国立感染症研究所

IASR-logo
 

2018/19シーズン バロキサビル耐性変異株検出状況の中間報告

(速報掲載日 2019/4/4)

国立感染症研究所と全国地方衛生研究所は共同で、2017/18シーズンから新規抗インフルエンザ薬バロキサビルに対する耐性株サーベイランスを実施している1,2)。本稿では、2018/19シーズン前半におけるバロキサビル耐性変異株検出状況について報告する。

バロキサビルの臨床試験では、バロキサビル投与によりインフルエンザウイルスのPA蛋白質の38番目のアミノ酸に変異(I38T/M/F)が検出され、ウイルスのバロキサビル感受性低下を引き起こすことが明らかになっている3)。また耐性変異ウイルスが検出された患者ではウイルス力価の再上昇が認められ、感受性ウイルスが検出された患者と比べて罹病期間が長引くことが報告されている3,4)。そこで、日本国内のバロキサビル耐性株サーベイランスでは、次世代シーケンス解析によるPA I38耐性変異ウイルスの検出を中心に実施している。

2018年12月には横浜市で、バロキサビル投与後の小児から、バロキサビルに対する感受性が約80~120倍低下したPA I38T耐性変異A(H3N2)ウイルスを2株検出した5,6)。また、2018年11月~2019年2月にかけて採取されたA(H3N2)ウイルスの解析により、バロキサビル未投与患者3名からPA I38T耐性変異ウイルス3株を検出した7,8)。2019年3月25日現在、A(H1N1)pdm09ウイルスについては133株の解析株中3株(2.3%)、A(H3N2)ウイルスについては135株の解析株中25株(18.5%)でPA I38耐性変異ウイルスが検出されている9)。PA I38耐性変異ウイルスが検出された28名のうち、24名は12歳未満で、残りの4名は12~14歳であった。また2019年3月18日付けのA(H3N2)ウイルスの集計では、113株の解析株のうち、バロキサビル未投与患者から分離されたウイルスについては83株の解析株中3株(3.6%)、バロキサビル投与患者から分離されたウイルスについては30株の解析株中22株(73.3%)でPA I38耐性変異ウイルスが検出された10)。バロキサビルの第Ⅲ相臨床試験では、耐性変異ウイルスの検出率は12歳以上で370株の解析株中36株(9.7%)、12歳未満では77株の解析株中18株(23.4%)と報告されている3,4)。しかしながら、バロキサビルの臨床試験と耐性株サーベイランスでは検体・分離株の収集方法ならびに遺伝子解析の手法が異なること、また、サーベイランスでは解析株数が30株と少ないことから、バロキサビル耐性変異ウイルスの検出割合の直接的な比較は困難である。

2018/19シーズンも後半に入り、インフルエンザ流行のピークは超えたが、国立感染症研究所と全国地方衛生研究所では引き続き、バロキサビル耐性変異ウイルスの監視を強化し、国内外に向けて速やかに情報提供を行っていく11)

 

参考文献
  1. Takashita E, et al., Susceptibility of influenza viruses to the novel cap-dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil, Front Microbiol 9: 3026, 2018
  2. 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス
    http://www.nih.go.jp/niid/ja/influ-resist.html
  3. Omoto S, et al., Characterization of influenza virus variants induced by treatment with the endonuclease inhibitor baloxavir marboxil, Sci Rep 8: 9633, 2018
  4. Hayden FG, et al., Baloxavir marboxil for uncomplicated influenza in adults and adolescents, N Engl J Med 379: 913-923, 2018
  5. Takashita E, et al., Detection of influenza A(H3N2) viruses exhibiting reduced susceptibility to the novel cap-dependent endonuclease inhibitor baloxavir in Japan, December 2018, Euro Surveill 24: pii=1800698, 2019
  6. 高下恵美ら、IASR 40: 30-31, 2019
  7. Takashita E, et al., Influenza A(H3N2) virus exhibiting reduced susceptibility to baloxavir due to a polymerase acidic subunit I38T substitution detected from a hospitalised child without prior baloxavir treatment, Japan, January 2019, Euro Surveill 24: pii=1900170, 2019
  8. 高下恵美ら、IASR 速報掲載日 2019/3/12
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrs/8664-470p01.html
  9. 2018/2019シーズン 抗インフルエンザ薬耐性株検出情報
    https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/resistance/20190325/dr18-19j20190325-1.pdf
  10. 2018/2019シーズン 抗インフルエンザ薬耐性株検出情報
    https://www.niid.go.jp/niid/images/flu/resistance/20190318/dr18-19j20190318-1.pdf
  11. 2018–19シーズン バロキサビル耐性変異株検出状況の中間報告
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/2068-flu/flu-dr/8708-flu-20190329.html

 

国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター
 高下恵美 森田博子 小川理恵 藤崎誠一郎 白倉雅之 三浦秀佳 中村一哉
 岸田典子 桑原朋子 秋元未来 佐藤 彩 菅原裕美 渡邉真治 小田切孝人

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

Top Desktop version