掲載日:2022年9月22日

第100回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年9月21日、厚生労働省)の報告による、我が国における新型コロナウイルス感染症の状況等についてお知らせいたします(第100回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 資料1)。

英語版(準備中)

感染状況について

全国の新規感染者数(報告日別)は、直近の1週間では10万人あたり約370人となり、 今週先週比は0.71と減少が継続し、全国的には本年2月のピークを下回る感染レベルとなった。しかし、連休が続くことによる感染状況への影響に注意が必要。

新規感染者数が減少していることに伴い、療養者数も減少している。また、病床使用率も低下傾向にある。
医療提供体制への負荷は一部継続しているものの、状況の改善がみられる。
重症者数や死亡者数は、減少が継続している。

地域の動向

 ※新規感染者数の数値は、報告日ベースの直近1週間合計の対人口10万人の値

北海道

新規感染者数は約344人(札幌市約386人)、今週先週比は0.68。30代以下が中心。病床使用率は3割弱。

北関東

茨城、栃木、群馬では新規感染者数は約353人、296人、354人、今週先週比は0.82、0.70、0.77。
病床使用率について、茨城では4割強、栃木では2割強、群馬では約3割。

首都圏(1都3県)

東京の新規感染者数は約370人、今週先週比は0.79。30代以下が中心。病床使用率は3割弱、重症病床使用率は2割強。
埼玉、千葉、神奈川の新規感染者数は約407人、349人、315人、今週先週比は0.87、0.80、0.82。病床使用率について、埼玉では3割強、千葉では約3割、神奈川では約4割。

中京・東海

愛知の新規感染者数は約408人、今週先週比は0.68。30代以下が中心。病床使用率は5割強。
岐阜、静岡、三重の新規感染者数は約360人、368人、515人、今週先週比は0.58、0.67、0.94。病床使用率について岐阜では3割強、静岡では約3割、三重では4割弱。

関西圏

大阪の新規感染者数は約390人、今週先週比は0.68。30代以下が中心。病床使用率は3割強、重症病床使用率は1割未満。
滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山の新規感染者数は約452人、409人、373人、417人、364人、今週先週比は0.70、0.72、0.67、0.72、0.66。病床使用率について、滋賀では4割弱、兵庫、和歌山では3割強、京都では3割弱、奈良では2割強。

九州

福岡の新規感染者数は約331人、今週先週比は0.62。30代以下が中心。病床使用率は約3割。
佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の新規感染者数は約342人、298人、369人、329人、451人、498人、今週先週比が0.56、0.49、0.61、0.57、0.59、0.62。病床使用率について、大分、熊本、長崎では4割弱、鹿児島では3割強、宮崎、佐賀では2割強。

沖縄

新規感染者数は約277人、今週先週比は0.60。30代以下が中心。病床使用率は3割強、重症病床使用率は約2割。

上記以外

広島、香川の今週先週比は0.80、0.81。病床使用率について、香川では約4割、高知では2割弱、山梨では1割強。

感染状況等と今後の見通し

感染状況について

  • 新規感染者数について、すべての地域において減少が継続しており、全国的には本年2月のピークを下回る感染レベルとなった。しかし、東京など首都圏で減少速度の鈍化がみられるとともに、東北、北陸、中国、四国地方など本年2月のピークが比較的低かった地域では、まだそのピークを上回る感染レベルが継続している。また、高齢者施設と医療機関の集団感染は、減少しているものの継続している。
  • 全国の年代別の新規感染者数は、全年代で減少が継続しているが、他の年代と比較して 10歳未満が多くなっている。また、東京や埼玉などの一部地域では10歳代の増加が見られる。高齢者の新規感染者数も減少傾向となっており、重症者数や死亡者数は減少が継続している。
  • 本年1月以降の小児等の死亡例に関する暫定報告にあるように、小児感染者数の増加に伴う、重症例、死亡例の発生に注意が必要である。
  • 新規感染者の感染場所について、学校再開により、学校等では増加傾向が継続しているが、足元では減少している(積極的疫学調査の重点化により感染経路の把握は一部(約13%)にとどまることや、連休による影響に留意が必要)。

