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アストロウイルスの交差反応を認めたサポウイルス検出用nested RT-PCR系

(IASR Vol. 40 p123-214:2019年7月号)

 

サポウイルス検出系として報告されているnested RT-PCR系でアストロウイルスが検出された事案を経験したので, 注意喚起を目的に報告する。

2018年12月(事案Dec-18)に発生した感染性胃腸炎集団事案において, アストロウイルスとサポウイルスがリアルタイムPCR法1,2)によって同時に検出された。この事案は保育所で発生しており, 15日間以上にわたり, 0~5歳児と職員16名の発症が確認された。この事案が複合感染であったことをさらに確認するためにアストロウイルスのRT-PCRに加え, サポウイルスのnested RT-PCR(PCR No.1(Okadaらの系3))およびPCR No.2(Kitajimaらの系4)))を実施した(表1)。その後, 2019年1月(事案Jan-19)に別の保育所で発生した感染性胃腸炎集団事案では, リアルタイムRT-PCRでアストロウイルスのみ陽性となったが, 事案Dec-18の結果を踏まえ, 同様にアストロウイルスとサポウイルスのnested RT-PCRを実施したところ, PCR No. 1とPCR No.2では増幅結果が大きく異なった(表1)。

PCR No.2において, 2nd PCR(1245Rfwd/SV-R2プライマー)でサポウイルスが検出された場合, 約430 塩基の増幅産物が得られるが, 今回はわずかに小さい約410塩基のバンドが得られたものがあった()。シークエンス解析したところ, 約430塩基の増幅産物からはサポウイルス, 約410塩基の増幅産物からはアストロウイルスの塩基配列が得られた。

本解析によって, アストロウイルスが存在し, かつサポウイルスのRNA濃度が少ない, あるいは陰性の検体において, PCR No.2ではアストロウイルスを増幅する例が示された。PCR No.2の2nd PCRに用いる1245RfwdプライマーとSV-R2プライマーの配列はアストロウイルスの配列と高い相同性を示した(表2)。SV-R2プライマーはPCR No.1の2nd PCRにも使用されていること, PCR No.2の1st PCRにおいてはアストロウイルスとの交差が認められなかったことから, PCR No.1とPCR No.2の2nd PCR用のforwardプライマーの違い(表1, 2)でアストロウイルスとの交差性の差が生じたと推察される。PCR No.2のnested RT-PCR法は環境水や食用貝からのサポウイルスの検出感度が高い4-6)が, 臨床検体に適用した場合, アストロウイルスとの交差が認められたとの報告がある5)。我々も今回, 同様の交差反応を確認したこと, 得られる産物の大きさがサポウイルスとアストロウイルスで非常に近かったことから, 1245RfwdとSV-R2プライマーを組み合わせて使用する際には増幅産物の有無のみで検出結果の結論を出さず, 得られた増幅産物の塩基配列を確認することが特に重要である。

 

参考文献
  1. 横井 一ら, 感染症誌 75: 263-269, 2001
  2. Oka T, et al., J Med Virol 78: 1347-1353, 2006
  3. Okada M, et al., Arch Virol 151: 2503-2509, 2006
  4. Kitajima M, et al., Appl Environ Microbiol 76: 2461-2467, 2010
  5. 飯塚節子ら, 食品中の病原ウイルスのリスク管理に関する研究 平成24年度 総括・研究分担報告書: 181-185, 2013
  6. Iizuka S, et al., Food Environ Virol 5: 119-125, 2013

 

千葉県衛生研究所 ウイルス・昆虫医科学研究室
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