掲載日:2022年8月15日

第94回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年8月10日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第94回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

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感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約1,194人となり、今週先週比は1.05と増加幅は減少してきているが、感染者数の増加が継続している。一部地域では今週先週比が1以下となったが、全国的にはこれまでで最も高い感染レベルが継続している。

新規感染者数の増加に伴い、療養者数も増加が継続し、病床使用率は、ほぼ全国的に上昇傾向が続いている。また、医療提供体制においては救急搬送困難事案の増加や医療従事者の欠勤などが見られ、コロナだけでなく一般医療を含め医療提供体制に大きな負荷が生じており、今後の深刻化が懸念される。また、重症者数や死亡者数も増加傾向が続き、今後の動向に注意が必要。

実効再生産数:
全国的には、直近(7/24)で1.03と1を上回る水準となっており、首都圏では1.01、関西圏では1.03となっている。

地域の動向

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

北海道

新規感染者数は約865人(札幌市約1,021人)、今週先週比は1.15。30代以下が中心。病床使用率は3割強。

北関東

茨城、栃木、群馬では新規感染者数は約982人、912人、885人、今週先週比は1.25、1.05、1.09。茨城、栃木、群馬では30代以下が中心。病床使用率について、茨城では6割強、栃木では約6割、群馬では6割弱。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は約1,540人、今週先週比は0.97。30代以下が中心。病床使用率は5割強、重症病床使用率は6割強。埼玉、千葉、神奈川の新規感染者数は約1,135人、1,038人、1,037人、今週先週比は1.01、1.00、0.94。病床使用率について、埼玉では7割弱、千葉では9割強、神奈川では約8割。

中京・東海

愛知の新規感染者数は約1,324人、今週先週比は1.07。30代以下が中心。病床使用率は約8割。岐阜、静岡、三重の新規感染者数は約1,133人、1,106人、1,104人、今週先週比は1.20、1.19、1.17。病床使用率について、岐阜、三重では6割弱、静岡では8割強。

関西圏

大阪の新規感染者数は約1,596人、今週先週比は1.01。30代以下が中心。病床使用率は約7割、重症病床使用率は4割強。滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の新規感染者数は約1,202人、1,370人、1,347人、1,116人、1,227人、今週先週比は1.02、1.03、1.09、1.09、1.30。病床使用率について、滋賀、和歌山では7割強、京都では約5割、兵庫、奈良では6割強。

九州

福岡の新規感染者数は約1,577人、今週先週比は0.97。30代以下が中心。病床使用率は7割強。佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の新規感染者数は約1,344人、1,302人、1,504人、1,201人、1,553人、1,441人、今週先週比が1.04、1.24、1.03、1.09、1.15、1.05。病床使用率について、佐賀、大分では約5割、長崎では6割強、熊本では7割弱、宮崎では5割弱、鹿児島では7割強。

沖縄

新規感染者数は約2,262人と全国で最も高く、今週先週比は0.96。30代以下が中心。病床使用率は8割強、重症病床使用率は3割強。

上記以外

青森、新潟、福井、島根、広島、高知の今週先週比は0.95、1.12、0.94、1.16、1.41、1.36。島根の新規感染者数は約908人。病床使用率について、青森では5割強、新潟では7割強、石川、岡山、広島では6割強。

感染状況等と今後の見通し

  • 感染状況について
    • 新規感染者数について、一部地域では今週先週比が1以下となったが、全国的には全ての都道府県で前回の感染拡大を大きく超え、これまでで最も高い感染レベルが継続している。沖縄県は他の地域よりも高い感染レベルが継続しており、病床使用率からも厳しい状況にある。また、高齢者施設における集団感染の急増と病床のひっ迫により実質的に施設内療養者が増加している。さらに、全国的に感染者及び濃厚接触者の急増により、医療機関や福祉施設だけでなく、社会活動全体への影響も生じている。

    • 全国の年代別の新規感染者数は、夏休みに入り10代を中心に若年層で減少に転じたが、重症化リスクの高い高齢者を含む50代以上で増加が継続している。これまでの傾向と同様、新規感染者の急増から遅れて重症者・死亡者が増加しており、特に死亡者は第6波のピークに近いレベルまで急上昇しており、今後死亡者はさらに増加することが懸念される。

    • 今後の感染状況について、発症日のエピカーブや大都市における短期的な予測などでは、一部地域ではピークを越えつつあるとの予測もあり、実際に新規感染者数が減少に転じた地域も出てきているが、いまだに多くの地域で新規感染者数は増加している。また、いったん減少あるいは高止まり傾向がみられた地域でも急激に増加している地域がある。増加の要因としては、夏休みやイベントによる接触機会の増加の影響もあると考えられる。今後もお盆の人の動きに伴う影響も懸念され、医療提供体制への影響も含め最大限の警戒感をもって注視していく必要がある。

    • 感染者増加が継続する要因としては、 ①ワクチンの3回目接種と感染により獲得された免疫は徐々に減衰していること、 ②夏休みやお盆等の影響等もあり、接触の増加等が予想されること、③オミクロン株のBA.5系統に置き換わったと推定されること等によると考えられる。