今後の見通しについて

  • 今後の感染状況について、発症日のエピカーブや大都市における短期的な予測などでは、地域差や不確実性はあるものの、多くの地域で減少傾向が継続するが、一部地域では減少速度が鈍化する可能性がある。連休が続くことによる感染状況への影響にも注意が必要。また、季節性インフルエンザの例年よりも早期の流行と、新型コロナウイルス感染症との同時流行が懸念される。

感染の増加要因・抑制要因について

【ワクチン接種および感染による免疫等】

3回目接種から一定の期間が経過することに伴い、重症化予防効果に比較し、感染予防効果はより減弱が進むことが明らかになっている。一方で、60代以上では、20−40代と比較して感染による免疫獲得は低く、また免疫の減衰についても指摘されており、今後高齢者層での感染拡大が懸念される。

【接触パターン】

夜間滞留人口について、全体的には横ばい傾向となっており、足元では増加している地域が比較的多いものの、感染状況が全ての地域で改善しているのに比して、天候の影響もあり動きにばらつきがみられる。また、降雨や台風などの悪天候の影響により、屋外よりも屋内での3密環境での接触機会の増加には注意が必要である。

【流行株】

現在BA.5系統が主流となり、概ね置き換わっている。現在のところ、さらに他の系統に置き換わりが進む傾向はみられていない。

【気候要因】

今後も高い気温や激しい降雨となる日には、換気がされにくい場合もある。

医療提供体制の状況について

  • 全国的には、外来診療検査体制の負荷がみられるとともに、感染状況の改善の継続により、病床使用率については低下傾向にあり、ほぼすべての地域で5割を下回っている。重症病床使用率も低下傾向にある。また、自宅療養者・療養等調整中の数は、把握可能なすべての地域で減少傾向にある。
  • 全国的に、一般医療を含めた医療提供体制への負荷が一部継続しているものの、状況の改善がみられる。介護の現場では、施設内療養がみられるとともに、療養者及び従事者の感染が続いている。

必要な対策

基本的な考え方について

  • 感染症法上の措置について、高齢者・重症化リスクのある方に対する適切な医療の提供と患者の療養期間の見直しなどを行う。
  • こうした移行に当たっては、現在の感染状況への対応と併せ、今夏の感染拡大の振り返りを行いつつ、今秋以降の季節性インフルエンザの同時流行による感染拡大が生じうることも想定した対応を行う。
  • 国民ひとりひとりの自主的な感染予防行動の徹底をお願いするとともに、高齢者等重症化リスクの高い者を守るとともに、通常医療を確保するため、保健医療体制の強化・重点化を進めていく。
  • 国、自治体は、日常的な感染対策の必要性を国民に対して改めて周知するとともに、感染防止に向けた国民の取組を支援するような対策を行う。

1.ワクチン接種の更なる促進

  • 初回接種を終了した全ての12歳以上の者に対する「オミクロン株対応ワクチン」の接種について、10月半ばを目途に準備を進めることが必要。
  • 10月半ばまでの間、まず、重症化リスクの高い等の理由で行われている4回目接種の対象者へ使用するワクチンが、従来型ワクチンからオミクロン株対応ワクチンへ切り替えられる。接種間隔は5か月とされたが、海外の動向等を踏まえ、接種間隔を短縮する方向性で今後検討し、10月下旬までに結論を得ることが必要とされた。
  • 未接種の方には、できるだけ早い時期に初回接種を検討していただくよう促していく。
  • 小児(5~11歳)の接種については、初回接種とともに追加接種を進める。

2.検査の活用

  • 第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、国と自治体は検査ができる体制を確保し、検査の更なる活用が求められる。
  • 高齢者施設等について、従事者への頻回検査(施設従事者は週2~3回程度)を実施する。
  • 有症状者が抗原定性検査キットで自ら検査を行い、陽性の場合に健康フォローアップセンター等で迅速に健康観察を受けられる「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進が必要。
  • 抗原定性検査キットについて、OTC化によるインターネット販売など、一層利活用を進める。

