国立感染症研究所

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2017/18シーズンの岩手県をはじめとする東北地方におけるインフルエンザの流行の概要

(IASR Vol. 39 p189-190: 2018年11月号)

2017/18シーズンの全国のインフルエンザの流行は, 2018年第5週(2018年1月29日~2月4日)に定点当たり患者数が54.33人となり, 感染症法施行開始の1999年4月以降最高となった。また, 流行開始当初からB型が流行の主体となるなど, 例年と異なる流行パターンを示していた。

岩手県における2017/18シーズンの流行状況は, 2017年第48週(2017年11月27日~12月5日)に定点当たり患者数が1.22人と全県での流行開始の指標である1.0人を超え, 徐々に流行は拡大し, 2018年第5週に定点当たり患者数56.98人とピークを迎えた。この定点当たり患者数は, 感染症法施行開始の1999年4月以降, 岩手県では2011/12シーズンの58.98人に続く2番目に多い患者数であった。その後, 第6週(2018年2月5日~12日)の52.07人から, 第8週(2018年2月19日~25日)の23.51人までは急速に減少した。第9週(2018年2月26日~3月4日)からは, やや減少が鈍り, 第15週(2018年4月9日~15日)には6.51人となったが, 第16週(2018年4月16日~22日)には8.09人と増加に転じ, もう一つの小さなピークを作った。その後は増加することなく, 第17週7.00人, 第18週1.77人, 第19週1.49人, 第20週に0.55人と減少した。なお, 岩手県では, 2017/18シーズンに限らず, 2010/11シーズンから毎シーズン, 4~5月にかけて報告数が増加に転じ, もうひとつの小さなピークを作っている。

全国の流行状況と比較すると, 流行入りは2017年第48週(全国第47週), 注意報レベルである定点当たり患者数10人を超えたのは2018年第1週(全国2017年第51週), 警報レベルの同30人を超えたのは2018年第3週(全国第3週), 流行のピーク2018年第5週(全国第5週)と, 全国に比較して, やや遅れて流行入りし, 流行のピークは同時期であった。また, 警報解除となる同10人を切ったのは2018年第13週(全国第11週)と, ピークを過ぎてからは, 第9週以降緩慢な減少傾向を示し, 報告数は全国と比較して多く, 第16週には再度増加するなど, 全国の流行状況とは異なっていた(図1)。

2017/18シーズンの岩手県のウイルス検出状況は, 流行の開始当初はA/H3亜型, 続いてA/H1pdm09亜型, そしてB型の順に検出された。流行が拡大するに従って, A/H3亜型とB型の検出割合がほぼ同じとなり, ピークを過ぎてからはA/H3亜型が多く検出された。2017/18シーズンは全国と同様に, B型, A/H3亜型, A/H1pdm09亜型のインフルエンザウイルスが同時に流行したと考えられた。岩手県の毎シーズンにおける流行終息途中の小さなピークは, これまでは, 2016 /17シーズンで示されているようにB型が流行の中心となっていたが, 2017/18シーズンの第16週以降の小さな流行はA/H3亜型が流行の中心となっていた(図2)。

2017/18シーズンの東北地方の各県の流行状況(図1)をみると, 岩手県と同様に, 全国の流行からやや遅れる形で流行が始まり, 流行のピークは2018年第5週と, ほぼ全国と同様であった。2018年第6週からは全国と同様に急速に減少していったが, 2018年第9週前後で減少は鈍り(秋田県では再増加), さらに, 2018年第15週は青森県で, 第16週には岩手, 宮城, 山形および福島県で増加に転じ, 全国での報告数の多い都道府県に東北地方の県が多くを占めていた。その後は減少し全国に遅れて終息を迎えた。2017/18シーズンの東北6県の流行状況はほとんど同じ傾向を示していた。

学校等のインフルエンザ様疾患発生報告(厚生労働省公表)をみると, 全国の報告数に占める東北地方(政令指定都市を含む)すべての報告件数(施設数)は, 第15週〔2018(平成30)年4月9日~15日〕では40件中22件(55%), 第16週(平成30年4月16日~22日)では155件中52件(34%), 第17週(平成30年4月23日~29日)では95件中34件(36%)と, 全国の3分の1から半分程度を東北地方が占めていた。東北地方の2018年第15, 16週の報告数の増加は学校等での流行も一つの要因と考えられた。

 

岩手県環境保健研究センター保健科学部
 岩渕香織 川上修央 藤森亜紀子 高橋雅輝 高橋知子 梶田弘子

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