    • 新規感染者の感染場所について、自宅が増加傾向にあり、学校等では夏休みの影響が想定され減少傾向にある。また、20-60代で事業所(職場)の割合が増加している(大都市部では積極的疫学調査が重点化され、感染経路の十分な把握がされていないことに留意が必要)。

  • 感染の増加要因と抑制要因について

    感染状況には、以下のような感染の増加要因と抑制要因の変化が影響するものと考えられる。

    【ワクチン接種等】

    3回目接種から一定の期間が経過することに伴い、重症化予防効果に比較し、感染予防効果はより減弱が進むことが明らかになっている。また、これまでの感染により獲得した免疫についても、今後同様に減弱が進むことが予想される。

    【接触パターン】

    夜間滞留人口について、全体的には横ばい傾向で、首都圏、中部圏、関西圏及び沖縄県では減少あるいは横ばい傾向で推移した。また、学校などの夏休みが10代中心の若年層の新規感染者の減少に影響したと考えられる。

    【流行株】

    BA.2系統の流行から、現在BA.5系統が主流となり、置き換わったと推定される。BA.5系統は、感染者数がより増加しやすいことが示唆され、免疫逃避が懸念されるため、感染者数の増加要因となりえる。

    【気候要因】

    気温の上昇により屋内での活動が増える時期であるが、冷房を優先するため換気がされにくい場合もある。

  • 医療提供体制の状況について
    • 全国的には、外来診療検査体制の負荷が増大するとともに、病床使用率についてはほぼ全国的に増加が続き、多くの地域で5割を超えている。特に千葉、神奈川、静岡、愛知、沖縄では、8割を超えて厳しい状況。重症病床使用率も一部地域では5割を超えている。また、自宅療養者・療養等調整中の数もほとんどの地域で増加が継続し、一部地域では急増している。
    • 沖縄県を含め全国的に、医療従事者の感染が増加していることによる医療提供体制への負荷が生じている。また、介護の現場でも、施設内療養が増加するとともに、療養者及び従事者の感染の増加により厳しい状況が続いている。
    • 検査の陽性率は高止まりが継続し、症状がある人など必要な方に検査が適切に受けられているか懸念がある。
    • 救急搬送困難事案については、多くの地域で非コロナ疑い事案、コロナ疑い事案ともに増加が続いているが、一部の地域においては感染者数の増加にも関わらず事案数が頭打ちの傾向も見られ、その原因については十分な分析が必要である。また、猛暑日が続き、熱中症による救急搬送の増加にも十分な注意が必要である。

必要な対策

  • 基本的な考え方について

    感染が拡大している中で、日本社会が既に学んできた様々な知見をもとに、感染リスクを伴う接触機会を可能な限り減らすことが求められる。また、社会経済活動を維持するためにも、それぞれが感染しない/感染させない方法に取り組むことが必要。

    そのために、国、自治体は、日常的な感染対策の必要性を国民に対して改めて周知するとともに、感染防止に向けた国民の取組を支援するような対策を行う。また、今後重症者や死亡者を極力増やさないよう感染者を減らす努力を行うとともに、医療提供体制の強化及び医療機関や保健所の更なる負担軽減について、これまで以上に取り組む必要。

    1.ワクチン接種の更なる促進

    • 「オミクロン株対応ワクチン」による追加接種について、初回接種を終了した者を対象として、本年10月半ば以降の実施に向けた準備を進めることが必要。
    • 4回目接種については、重症化予防を目的として、高齢者施設等における接種が進められてきた。引き続き、対象者(60才以上の高齢者及び60才未満の重症化リスクのある者等)の早期接種に向けて取り組む必要。また、足下の感染拡大を踏まえ、重症化リスクが高い方が多数集まる医療機関・高齢者施設等の従事者に対象が拡大された。
    • 3回目接種については、初回接種によるオミクロン株に対する感染予防効果や重症化予防効果の経時的な減弱が回復されることが確認されている。現在の感染状況を踏まえると、できるだけ早い時期に初回接種及び3回目接種を検討するよう促進していくことが必要。
    • 小児(5~11歳)の接種について、今般、オミクロン株流行下での一定の知見が得られたことから、予防接種・ワクチン分科会において、小児について接種の努力義務を課すことが妥当とされた。

    2.検査の活用

    第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。

    【高齢者】
    • 高齢者施設等の従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)の実施が必要。
    • 地域の実情に応じて、高齢者施設等の利用者への節目(例:帰省した親族との接触等が想定されるお盆等)での検査の推奨。
    【子ども】
    • 地域の実情に応じて、クラスターが発生している場合には、保育所・幼稚園等の教職員・保育士への頻回検査の実施が必要。
    • 自治体や学校等の判断で、健康観察を徹底し、何らかの症状がある者等には検査を行い、部活動の大会や修学旅行などへの参加を可能としながら、集団感染を防止することが必要。
    【若者等全体】
    • 大人数での会食や高齢者と接する場合(特にお盆・夏休みの帰省での接触)の事前検査をさらに推奨。
    • 有症状者が抗原定性検査キットで自ら検査を行い、陽性の場合に健康フォローアップセンター等で迅速に健康観察を受けられる「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進が必要。
    • この取組を進めるためにも国が抗原定性検査キットの買上げ・都道府県配布や、調整支援を行うなど、流通含め安定的な供給が重要。

