国立感染症研究所

国立感染症研究所 感染症疫学センター
2020年1月8日現在
(掲載日:2020年1月17日)

日本では、急性脳炎(脳症を含む)は感染症法に基づく感染症発生動向調査により、2003年11月から全例を届け出ることが義務付けられている。このサーベイランスにおいてインフルエンザウイルスが原因病原体であると報告されたもの(以下、インフルエンザ脳症)について以下にまとめた。なお本文中の各シーズンの期間はX/Yシーズンは診断週がX年第36週~Y年第35週まで、2019/20シーズンは2019年第36週~2019年第52週までとした。

インフルエンザ脳症は2019/20シーズンに134例が報告された(2020年1月8日時点、図1)。インフルエンザ脳症報告数の推移はインフルエンザ定点当たり報告数と類似しており、例年11月末~12月にかけて増加し始め、1月末~2月上旬にかけてピークとなることが多い。インフルエンザ定点当たり報告数より判断される、2019/20シーズンの全国の流行入りは2019年第45週(11月4日~10日)であり、過去4シーズンと比較して早かった1。またインフルエンザ脳症も、インフルエンザ流行入りに伴って報告数が増加している(図1)。

図1.インフルエンザ脳症の型別報告数およびインフルエンザ定点当たり報告数(2015年第36週~2019年第52週)

2019/20シーズンのインフルエンザ脳症におけるウイルス型別ではA型が122例(91%)、型不明が12例(9%)であり、集計時点でB型の報告はみられていない(図1)。インフルエンザ病原体サーベイランスに登録された亜型別では、2019/20シーズンは1,574件中、A/H1pdm09が1,477件(94%)、A/H3が58件、B/ビクトリア系統が37件、B/山形系統が1件、B/系統不明が1件報告されている2(2020年1月10日時点)。

2019/20シーズンのインフルエンザ脳症報告例の年齢中央値は7歳、四分位範囲は3~10歳であった。インフルエンザ脳症の報告は、例年、小児例が大半を占めるが、2019/20シーズンは15歳未満小児が122例(91%)であり、過去3シーズンと比較して多かった(図2)。2019/20シーズンのインフルエンザ脳症における届出時死亡例は10例(0~4歳5例、5~9歳2例、10~15歳1例、30代1例、80代1例)であった(図3)。

図2.インフルエンザ脳症の年齢・年齢群別報告割合(2016年第36週~2019年第52週)
図3.年齢別および届出時死亡の有無別インフルエンザ脳症報告数(2019年第36週~2019年第52週、n=134)

2019/20シーズンのインフルエンザ脳症は40都道府県より報告があった(2020年1月8日時点)。集計時点における都道府県別の累積報告数上位3位は神奈川県(29例)、千葉県(24例)、東京都(24例)であった。

 
[参考文献]
  1. IDWR2019年第48号
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-idwrc.html
  2. インフルエンザウイルス分離・検出状況速報2019/20シーズン
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html(2020年1月10日時点)

 


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