3.保健医療提供体制の確保

国の支援のもと、都道府県等は、主に以下の病床や発熱外来等のひっ迫回避に向けた対応が必要。

  • 確保病床等の即応化や、病床を補完する役割を担う臨時の医療施設等の整備に加え、宿泊療養施設や休止病床の活用など、病床や救急医療のひっ迫回避に向けた取組。
  • 入院治療が必要な患者が優先的に入院できるよう適切な調整、高齢者施設等における頻回検査等の実施や医療支援の更なる強化
  • 後方支援病院等の確保・拡大、早期退院の判断の目安を4日とすることの周知など転院・退院支援等による病床の回転率の向上
  • 病室単位でのゾーニングによる柔軟で効率的な病床の活用等の効果的かつ負担の少ない感染対策の推進
  • オンライン診療等の活用を含めた発熱外来の拡充・公表の推進、「発熱外来自己検査体制」整備の更なる推進。
  • 受診控えが起こらないよう配慮の上、例えば無症状で念のための検査のためだけの救急外来受診を控えることについて、地域の実情に応じて地域住民に周知。併せて、体調悪化時などに不安や疑問に対応できるよう、医療従事者等が電話で対応する相談窓口を周知するとともに、こうした相談体制を強化
  • 職場・学校等において療養開始時に検査証明を求めないことの徹底

4.療養の考え方の転換・全数届出の見直し

26日から始まる全国一律での全数届出の見直しに当たり、重症化リスクの高い方を守るために保健医療体制の強化、重点化を進めるとともに、発生届の対象外となる若い軽症者等が安心して自宅療養できる環境整備が必要。

5.自宅療養期間の見直し等

  • 陽性者の自宅療養期間の短縮に当たり、短縮された期間中は感染リスクが残存することから、自身による検温などの体調管理を実施し、外出する際には感染対策を徹底すること。また、高齢者等重症化リスクのある方との接触などは控えるよう求めることが必要。
  • 症状軽快から24時間経過後または無症状の場合の、食料品等の買い出しなど必要最小限の外出を許容するに当たり、外出時や人と接する時は必ずマスク着用、人との接触は短時間、移動に公共交通機関は利用しないなど、自主的な感染予防行動の徹底が必要。

6.サーベイランス等

発生届の範囲の限定、届け出項目の重点化、多くの感染による検査診断・報告の遅れ、受診行動の変化などにより、現行サーベイランスの精度の低下が懸念され、発生動向把握のため、実効性ある適切なサーベイランスの検討を速やかに進めることが必要。
また、変異株について、 ゲノムサーベイランスで動向の監視の継続が必要。

7.効果的な換気の徹底

第17回新型コロナ分科会における提言に基づき、エアコン使用により換気が不十分にならないよう、効果的な換気方法の周知・推奨が必要.。(エアロゾルを考慮した気流の作り方、気流を阻害しないパーテーションの設置等)。

8.基本的な感染対策の再点検と徹底

以下の基本的感染対策の再点検と徹底が必要。

  • 不織布マスクの正しい着用、手指衛生、換気の徹底などの継続
  • 3密や混雑、大声を出すような感染リスクの高い場面を避ける
  • 飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用する
  • 咽頭痛、咳、発熱などの症状がある者は外出を控える
  • 医療機関の受診や救急車の利用については目安を参考にする
  • できる限り接触機会を減らすために、例えば、職場ではテレワークの活用等の取組を再度推進するなどに取り組む
  • イベントや会合などの主催者は地域の流行状況や感染リスクを十分に評価した上で開催の可否を含めて検討し、開催する場合は感染リスクを最小限にする対策の実施が必要。
≪参考:オミクロン株とその亜系統の特徴に関する知見≫
【感染性・伝播性】

オミクロン株はデルタ株に比べ、世代時間が約2日(デルタ株は約5日)に短縮、倍加時間と潜伏期間も短縮し、感染後の再感染リスクや二次感染リスクが高く、感染拡大の速度も非常に速いことが確認されている。なお、報告されているデータによれば、これまでの株と同様に発症前の伝播は一定程度起きていると考えられる。