    3.効果的な換気の徹底

    第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、エアコン使用により換気が不十分になる夏場において、効果的な換気方法の周知・推奨が必要(エアロゾルを考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。

    4.保健医療提供体制の確保

    • 更なる感染拡大に備え、国の支援のもと、都道府県等は、以下の病床や発熱外来等のひっ迫回避に向けた対応が必要。
    • 確保病床等の即応化や、病床を補完する役割を担う臨時の医療施設等の整備。
    • 入院治療が必要な患者が優先的に入院できるよう適切な調整、高齢者施設等における頻回検査等の実施や医療支援の更なる強化
    • 後方支援病院等の確保・拡大、早期退院の判断の目安を4日とすることの周知など転院・退院支援等による病床の回転率の向上。
    • 病室単位でのゾーニングによる柔軟で効率的な病床の活用等の効果的かつ負担の少ない感染対策の推進。
    • 有症状者が抗原定性検査キットで自ら検査を行い、陽性の場合に健康フォローアップセンター等で迅速に健康観察を受けられる「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進
    • 抗原定性検査キットの供給体制の強化及び発熱外来を経ない在宅療養の仕組みの先行事例の把握・周知。
    • また、受診控えが起こらないよう配慮の上、例えば無症状で念のための検査のためだけの救急外来受診を控えることについて、地域の実情に応じて地域住民に周知。併せて、体調悪化時などに不安や疑問に対応できるよう、医療従事者等が電話で対応する相談窓口を周知するとともに、こうした相談体制を強化。
    • 治療薬を適切・早期に投与できる体制の構築・強化
    • 救急搬送困難事案の増加傾向への対応。コロナ患者以外の患者受入体制の確認とともに、熱中症予防の普及啓発、熱中症による救急搬送が増えていることを注意喚起。
    • 職場・学校等において療養開始時に検査証明を求めないことの徹底。
    • 保健所業務がひっ迫しないよう、入院調整本部による入院調整や業務の外部委託・一元化などの負担軽減を更に推進。

    5.サーベイランス等

    発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討を速やかに進めることが必要。また、変異株について、 ゲノムサーベイランスで動向の監視の継続が必要。

    6.基本的な感染対策の再点検と徹底

    以下の基本的感染対策の再点検と徹底が必要。

    • 不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気の徹底などの継続
    • 咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える。
    • 3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける
    • 医療機関の受診や救急車の利用については目安を参考にする。
    • 飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用する
    • できる限り接触機会を減らすために、例えば、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進するなどに取り組む。
    • イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策の実施が必要。
≪参考:オミクロン株とその亜系統の特徴に関する知見≫
【感染性・伝播性】

オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。

【感染の場・感染経路】

国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。

【重症度】

オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。前回の感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、80歳以上の占める割合が高く、例えば、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナウイルス感染症が直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。高齢の感染者や基礎疾患を有する感染者の基礎疾患の増悪や、心不全や誤嚥性肺炎等の発症にも注意が必要。

【ウイルスの排出期間】

オミクロン株感染症例におけるウイルスの排出は、時間の経過とともに減少する。有症状者では、発症日から10日目以降に排出する可能性が低くなることが示され、無症状者では、診断日から8日目以降は排出していないことが示されている。

【ワクチン効果】

初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。 4回目接種については、重症化予防効果は6週間減衰しなかった一方、感染予防効果は限定的であり、短期間しか持続しなかったと報告されている。

【オミクロン株の亜系統】

世界におけるBA.5系統の占める割合が増加しており、 BA.5系統はBA.2系統と比較して感染者増加の優位性が示唆されている。世界的には、BA.5系統へ置き換わりつつある中で、陽性者数が増加傾向となっている。BA.5系統はBA.1系統やBA.2系統に比して既存免疫を逃避する傾向が示されているが、感染力に関する明確な知見は示されていない。なお、東京都のデータに基づき算出されたBA.5系統の実効再生産数は、BA.2と比較して約1.27倍とされた。また、民間検査機関の全国の検体では約1.3倍と推計された。

WHOレポートでは、複数の国から集積した知見によると、BA.5系統に関して、既存のオミクロン株と比較した重症度の上昇は見られないとしている。一方で、国内の実験室内のデータからは、BA.5系統はBA.1及びBA.2系統よりも病原性が増加しているとする報告があるが、臨床的には現時点では確認されていない。また、 BA.5系統の形質によるものかは不明であるが、BA.5系統中心に感染者数が増えている国では、入院者数・重症者数が増加していることに注意を要する。国内のゲノムサーベイランスによると、BA.5系統の検出割合が増加しており、置き換わったと推定される。

また、本年6月以降インドを中心に報告されているBA.2.75系統は国内で検出されているが、他の系統と比較した感染性や重症度等に関する明らかな知見は海外でも得られていない。これらのウイルスの特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan