注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられる。主な感染経路は咳、くしゃみ、会話等から発生する飛沫による感染(飛沫感染)であり、他に飛沫の付着物に触れた手指を介した接触感染もある。感染後、発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続くが、いわゆる「通常感冒」と比べて全身症状が強いことが特徴である。通常は1週間前後の経過で軽快する。
インフルエンザは、全国約5,000カ所のインフルエンザ定点医療機関(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)から、患者数が毎週報告されている。2017/18シーズン〔2017年第36週(2017年9月4〜10日)以降〕のインフルエンザ定点当たり報告数は、過去5年間の同時期と比較して、毎週平均+1標準偏差(過去5年間の前週、当該週、後週の合計15週の平均)を超えており、比較的高い値で推移している。2017年第40週(2017年10月2〜8日)では定点当たり報告数は0.21で(第39週も0.21)、過去10週間(第31〜40週)は、0.12〜0.22の範囲で推移している(インフルエンザの年別・週別発生状況:https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1644-01flu.html)。今シーズンの定点医療機関(全国約5,000)からの報告数の男女比は例年と同様で、15歳未満の年齢群では1.1:1とやや男性に多く、15歳以上の年齢群では1:1.3とやや女性に多かった。
全国約500カ所の基幹定点医療機関からのインフルエンザによる入院患者数(インフルエンザ入院サーベイランス)においては、第36〜38週は週当たり12〜16例で推移していたが、直近の第39週と第40週では共に23例とやや増加した。また、今シーズンのインフルエンザによる入院患者の累積数は87例で、70歳以上の高齢者が40例と約半数を占め、10歳未満の小児は29例であった(インフルエンザの発生状況について:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html)。
過去10週間の都道府県別定点当たり報告数は、沖縄県を除き2週間継続して1.00を上回る都道府県はなく、大きな増加はみられなかった。沖縄県は今シーズン開始より、毎週定点当たりの報告数は3.80以上で推移しており、第40週では6.12(第39週は6.59)であった。
インフルエンザウイルス型別の検出状況については、昨シーズンはAH3亜型が主流で、次いでB型であった。今シーズンはこれまでにAH1pdm09が23株、AH3が15株、B型(すべて山形系統)が14株検出されている〔インフルエンザウイルス分離・検出速報(2017年10月13日現在):https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html〕。
例年のインフルエンザは、全国の定点当たり報告数が1.00以上(流行開始の指標)となる11月末から1 2 月にかけて流行が開始し、ピークは1 月末から2 月上旬が多い。昨シーズン(2016/17シーズン)は第46週に定点当たり報告数が1.00を上回り、例年より立ち上がりが早かった〔今冬のインフルエンザについて(2016/17シーズン):https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/influ/fludoco1617.pdf〕。今シーズンは、比較的高い値で推移しており、本疾患の発生動向を注視する必要がある。
今後、インフルエンザの流行期を迎えるにあたり、飛沫感染対策としての咳エチケット(有症者自身がマスクを着用し、咳をする際にはティッシュやハンカチで口を覆う等の対応を行うこと)、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生を徹底することが重要である。高齢者における感染への警戒の観点から、医療・福祉施設へのウイルスの持ち込みを防ぐために、関係者が個人で出来る予防策を徹底すると同時に、訪問者等においては、インフルエンザの症状が認められる場合の訪問を自粛してもらう等の工夫が重要である。なお、65歳以上の高齢者、又は60〜64歳で心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、あるいはヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方は、予防接種法上の定期接種の対象となっている(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/)。
今後のインフルエンザの感染症発生動向調査には注意をしていただくとともに、詳細な情報と最新の状況については、以下を参照いただきたい:
●感染症発生動向調査週報(IDWR)
国立感染症研究所 感染症疫学センター |