【感染の場・感染経路】

国内では、多くの感染がこれまでと同様の機会(換気が不十分な屋内や飲食の機会等)で起きており、感染経路もこれまでと同様、飛沫が粘膜に付着することやエアロゾルの吸入、接触感染等を介していると考えられている。

【重症度】

オミクロン株による感染はデルタ株に比べて相対的に入院のリスク、重症化のリスクが低いことが示されているが、現時点で分析されたオミクロン株による感染の致命率は、季節性インフルエンザの致命率よりも高いと考えられる。また、肺炎の発症率についても季節性インフルエンザよりも高いことが示唆されているが、限られたデータであること等を踏まえると、今後もさまざまな分析による検討が必要。前回の感染拡大における死亡者は、昨年夏の感染拡大と比べ、感染する前から高齢者施設に入所している利用者が感染し、基礎疾患の悪化等の影響で死亡するなど、新型コロナウイルス感染症が直接の死因でない事例も少なくないことが報告されている。また、今回の感染拡大では、前回に引き続き、昨年夏の感染拡大のときよりも重症化率の減少や、入院患者に占める高齢者の割合が上昇している。さらに、今回の感染拡大における死亡者は、前回の感染拡大と比べ、人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイドの処方率が下がっている。

小児等の感染では内因性死亡が明らかとされた死亡例において、基礎疾患のなかった症例も死亡しており、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも留意が必要といった実地調査結果の暫定報告がなされている。

【ウイルスの排出期間】

国内データによれば発症後10日目までは感染リスクが残存し、発症後7日目までが感染力が高く、5日間待機後でもまだ3分の1の患者が感染性のあるウイルスを排出している状態。8日目(7日間待機後)になると、多くの患者(約85%)は感染力のあるウイルスを排出しておらず、当該ウイルスを排出している者においても、ウイルス量は発症初期と比べ7日目以降では6分の1に減少したとの報告がある。

【ワクチン効果】

初回免疫によるオミクロン株感染に対する感染予防効果や発症予防効果は著しく低下する。入院予防効果については、半年間は一定程度保たれているものの、その後50%以下に低下することが報告されている。一方で、3回目接種によりオミクロン株感染に対する感染予防効果、発症予防効果や入院予防効果が回復することや、3回目接種後のワクチン効果の減衰についても海外から報告されている。 4回目接種については、重症化予防効果は6週間減衰しなかった一方、感染予防効果は短期間しか持続しなかったと報告されている。

【オミクロン株の亜系統】

世界的には、BA.5系統の占める割合の増加とともに陽性者数の増加が見られ、 BA.5系統はBA.2系統と比較して感染者増加の優位性が示唆されたが、現在、陽性者数が減少傾向となっている。BA.5系統はBA.1系統やBA.2系統に比して既存免疫を逃避する傾向が示されているが、感染力に関する明確な知見は示されていない。なお、東京都のデータに基づき算出されたBA.5系統の実効再生産数は、BA.2と比較して約1.27倍とされた。また、民間検査機関の全国の検体では約1.3倍と推計された。

WHOレポートでは、 BA.5系統の重症度については、既存のオミクロン株と比較して、上昇及び変化なしのいずれのデータもあり、引き続き情報収集が必要であるとしている。また、国内の実験室内のデータからは、BA.5系統はBA.1及びBA.2系統よりも病原性が増加しているとする報告があるが、臨床的には現時点では確認されていない。国内のゲノムサーベイランスによると、BA.5系統の検出割合が増加し、概ね置き換わっている。

また、本年6月以降インドを中心に報告されているBA.2.75系統、及び米国・英国を中心に報告されているBA.4.6系統は国内で検出されているが、他の系統と比較した感染性や重症度等に関する明らかな知見は海外でも得られていない。これらのウイルスの特性について、引き続き、諸外国の状況や知見を収集・分析するとともに、ゲノムサーベイランスによる監視を続けていくことが必要。

 

感染状況分析・評価グラフ等

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan