国立感染症研究所

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札幌市立小中学校における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行状況とその拡大因子の解析

(速報掲載日 2022/1/7)
 

 国内の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者数は、新型コロナワクチン接種率の向上等により低下し、高齢者施設等でのクラスター発生数も減少してきている。一方で新型コロナワクチン接種ができない、または進んでいない20代以下では感染者数が増加し、それに伴い学校では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者発生に対する適切な対策が求められている。そこで、2020年2月1日〜2021年9月15日の期間に発生した、札幌市立小中学校に通う児童・生徒、教職員等のCOVID-19事例を解析し、小中学校におけるSARS-CoV-2感染拡大要因について検討した。なお、札幌市では2021年7月より市立小中学校教職員を新型コロナワクチンの優先接種の対象にした。また、8月20日からは12~15歳の市民に新型コロナワクチン接種券を送付して同年齢層の市民にも新型コロナワクチン接種を開始したが、9月15日までに2回目接種を完了した同年齢市民の割合は約0.4%であった。COVID-19の流行以降、市立小中学校の児童・生徒、教職員等にSARS-CoV-2感染者が発生した場合、原則、感染者が発生した学級を学級閉鎖とし、同時に学級全員・接触のあった教員に発症の有無を問わずPCR検査を行ってきた。また、2021年3~6月までは、市衛生研究所や民間検査機関で検出されたSARS-CoV-2はB.1.1.7系統(アルファ株)が主流であり、B.1.617.2系統(デルタ株)の2021年6~ 9月までの月別検出割合は各0.2%、44%、74%、86%と増加していた。

 札幌市保健所の感染者関連情報の中で、SARS-CoV-2に感染した児童・生徒や教職員が感染可能期間に登校・通勤していた市立小中学校のCOVID-19事例に注目し、従来株、アルファ株、デルタ株がそれぞれ主流であった2020年2月1日~2021年2月28日(従来株期間)、2021年3月1日~7月31日(アルファ株期間)、2021年8月1日~9月15日(デルタ株期間)の3期間に分けて、事例ごとの感染者数、感染拡大要因、事例発生を受けた学級閉鎖期間中の二次感染者の発症時期を調べた。なお、二次感染者の発症時期に関しては、学級閉鎖期間中に検査を受けた12,654名を対象として調査した。

 調査期間中に市立小中学校関連のCOVID-19事例は計387件確認され、小学校、中学校での事例は各246件(64%)、141件(36%)であった。COVID-19事例は従来株期間、アルファ株期間、デルタ株期間に各51件、200件、136件であった。探知例から校内で感染が広がらなかった事例の割合は、小学校ではいずれの期間においても80%前後であり、中学校では各期間においてそれぞれ56%、74%、89%であった()。1例以上の二次感染が疑われる感染者が発生した事例(陽性者2例以上)では、小中学校ともに学年間に発生頻度の違いは認められなかった。5例以上のCOVID-19クラスター事例の割合は、従来株期間の中学校で22%であったが、小学校やその他の期間の中学校では0~2%であった。

 SARS-CoV-2感染者が2例以上発生した割合は、探知例の感染可能期間の登校・通勤日数を、1日、2日、3日、4日以上に分けて解析すると、それぞれ16%、23%、27%、36%と徐々に高くなった。探知例の最終登校日(=最終接触日)から2例目以降の発症または検体採取までの期間は、133例(全体の1.1%)で確認でき、平均4.6日(標準偏差2.5日)であった()。また、133例のうち、検査までに時間を要し、結果として探知例の最終登校日から学校への調査・接触者の検査までに長期間(7日以上)を要した事例(図中の※の事例:18 例)を除くと、平均3.9日(標準偏差1.5日)であった。

 本解析では、感染拡大傾向に関しては、小学校では株による差を認めず、中学校ではデルタ株の期間のほうが感染拡大しにくい傾向にあり、デルタ株は従来株やアルファ株と比べ感染力が強いとされる報告とは異なる結果であった。要因として夏休みの影響、緊急事態宣言(2021年5月16日~6月20日、8月27日~9月30日)による校内の感染防止対策強化の影響が考えられた。従来株期間(2020年2月1日~2021年2月28日)は、休校期間はあったものの「部活動の原則休止」は行われていなかった。アルファ株期間(2021年3月1日~7月31日)では2021年5月16日~7月11日まで「部活動の原則休止」等の対策がされていた。デルタ株期間(2021年8月1日~9月15日)では、小学校は8月17日まで、中学校は8月22日まで夏休みで、かつ8月27日以降は「部活動の原則休止」が実施されており、同年代との交流機会が限られていたことが感染拡大しにくい傾向に繋がった可能性がある。

 本調査から、感染者が感染可能期間中に登校・通勤した日数が増えるほど、二次感染事例が増加する傾向が認められた。5例以上のクラスター事例すべてで、感染可能期間に探知例が2日以上登校・通勤していた。SARS-CoV-2の感染性は、発症前日もしくは当日が最大と報告されている1)。感染可能期間における登校・通勤日数を可能な限り減らし、感染の拡大を抑制すために、発熱等の症状を呈した場合、あるいは家族のSARS-CoV-2感染が判明した場合には、登校・通勤を控えることが重要である。また、感染者の同一学級内だけでなく、その他の学級へ感染が拡大した事例では、小学校では、教員が感染し、担任学級と職員室で感染が広がり、職員室で感染した他の教員から他の学級へも感染が連鎖したと考えられる事例があった。中学校では、生徒が感染し、学級とクラブ両活動を介して感染連鎖が起きたと考えられる事例があった。

 札幌市立小中学校では、これまで、児童・生徒がSARS-CoV-2に感染し、感染可能期間に登校していた場合、学級全員を濃厚接触者とみなして、感染者の最終登校日から14日間学級閉鎖とすることを原則としてきた。一方で、今回の調査では、学校内での二次感染が疑われた人の90%が、探知例の最終登校日から7日以内に発症または検体採取に至っていた。COVID-19の潜伏期間は、1~14日間で平均5.2日間といわれている2)。また、文部科学省のガイドラインでは、感染者が発生した場合の学級の閉鎖期間は5~7日間程度を目安にすると示されている3)。以上のことから、札幌市では、2021年10月1日から、SARS-CoV-2感染者が確認された際には学級全員の検査をするものの、一律に濃厚接触者とはみなさず、学級閉鎖期間を感染者の最終登校日から7日間とすることを原則としている。

 本調査の制限として個々の症例の新型コロナワクチン接種状況が不明であったこと(2021年9月の段階で市内小中学生にはほとんど実施されていない)、学校ごとに行われた対策の詳細が不明であることがあげられる。

 今後、学級閉鎖期間変更の影響を評価するとともに、12歳以上におけるワクチン接種状況や新たな変異株の動向などを注視し、各学校、教育委員会と保健所が連携して流行拡大防止対策の最適化を図ることが求められる。

 

参考文献
  1. Xi He, et al., Nat Med, 2020
  2. Li Q, et al., N Engl J Med, 2020
  3. 学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルスの感染が確認された場合の対応ガイドライン(文部科学省、令和3年8月27日)

札幌市医療対策室 大久保卓磨 白水 彩 中西香織
札幌市保健所 西條政幸
札幌市保健福祉局 館石宗隆
札幌市教育委員会 中村陽一
国立感染症研究所薬剤耐性研究センター 山岸拓也

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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