2022年2月9日

国立感染症研究所

感染症危機管理研究センター

病原体ゲノム研究センター

 

国立感染症研究所および地方衛生研究所等において、2022年1月17日までに登録されたゲノム情報を分析した。全ゲノム解析により確認されたB.1.1.529系統の変異株(オミクロン株)は国内2,650例(検疫を含まない)であった。

  •    国内で流行するオミクロン株(BA.1)の系譜について国立感染症研究所で分子疫学調査を行った。2021年12月中旬から国内で顕在化したオミクロン株は少なくとも4つの種類の系譜が存在し、それぞれ独立した異なる経緯により海外から流入した可能性が示唆された(図:海外からの流入経緯を推定するため、オミクロン株と確定された国内症例のゲノム配列(complete 配列のみ)を用いて塩基変異の系譜をつなぐハプロタイプ・ネットワーク図を作成し評価)。
  •     4つの種類の系譜のうち、1つは2021年12月下旬から関西地方で広く検出され、さらに数塩基の変異を経て感染伝播している様子が示唆された(図-①)。現在、この関西地方を中心とした市中感染の系譜の拡大は見られず、また、主に関西地方に検出が限局していることから、初動の早期探知とクラスター対策が効果的であり収束しているものと考えられる。本系譜は、欧州で検出される系統に近縁である。
  •      一方、3つの種類の系譜は複数地域から同一ゲノム配列が検出され、既に全国規模で広範に伝播している系統であり、現在の感染者急増の要因であると示唆された(図-②、-③、-④)。
  •      図-②について、複数県で、同一のゲノム配列が検出され、全国への波及が示唆される本系譜が認められた。その後、日本国内ではこのゲノム系譜の陽性数が最も多く、現在の流行の主流となっている 。本系譜は、米国で多数検出される系統に近縁、もしくは同一配列である。
  •      図-③について、九州地方で確認後、当地では顕著な増加に至っていないが、関東地方等の全国への波及が確認された系譜が認められた。本系譜は、米国およびイギリスで検出される系統に近縁、もしくは同一配列である。
  •      図-④について、関東及び東北地方において感染拡大した系譜が認められた。本系譜は、欧州やアジアで検出が多い系統に近縁である。
  •      なお、ウイルスの全ゲノム確定数・ゲノム解析の実施割合等が地域によって異なるため、必ずしも地域での真の流行状況を反映していないことに留意が必要である。

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謝辞
ゲノム解読に従事いただきました全国の地方衛生研究所に感謝申し上げます。

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