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2017/18シーズンのインフルエンザ脳症について

(IASR Vol. 39 p191: 2018年11月号)

はじめに

インフルエンザの重篤な合併症の一つに脳症がある。日本では感染症法に基づく感染症発生動向調査において急性脳炎(脳症を含む)は5類感染症全数把握疾患に指定されている。届出基準は意識障害を伴って死亡した者, または意識障害を伴って24時間以上入院した者のうち, 1)38℃以上の高熱, 2)何らかの中枢神経症状, 3)先行感染症状のうち少なくとも1つの症状を呈した場合で, 熱性痙攣, 代謝疾患, 脳血管障害, 脳腫瘍, 外傷など, 明らかに感染性とは異なるものは除外するとされる。すなわち, 届出基準は臨床診断に基づくものであり検査診断は求められていない。原因病原体が判明している場合は, 病型欄に記載される。本稿では急性脳炎として報告された症例のうち病型欄にインフルエンザウイルスと記載された症例を集計し, 2017/18シーズンの報告例と過去2シーズンの報告例の特徴を比較した。

2017/18シーズンのインフルンザ脳症

2017/18シーズンのインフルエンザ脳症の報告数は166例で, 2016/17シーズン(125例)より多く, 2015/ 16シーズン(223例)より少なかった(2018年10月2日現在)。検出されたインフルエンザウイルスはA型が最も多く60%を占め, B型が33%であった(図1)。2017 /18シーズンは, 過去2シーズンと比較してB型の占める割合が高かった。

年齢別の報告割合では15歳未満の占める割合が69%と高かった(図2)。小児例のうち0~4歳は32%, 5~9歳は26%, 10~14歳は11%であり, 低年齢群ほど報告割合が高かった。この特徴は比較した3シーズンで類似していたが, 2017/18シーズンは5歳未満の症例割合が3シーズンの中では最も低かった。性別は男性88例(53%), 女性78例(47%)であった。

2017/18シーズン内で最も早い報告は2017年第43週(10月23日~29日), 最も遅い報告は2018年第27週 (7月2日~8日)で, 報告数のピークは2018年第3週(1月15日~21日)であった(図3)。2017/18シーズンは, 流行の早期からB型インフルエンザによる脳症が報告され, ピークから後半にかけてB型インフルエンザによる症例が多かった過去2シーズンとは異なる特徴と考えられた。比較した3シーズンにおいて, インフルンザ脳症報告数の推移・ピークの時期はインフルエンザ定点報告数と同様の傾向を示した。

なお, 今回の集計に使用した急性脳炎サーベイランスにおいてインフルエンザウイルスの検査の実施と検査結果の記載は必須でなく, 同期間に病原体不明として届出られた408例の中にインフルエンザ脳症が含まれている可能性がある。

まとめ

2017/18シーズンのインフルエンザ脳症は過去2シーズンと比較して5歳未満の症例の割合が低かった。また, 流行の早期からB型インフルエンザによる症例の報告が多くみられた。

 

参考文献
  1. 今冬のインフルエンザについて(2017/18シーズン)
    https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1718.pdf
 
 
国立感染症研究所感染症疫学センター

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