国立感染症研究所

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クリプトスポリジウム農場実習感染事例、2010年―青森県

(IASR Vol. 35 p. 188-189: 2014年8月号)

2010年9月6日、青森県上北地域県民局地域健康福祉部保健総室(上十三保健所)にA大学学校医から、「A大学の学生4人に下痢症があり受診している。昨年のクリプトスポリジウム症患者と症状が似ている」との電話連絡があった。同大学では2009年にも子ウシとの接触が原因とされる発症者13名の感染症事例があった(IASR 30: 319-321, 2009)。調査および原因究明の結果、学生の実習における子ウシとの接触が原因と推定される感染症事例であったため、その概要について報告する。

発生概要
A大学B研究室の初発患者学生は、8月23~27日まで診療実習のため数日間、下痢症状のあるウシと接触していた。また、C研究室の3名の学生は8月27日~9月5日に下痢を呈していた子ウシの世話などを行っていた。B研究室の初発患者は、C研究室の学生が世話をしていた子ウシやC研究室の発症者3名との接触はなかった。8月29日の初発患者の後、9月3日、9月4日、9月5日とC研究室の3名が下痢、腹痛を訴えたため、9月6日A大学学校医からの連絡となった(表1表2)。

原因究明
同年9月7日、環境保健センターに発症者4名の便が搬入された。クリプトスポリジウムオーシストの検出は国立感染症研究所の「病原体検査マニュアル」に従い、直接蛍光抗体法によって顕微鏡下にオーシストの陽性を確認した。次に便からDNAを抽出し、CRY-44、CRY-373のプライマーを用いたクリプトスポリジウムポリスレオニン遺伝子を標的としたPCR法により検出を行った後、制限酵素Rsa I を用いたRFLP法(restriction fragment length polymorphism)を行った。患者便4検体はいずれも、PCRが陽性、PCR産物のRFLPパターンはウシ型であった。同日、環境保健センターは、子ウシと患者便について遺伝子学的比較を行うため、子ウシ便の提供を依頼した。PCR法およびRsa I を用いたRFLP法では、患者便4検体、子ウシ便3検体すべて同じ結果が得られた(図1図2)。

対 応
前年の保健所による指導(手洗い場等の環境整備、タオル等の共用はせずペーパータオル等に変更、作業着等の洗濯は熱湯消毒後行うこと)が徹底されていなかったため、保健所は大学側に対し、書面および口頭で改善指導を行うとともに、症状消失後2週間の健康観察を依頼した。C研究室では、学生24人が子ウシの世話をしていたが、発症者が4名と、前年より少なかったことは、昨年の事例経験から受診した学校医が本感染症を早期に疑ったこと、保健所が発症者4名に対し、結果が判明するまで自宅待機を勧めるなど、迅速かつ適切な対応を行ったことが要因と考えられる。しかし、感染症の専門知識を有しても感染が防ぎきれないことがあるため、感染力の強い病原体には細心の注意を払うことが重要と考えられた。

 
青森県環境保健センター微生物部 
  武沼浩子 福田 理 大野譲治 工藤真哉
上北地域県民局地域健康福祉部保健総室 (上十三保健所) 
  蛯名勇登 瀬川香代子 宮川隆美 
 

 

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