注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認された。世界保健機関(WHO)は、2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。その後、世界的な感染拡大の状況、重症度等から3月11日新型コロナウイルス感染症をパンデミック(世界的な大流行)とみなせると表明した。
2020年4月9日12時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で1,478,467例(87,648例)、201カ国に広がった。感染者数が1万例を超えたとして報告のあった国は17カ国あり、米国430,376例(14,768例)、スペイン146,690例(14,555例)、イタリア139,422例(17,669例)、ドイツ113,296例(2,349例)、フランス82,048例(10,869例)、中国81,865例(3,335例)、イラン64,586例(3,993例)、英国60,773例(7,097例)、トルコ38,226例(812例)、ベルギー23,403例(2,240例)、スイス22,711例(704例)、オランダ20,549例(2,248例)、カナダ19,274例(435例)、ブラジル15,927例(800例)、ポルトガル13,141例(380例)、オーストリア12,852例(273例)、韓国10,423例(204例)であった。
国内は、厚生労働省からの報道発表によると、2020年4月9日12時現在、新型コロナウイルス感染症の患者は3,109例、無症状病原体保有者396例、陽性確定例(症状有無確認中)1,263例、うち死亡者85例と報告されている。PCR検査実施人数は64,387例であった。また、2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」については、4月8日18時現在、PCR検査陽性者数712例、うち無症状病原体保有者331例、死亡者11例であった。なお、国内外の患者数等に関する情報は刻々と変わっていることに注意されたい。
本稿では、2020年2月1日に新型コロナウイルス感染症が指定感染症となった以降、第14週(2020年4月8日)までに感染症発生動向調査(NESID)へ届出られた4,050例(確定例3,388例、無症状病原体保有者658例、感染症死亡者の死体4例)(以下、症例という)に関する記述疫学を行う。なお、本症については、サーベイランスシステムが届出に対応可能となった以降の情報のみ反映されていることから、公表データと必ずしも一致しておらず、注意が必要である。 |
症例の年齢中央値は50歳(範囲0〜98)で、男女比は1.4:1(男性2,373例、女性1,677例)で男性に多かった。
主な症状は、届出時点で発熱2,843例(70%)、咳1,763例(44%)、咳以外の急性呼吸器症状290例(7%)、重篤な肺炎281例(7%)であった。全例が病原体遺伝子あるいは分離・同定による病原体の検出によって検査確定とされた。届出都道府県は、東京都1,083例、神奈川県798例、大阪府389例、千葉県335例、愛知県222例、兵庫県209例、埼玉県188例、北海道162例、福岡県152例、福井県39例、岐阜県38例、大分県31例、新潟県30例、茨城県28例、群馬県26例、和歌山県25例、奈良県23例、石川県21例、福島県16例、静岡県15例、広島県15例、愛媛県15例、山形県14例、京都府14例、栃木県13例、三重県13例、高知県13例、熊本県13例、長野県12例、山口県12例、宮城県11例、山梨県11例、秋田県10例、宮崎県10例、滋賀県8例、岡山県8例、佐賀県8例、青森県7例、長崎県5例、富山県4例、徳島県3例、香川県1例であった。
国内の流行については、3月上旬から海外との関連が疑われる事例が増加してきた。また、国内においても、感染源不明の事例が散発的に発生し、3月中旬には感染源不明の事例が継続的に増加してきた。さらに、3月下旬には、都市部を中心にクラスター(患者間の関連が認められた集団)感染が次々と報告され、感染者数の急増がおこり、4月8日現在、増加傾向が続いている。
これらの状況を受け、3月10日、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部改正が閣議決定され、新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなされることになった。3月28日には「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が発表され、この中では、国民の生命を守るためには、感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要であり、「三つの密」(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けること、積極的疫学調査等によるクラスターの発生の封じ込めが推進されている。さらに、4月7日、肺炎等の重篤な症例の発症頻度が相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、かつ感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきているとして、7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)に緊急事態宣言が発出された。
新型コロナウイルス感染症は、これまで限られた知見しか得られていないが、飛沫感染・接触感染を主とする感染経路であり、一部の感染者及び感染者の行動や環境によっては強い感染力を持つ可能性があると考えられている。臨床的な特徴としては、潜伏期間(2月23日付WHO)は1〜14日(5日間が最も多い)であり、その後、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等の感冒様症状が1週間前後持続することが多い。一部のものは、呼吸困難等の症状を呈し、胸部X線写真、胸部CTなどで肺炎像が明らかになる。また、発病者の多くが軽症であると考えられているが、高齢者や基礎疾患等を有する者においては重篤になる可能性があるため厳重な注意が必要である。
●新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月9日版)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |