掲載日:2022年7月28日

第92回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年7月27日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第92回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約978人となり、今週先週比は1.89と急速な増加が継続している(今週先週比は3連休の影響にも注意が必要)。全国的にこれまでで最も高い感染レベルを更新し続けるとともに、全ての年代で増加している。

新規感染者数の増加に伴い、療養者数も増加が継続し、病床使用率は、地域差が見られるものの総じて上昇傾向が続き、医療提供体制に大きな負荷が生じている地域もある。
また、重症者数や死亡者数も増加傾向が続き、今後の動向に注意が必要。

実効再生産数:
全国的には、直近(7/10)で1.24と1を上回る水準となっており、首都圏、関西圏ともに1.26となっている。

地域の動向

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値。

北海道

新規感染者数は約494人(札幌市約569人)、今週先週比は2.29。30代以下が中心。病床使用率は2割弱。

北関東

茨城、栃木、群馬では新規感染者数は約530人、682人、692人、今週先週比は2.08、2.57、2.10。茨城、栃木、群馬では30代以下が中心。病床使用率について、茨城では5割弱、栃木では約4割、群馬では約5割。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は約1,438人、今週先週比は1.79。30代以下が中心。病床使用率は4割強、重症病床使用率は5割強。埼玉、千葉、神奈川の新規感染者数は約927人、892人、875人、今週先週比は1.78、1.85、1.50。病床使用率について、埼玉では約5割、千葉では5割強、神奈川では7割弱。

中京・東海

愛知の新規感染者数は約1,130人、今週先週比は2.17。30代以下が中心。病床使用率は4割弱。岐阜、静岡、三重の新規感染者数は約758人、885人、730人、今週先週比は2.16、2.19、1.83。病床使用率について、岐阜では3割強、静岡では約7割、三重では4割強。

関西圏

大阪の新規感染者数は約1,555人、今週先週比は2.18。30代以下が中心。病床使用率は約5割、重症病床使用率は3割弱。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の新規感染者数は約717人、1,035人、1,060人、826人、771人、今週先週比は1.57、1.92、1.91、1.49、1.73。病床使用率について、滋賀、兵庫では5割強、京都では3割強、奈良では4割強、和歌山では6割強。

九州

福岡の新規感染者数は約1,481人、今週先週比は2.01。30代以下が中心。病床使用率は6割強。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の新規感染者数は約1,231人、834人、1,461人、1,055人、1,097人、1,133人、今週先週比が1.58、2.01、1.63、1.73、1.78、1.70。病床使用率について、佐賀では4割強、長崎では5割強、熊本では約6割、大分では4割強、宮崎では4割弱、鹿児島では6割強。

沖縄

新規感染者数は約2,260人と全国で最も高く、今週先週比は1.46。30代以下が中心。病床使用率は8割強、重症病床使用率は3割強。

上記以外

宮城、秋田、栃木、新潟、富山、山梨、島根、香川の今週先週比は2.85、2.67、2.57、2.35、2.61、2.38、1.18、2.11。島根の新規感染者数は約969人。病床使用率について、青森では約6割、福島、広島では約5割、石川では5割強。

今後の見通しと必要な対策

  • 感染状況について
    • 新規感染者数について、全国的にこれまでで最も高い感染レベルを更新し続けており、全ての都道府県で前回の感染拡大を大きく超え、急速な感染拡大が継続している。沖縄県は他の地域よりも高い感染レベルが継続し、かつ、これまでで最も高い水準となり、病床使用率からも厳しい状況にある。また、感染者及び濃厚接触者の急増により、社会活動全体への影響も生じている。

    • 全国の年代別の新規感染者数は、高齢者を含めて全ての年代で増加している。これまでも新規感染者の急増から遅れて、重症者・死亡者が増加する傾向にあり、高齢者の感染者数の増加とともにこれらの増加が懸念される。

    • 今後の感染状況について、発症日のエピカーブや大都市における短期的な予測では、多くの地域で新規感染者数の増加が続くこと、あるいは少なくとも横ばいが見込まれ、また全国的には今後過去最多を更新していくことも予測されるため、医療提供体制への影響も含め最大限の警戒感をもって注視していく必要がある。

