<速報>鳥取県内におけるヘルパンギーナ患者からのコクサッキーウイルスA4型分離状況
(掲載日 2014/8/21) (IASR Vol. 35 p. 217-218: 2014年9月号)
鳥取県内の定点当たりのヘルパンギーナ報告数は、2014年6月中旬頃から著明に増加し、第25週には警報の基準となる1定点当たり6人を超えた。第25~33週までの報告数は、過去5年の同期間と比較して最も多く、全国と比較しても著しく多い。
この2014年のヘルパンギーナの流行ウイルス株の性状を調べるため、2010~2014年(8月20日現在)に、鳥取県内の医療機関を受診したヘルパンギーナ患者検体から分離されたウイルスについて解析を行った。患者検体(咽頭ぬぐい液)は前処理後、RD細胞に接種し、エンテロウイルスに特徴的なCPE(cytopathic effect; 細胞変性効果)が確認された培養上清を回収した。この培養上清からRNAを抽出後、エンテロウイルスのVP1領域をRT-PCRにより増幅した。700~800bpのPCR産物を確認後、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定した。エンテロウイルスの型の同定は、得られたVP1領域の塩基配列について、オランダNational Institute for Public Health and the Environmentの遺伝子配列による型別分類ウェブサービス1)を用いて行った。
2010~2014年において、県内のヘルパンギーナ患者検体(咽頭ぬぐい液)からは計21種のウイルスがRD細胞より分離された(図1)。例年、コクサッキーウイルスA群(以下CVAという)が60%以上の割合を占めており、全国の流行と類似した傾向を示している2)。CVA4型は、県内で2014年に67%分離されたほか、2010年に20%、2012年に46%が分離され、全国での分離・検出割合と同様の傾向であった2)。CVA4型やCVA6型等の流行は、全国的にも隔年に起きている。このことから、特定の型のエンテロウイルス感染による抗体の獲得は、同一型のウイルスによるヘルパンギーナの発症を、ある程度の期間は抑制すると推測される。
2010年、2012年および2014年に鳥取県で分離されたCVA4型15株について、CVA4型標準株、その他過去の国内外株とともにVP1領域(686bp)の系統樹解析を行った(図2)。解析はソフトウエアMEGA 5.1を用い、Kimura's 2-parameter modelおよび近隣接合法(Bootstrap: 100回)により行った。その結果、2014年株は2010年ならびに2012年株とは異なる系統を示した。一方、それぞれの年については、同一年の分離株の相同性は極めて高いことが分かった。
参考文献
- National Institute for Public Health and the Environment: Enterovirus Genotyping Tool Version 0.1
http://www.rivm.nl/mpf/enterovirus/typingtool#/ - IASR 夏の疾患 ヘルパンギーナ患者から分離・検出されたウイルス、2010~2014年
http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/4892-iasrgnatus.html
鳥取県衛生環境研究所 佐倉千尋 加藤喜幸 竹内功二 浅野康子