国立感染症研究所
2021年10月18日
国立感染症研究所は、SARS-CoV-2ウイルスのアルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスを国内で6検体検出した。
- 当該検体は8月12日から9月1日の間に採取された検体で、Pango系統ではB.1.1に分類されたが、Nextcladeでは21A(デルタ)に分類された。遺伝子配列のアライメント解析を行ったところ、21A(デルタ)系統であるものの、ORF6遺伝子からN遺伝子にかけて、20I(アルファ, V1)系統と同一の変異プロファイルを有する配列が存在した。また、ORF6遺伝子とORF7a遺伝子の間に組換えが起きた箇所と考えられる部位が存在した(図)。
- 遺伝子解読において、当該検体に2種類のウイルスが混入していた可能性を示す所見はなく、両変異株の同時感染や他検体の混入によるものではないと考えられる。
- 6検体の遺伝子配列はほぼ同一で、共通起源を有するウイルスと考えられる。
- デルタ株の部分は国内で流行するデルタ株由来と考えられ、組換えが生じた箇所はORF6遺伝子以降で、感染性・免疫逃避に影響が生じる箇所ではなく、デルタ株と比較して感染・伝播性や免疫等への影響が強くなる可能性はないと考えられる。よって、現時点では、本組換え体による追加的な公衆衛生リスクは無いと考えられるが、今後の動向に注意する。
- 異なる系統間のSARS-CoV-2ウイルスの組換え事例については、英国から報告があるが(1)、アルファ株とデルタ株の組換え事例はこれまで報告がなかった。
- これらの遺伝子配列はすべてGISAIDに登録済みである。また、本報告は学術誌に投稿中であり、medRxivに掲載済みである。なお、当該ウイルスの分離に成功しており、現在配列の確認作業を行っている。
- 引き続きゲノムサーベイランスによる発生動向の監視を行っていく。
- Jackson B., et al. Generation and transmission of interlineage recombinants in the SARS-CoV-2 pandemic. Cell. 184(20). 2021. pp. 5179-5188.e8.
図 国内で検出されたアルファ株とデルタ株の組換え体とみられるSARS-CoV-2ウイルスの遺伝子配列アライメント
上2行(PG-58832:アルファ株、PG-48062:デルタ株)は参照配列。
赤字の6検体はNextcladeで21A(デルタ)と判定されたものの、ORF7a遺伝子配列部分の変異はアルファ株のプロファイルと同一だった。赤字点線部分がアルファ株との組換えが起こったと考えられる箇所である。