国立感染症研究所

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小学校で発生したサポウイルスによる集団感染性胃腸炎事例―静岡県

(IASR Vol. 40 p108-109:2019年6月号)

サポウイルスによる集団感染事例が, 2019(平成31)年3月, 静岡県内の小学校において発生したので, 概要について報告する。

概要:3月1日, 県内某市教育委員会から保健所あてに静岡県内の小学校で複数の生徒が嘔吐, 下痢等の症状を呈しているとの連絡があった。主な臨床症状は, 嘔吐8名(62%), 腹痛9名(69%), 下痢3名(23%), 吐気2名(15%), 発熱2名(15%)であった(計13名)。クラス別の患者の内訳および発症日の推移をに示す。 

検査結果:胃腸炎症状を呈した患者3名から採取した糞便について, ノロウイルスGⅠ, GⅡおよびA群ロタウイルスの遺伝子検査を行ったところ陰性であったため, サポウイルスの遺伝子検出を行った。リアルタイムRT-PCR法1)の結果, 3検体すべてからサポウイルスが検出された。サポウイルス陽性3検体中2検体について, SV-F13, F14/SV-R13, R14プライマー2)によるRT-PCR増幅産物を用いてダイレクトシークエンスを行った。その結果, 2検体の塩基配列は, 100%一致していた。さらに本事例で検出されたサポウイルスは, カプシド領域の相同性により, GI.5に型別された()。 

まとめ:今回の集団胃腸炎事例では, 2月28日に初発の患者が1年生の教室で嘔吐し, 1年生のクラスで感染が広がった可能性がある。なお, 翌日に発症した1年生と3年生はきょうだいであり, 家庭内での接触が感染経路の一つとして疑われた。その後に発症者のあった4年生のクラスは3年生と同じ棟に位置する。 

また, 本事例が発生する1~2週間前には, 同一市内で本校と学区が隣接する小学校2校において集団感染性胃腸炎からA群ロタウイルスが検出されており, 同時期に同一市内での異なるウイルス性胃腸炎の発生が注目された。サポウイルスは主に乳幼児の散発性下痢症の起因ウイルスとして知られており, 静岡県内においては, ノロウイルスやロタウイルスと比べ, 集団胃腸炎事例で検出されることは少なかったが, 留意する必要がある。また, サポウイルスの流行の変遷をとらえるには, 遺伝子型同定を行うことが有用であるため, 今後も遺伝子解析を行いながら, 発生動向に注意していきたい。

 

参考文献
  1. Oka T, et al., J Med Virol 78: 1347-1353, 2006
  2. Okada M, et al., Arch Virol 151: 2503-2509, 2006

 

静岡県環境衛生科学研究所
 原 稔美 酒井悠希子 大石沙織 阿部冬樹 神田 隆
静岡県御殿場保健所 
 太田眞由美 土屋壯一 鈴木香代子 永井しづか

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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