外の青森、石川、香川では今週先週比がそれぞれ0.96、0.79、0.78と1を下回り、新規感染者数はそれぞれ約271、184、232。病床使用率について、青森、石川では3割弱、香川では3割強。

今後の見通しと必要な対策

  • 3月21日までの期限をもってまん延防止等重点措置がすべて解除された。新規感染者数は、全国的にみれば、1か月以上にわたり実効再生産数及び今週先週比が1以下で緩やかな減少が続いている。また、新規感染者における10代以下の割合は増加傾向が続き、依然として高い水準。高齢者では、介護福祉施設や医療機関における感染が継続している。また、新規感染者の感染場所として、20代では飲食店の割合が増加傾向にある。
  • 感染レベルが高かった大都市圏では減少傾向が続くが、比較的感染レベルが低かった地域では減少傾向が弱く、下げ止まりや増加が見られたりと、感染状況の推移に地域差がある。
  • 夜間滞留人口については、今般の重点措置が解除される直前の動きとして、首都圏では減少傾向が見られる一方、その他のエリアでは継続して増加している地域もある。これからお花見、謝恩会、歓送迎会などの時期を迎え、特に夜間滞留人口が増加する可能性があることから、今後の感染者数の動向とあわせて注視していくことが必要。
  • 現在の感染状況は、継続的な減少傾向が見られた昨夏の感染拡大状況とは異なり、新規感染者数の減少は緩やかであり、未だに高いレベルで推移している。今後BA.2系統に置き換わりが進むことで再度増加に転じる可能性があること、重点措置が解除されたことや、普段会わない方との接触の機会が増える春休みや年度替わりの時期を迎えることによる感染状況への影響に注意が必要である。このため、しばらくの間は、平時への移行期間であるとの認識に立ち、最大限の警戒をしつつ、基本的な感染対策を徹底してできるだけ感染者数の減少を継続させるとともに、新規感染者数のリバウンドが起こらないよう、引き続き、市民や事業者の方々にご協力していただくことが必要。
  • 全国的な新規感染者数の減少に伴い、病床使用率や自宅療養者数についても、地域差はあるものの、低下傾向が継続している。ただし、新規感染者数の下げ止まりや増加が見られる多くの地域では、入院者数が横ばい又は緩やかに減少している。
  • 救急搬送困難事案について、非コロナ疑い事案及びコロナ疑い事案ともに減少傾向にあるものの未だ高いレベルにあり、コロナ医療と通常医療、特に救急医療とのバランスに留意すべき。
  • 今回の感染拡大における死亡者は、80歳以上の占める割合が高くなっている。感染前の状況としては、医療機関に入院中の方や高齢者施設に入所中の方が多いことが示された。高齢者の中には、侵襲性の高い治療を希望されない場合や基礎疾患の悪化などの影響で重症の定義を満たさずに死亡する方など、コロナが直接の死因でない事例も少なくないことが報告されており、基礎疾患を有する陽性者でコロナ感染による肺炎が見られなくても感染により基礎疾患が増悪することや、高齢の感染者が心不全や誤嚥性肺炎等を発症することにより、入院を要する感染者の増加に繋がることにも注意が必要。

オミクロン株の特徴に関する知見

【感染性・伝播性】

オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。

【感染の場・感染経路】

国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様に飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。

【重症度】

オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低い可能性が示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても限られたデータではあるが季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、今後もさまざまな分析による検討が必要。

【ウイルスの排出期間】

オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出については、時間の経過とともに減少する。有症状者では、発症日から10日目以降において、排出する可能性が低くなることが示された。なお、無症状者では、診断日から8日目以降において排出していないことが示された。

【ワクチン効果】

初回免疫によるオミクロン株感染に対する発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、ブースター接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、ブースター接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。海外では一部の国で4回目接種が始まっている。有効性・安全性の情報を収集し、国内での4回目接種の必要性や対象者、開始時期などについて検討する必要がある。

【BA.2系統】

海外の一部地域ではBA.2系統による感染が拡大している。国内におけるオミクロン株は、当初BA.1とBA.1.1の海外からの流入がともにあったものの、その後BA.1.1が多数を占めるに至り、現在も主流となっているが、BA.2系統も検疫や国内で検出されており、現在、BA.2系統への置き換わりが進んでいる。このため、今後、感染者数の増加(減少)速度に影響を与える可能性がある。なお、BA.2系統はBA.1系統との比較において、実効再生産数及び二次感染リスク等の分析から、感染性がより高いことが示されている。BA.2系統の世代時間は、BA.1系統と比べ15%短く、実効再生産数は26%高いことが示された。BA.1系統とBA.2系統との重症度の比較については、動物実験でBA.2系統の方が病原性が高い可能性を示唆するデータもあるが、実際の入院リスク及び重症化リスクに関する差は見られないとも報告されている。また、英国の報告では、ワクチンの予防効果にも差がないことが示されている。英国の報告では、BA.1系統ウイルス感染後におけるBA.2系統ウイルスに再感染した事例は少数報告されているが、これらの症例の詳細についてはまだ明らかとなっていない。

オミクロン株による感染拡大を踏まえた取組

【サーベイランス等】

発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討が必要。また、変異株監視体制について、 BA.1系統からBA.2系統への置き換わりに関し、ゲノムサーベイランスで動向の監視を継続することが必要。さらに、重症例やクラスター事例等では、変異株PCR検査や全ゲノム解析による確認が求められる。