    • 感染者増加が継続する要因としては、 ①ワクチンの3回目接種と感染により獲得された免疫は徐々に減衰していること、 ②夏休みの影響等もあり、接触の増加等が予想されること、③オミクロン株のBA.5系統に置き換わったと推定されること等によると考えられる。

    • 新規感染者の感染場所について、自宅が増加傾向にあり、学校等では減少傾向にある(大都市部では積極的疫学調査が重点化されており、感染経路の十分な把握がされていないことに留意が必要)。

  • 感染の増加要因と抑制要因について

    感染状況には、以下のような感染の増加要因と抑制要因の変化が影響するものと考えられる。

    【ワクチン接種等】

    3回目接種から一定の期間が経過することに伴い、重症化予防効果に比較し、感染予防効果はより減弱が進むことが明らかになっている。また、これまでの感染により獲得した免疫についても、今後同様に減弱が進むことが予想される。

    【接触パターン】

    夜間滞留人口について、東京、愛知、大阪などの大都市部を始め、足下では減少している地域が多く見られる。しかし、一部には横ばい、あるいは足下で増加に転じている地域もある。

    【流行株】

    BA.2系統の流行から、現在BA.5系統が主流となり、置き換わったと推定される。特にBA.5系統は、感染者数がより増加しやすいことが示唆され、免疫逃避が懸念されるため、感染者数の増加要因となりえる。

    【気候要因】

    気温の上昇により屋内での活動が増える時期であるが、冷房を優先するため換気がされにくい場合もある。

  • 医療提供体制について
    • 全国的には、外来診療検査体制の負荷が増大するとともに、病床使用率については地域差が見られるものの、新規感染者数の増加に伴い、大都市を始めほとんどの地域で上昇して3割を超え、5割を超える地域も増加している。また、自宅療養者・療養等調整中の数もほとんどの地域で増加し、一部地域では急増している。
    • 特に沖縄県では、病床使用率の上昇が継続し、8割を超えて厳しい状況にあり、全国的にも、医療従事者の感染が増加していることによる医療提供体制への負荷が生じている。また、介護の現場でも、施設内療養が増加するとともに、療養者及び従事者の感染の増加により厳しい状況が続いている。
    • 検査の陽性率が上昇し、症状がある人など必要な方に検査が適切に受けられているか懸念がある。
    • 救急搬送困難事案については、非コロナ疑い事案、コロナ疑い事案ともに、地域差はあるが全国的に急増が続いている。また、熱中症による救急搬送の増加にも十分な注意が必要である。
  • 対策と基本的な考え方について
    • 感染が急拡大している中で、日本社会が既に学んできた様々な知見をもとに、感染リスクを伴う接触機会を可能な限り減らすことが求められる。また、社会経済活動を維持するためにも、それぞれが感染しない/感染させない方法に取り組むことが必要。
    • そのために、国、自治体は、日常的な感染対策の必要性を国民に対して改めて周知するとともに、感染防止に向けた国民の取組を支援するような対策を行う。また、医療提供体制の強化について、これまで以上に取り組む必要。

    1.ワクチン接種の更なる促進

    • 4回目接種については、感染予防効果が限定的であるため、重症化予防を目的として、高齢者施設等における接種が進められてきたが、足下の急速な感染拡大を踏まえ、医療従事者及び高齢者施設等の従事者に対象が拡大された。
    • 3回目までの接種については、接種率が低い年代・地域に対して、引き続き接種促進を図ることが必要。

    2.検査の活用

    第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。

    【高齢者】
    • 高齢者施設等の従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)の実施が必要。
    • 地域の実情に応じて、高齢者施設等の利用者への節目(例:帰省した親族との接触等が想定されるお盆等)での検査の推奨。
    【子ども】
    • 地域の実情に応じて、クラスターが発生している場合には、保育所・幼稚園等の教職員・保育士への頻回検査の実施が必要。
    • 自治体や学校等の判断で、健康観察を徹底し、何らかの症状がある者等には検査を行い、部活動の大会や修学旅行などへの参加を可能としながら、集団感染を防止することが必要。
    【若者等】
    • 大人数での会食や高齢者と接する場合(特にお盆・夏休みの帰省での接触)の事前検査をさらに推奨。
    • 有症状者が医療機関の受診前等に抗原定性検査キット等で自ら検査する体制整備が必要。また、必要な方が抗原定性検査キットを確保できるよう流通含め安定的な供給が重要。