【自治体における取組】

自治体では、地域の感染状況に基づき、必要病床数と医療従事者の確保や地域に必要な保健所機能の維持と体制強化のための応援確保、自宅療養者に対する訪問診療やオンライン診療体制の構築に引き続き取り組むことが必要。高齢者や基礎疾患のある者など、重症化リスクのある患者を対象とする経口治療薬や中和抗体薬を迅速に投与できる体制の確保も引き続き求められる。また、コロナに罹患しても、基礎疾患の治療が継続できるような体制を整えることが必要。

健康観察等の重点化や患者発生届の処理の効率化など事務連絡に基づき、効率的な保健所業務の実施が求められる。

また、濃厚接触者の特定や待機については、地域の感染状況に応じて、適切な感染対策を行うことを原則としつつ、オミクロン株の特徴(潜伏期間や発症間隔が短い等)や感染拡大の状況を踏まえ、医療機関や高齢者施設など、特に重症化リスクが高い方々が入院・入所している施設における感染事例に重点化することが必要。あわせて、少しでも体調が悪い場合には職場・学校を休める環境を確保することも重要。

【ワクチン未接種者、追加接種者への情報提供の再強化】
  • 3回目接種率について、65歳以上高齢者では約76%を、全体では約35%を超えたが、高齢者を中心とする重症者・死亡者を最小限にするため、また同時に、感染状況を減少傾向へと向かわせることも期待して、高齢者への接種を迅速に進めるとともに、65歳未満の対象者への追加接種をできるだけ前倒しすることが求められている。

  • 自治体では、ワクチン接種に関する情報提供を進めることが重要。未接種者へのワクチン接種とともに、初回接種から6か月以降の追加接種によりオミクロン株に対してもワクチンの有効性が回復することから、追加接種を着実に実施していくことも必要。また、ワクチン接種者においてはコロナ後遺症のリスクが低いとの報告がある。

  • さらに、5歳から11歳までの子どもへのワクチン接種が開始された。特例臨時接種として実施されているが、その際、努力義務の規定はこれらの小児について適用しないことを踏まえ、接種を進めていくことが必要。また、小児への感染予防を期待して、保護者や周囲の大人がワクチンを接種することも重要。

【水際対策】

3月からの入国者の待期期間の緩和などの措置の実施とともに、引き続き、海外及び国内の流行状況なども踏まえて水際対策の段階的な見直しを検証していく必要がある。特に、直近の東アジア地域における流行状況には注視が必要。また、入国時検査での陽性者は、海外における流行株監視のため、全ゲノム解析を継続させることが必要。

オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底

感染が広がっている場面・場所において、オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策の強化・徹底が求められる。

  • 学校・幼稚園・保育所等においては、新型コロナウイルス感染陽性者や濃厚接触者が多くの地域で増加している。子どもの感染対策の徹底はもとより、教職員や保育士などに対する積極的なワクチンの接種促進も含め感染対策の徹底が必要。子どもや職員が少しでも体調が悪い場合は、休暇を取得できる環境を確保することが重要。また、分散登校やリモート授業などの組み合わせによる教育機会の確保や社会機能維持にも配慮する必要がある。あわせて、家庭内における感染対策を徹底することも求められる。春休み期においては、学習塾、習い事等における感染対策の徹底が必要。
  • 高齢者の感染を抑制するため、介護福祉施設における対策を徹底していくことが重要。このため、入所者及び従事者に対するワクチンの追加接種を進めるとともに、従業者等へは積極的な検査を実施することも必要。また、施設等における感染管理や医療に関して外部から早期に迅速な支援が重要。
  • 職場においては、社会機能維持のため、業務継続計画の活用に加え、企業におけるテレワークの活用や休暇取得の促進等により、出勤者数の削減に取り組むとともに、接触機会を低減することが求められる。また、従業員の体調管理を徹底し、少しでも体調が悪い場合には休暇を取得できる環境を確保することが必要であることに加え、職域におけるワクチンの追加接種を積極的に進めるべきである。
現在の感染状況を市民や事業者の皆様と広く共有して、感染拡大防止に協力していただくことが不可欠
  • まん延防止等重点措置がすべて解除されたが、現在の新規感染者数は昨年夏のピークよりも高い状況が続いていることも踏まえ、引き続き基本的な感染防止策の継続が必要。
  • 行政・事業者・市民の皆様には、オミクロン株においても基本的な感染防止策は有効であることから、不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの徹底を継続していただくことが必要。また、三つの密(密集、密閉、密接)が重なるところは最も感染リスクが高いが、オミクロン株は伝播性が高いため、一つの密であってもできるだけ避けることが必要。さらに、個人の重症化予防・発症予防だけではなく、周囲の人々への感染を防ぐ効果を期待して、ワクチンの追加接種を受けていただくことが重要。
  • 外出の際は、混雑した場所や換気が悪く大人数・大声を出すような感染リスクの高い場面・場所を避けることが必要。行動はいつも会う人と少人数で。飲食は、できるだけ少人数で黙食を基本とし、飲食時以外はマスクの着用を徹底することが必要。
  • ご自身やご家族の命を守るため、同時にオミクロン株による感染拡大防止のためにも、軽度の発熱、倦怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えるとともに、自治体等の方針に従って受診や検査をすることが必要。
  • 年度末から年度初めにかけて、春休み・お花見・入学式等の多くの人が集まる機会が増える。これまでこのような機会をきっかけに感染が拡大したことから、今後のリバウンドを防ぐためにも感染防止策の徹底が必要。また、年度初めに関しては、入社や入学の際に人の移動・研修を伴うことが多いため、特に注意が必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等 

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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