    3.効果的な換気の徹底

    第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、エアコン使用により換気が不十分になる夏場において、効果的な換気方法の周知・推奨が必要(エアロゾルを考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。

    4.保健医療提供体制の確保

    • 更なる感染拡大に備え、国の支援のもと、都道府県等は以下の体制の点検と強化が必要。
    • コールセンターの設置・活用や迅速・スムーズに検査でき安心して自宅療養できる体制の強化・治療薬を適切・早期に投与できる体制の構築・強化
    • 病床の更なる確保に向けた確保病床の計画的な稼働準備等・病室単位でのゾーニングによる柔軟で効率的な病床の活用の推進
    • 救急搬送困難事案の増加傾向への対応。コロナ患者以外の患者受入体制の確認とともに、熱中症予防の普及啓発、熱中症による救急搬送が増えていることを注意喚起。また、自宅・宿泊療養中の方には相談窓口の活用を呼びかける。さらに、医療機関への受診を希望される方については、救急車の要請が必要な症状の目安について周知。
    • 高齢者施設等における集中的実施計画に基づく検査等及び高齢者施設等における医療支援の更なる強化。
    • 保健所業務がひっ迫しないよう、入院調整本部による入院調整や業務の外部委託・一元化などの負担軽減を更に推進。

    5.基本的な感染対策の再点検と徹底

    不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気などの継続。3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける。飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用する。咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える。接触機会を減らすために、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進する、など基本的感染対策の再点検と徹底が必要。また、イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策の実施が必要。

≪参考:オミクロン株とその亜系統の特徴に関する知見≫
【感染性・伝播性】

オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。

【感染の場・感染経路】

国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。

【重症度】

オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。前回の感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、80歳以上の占める割合が高く、例えば、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナウイルス感染症が直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。高齢の感染者や基礎疾患を有する感染者の基礎疾患の増悪や、心不全や誤嚥性肺炎等の発症にも注意が必要。

【ウイルスの排出期間】

オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出は、時間の経過とともに減少する。有症状者では、発症日から10日目以降において、排出する可能性が低くなることが示されている。なお、無症状者では、診断日から8日目以降において排出していないことが示されている。

【ワクチン効果】

初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。 4回目接種については、重症化予防効果は6週間減衰しなかった一方、感染予防効果は限定的であり、短期間しか持続しなかったと報告されている。

【オミクロン株の亜系統】

世界におけるBA.5系統の占める割合が増加しており、 BA.5系統はBA.2系統と比較して感染者増加の優位性が示唆されている。世界的には、BA.5系統へ置き換わりつつある中で、陽性者数が増加傾向となっている。BA.5系統はBA.1系統やBA.2系統に比して既存免疫を逃避する傾向が示されているが、感染力に関する明確な知見は示されていない。なお、東京都のデータに基づき算出されたBA.5系統の実効再生産数は、BA.2と比較して約1.27倍とされた。また、民間検査機関の全国の検体では約1.3倍と推計された。

WHOレポートでは、複数の国から集積した知見によると、BA.5系統に関して、既存のオミクロン株と比較した重症度の上昇は見られないとしている。一方で、国内の実験室内のデータからは、BA.5系統はBA.1及びBA.2系統よりも病原性が増加しているとする報告があるが、臨床的には現時点では確認されていない。また、 BA.5系統の形質によるものかは不明であるが、BA.5系統中心に感染者数が増えている国では、入院者数・重症者数が増加していることに注意を要する。

BA.5系統は全て国内及び検疫で検出されている。ゲノムサーベイランスによると、BA.5系統の検出割合が増加しており、置き換わったと推定される。ウイルスの特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan