国立感染症研究所

(2021年03月16日 改訂)

ボツリヌス症をひきおこす細菌について

210316 fig1

図1. ボツリヌス菌のグラム染色所見

  グラム陽性有芽胞桿菌

  (写真は2012年食中毒事例より分離されたA型ボツリヌス菌株)

ボツリヌス症(botulism)は、ボツリヌス菌 (Clostridium botulinum) が産生するボツリヌス神経毒素 (botulinum neurotoxin)によって起こる全身の神経麻痺を生じる神経中毒疾患である。ボツリヌス菌は、芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌である。Clostridium botulinum以外にも、Clostridium butyricumおよびClostridium baratiiにおいても類似した毒素を産生する菌株があり、ボツリヌス症を起こす原因となる。ボツリヌス毒素はコリン作動性神経末端からのアセチルコリンの放出を抑制し、その結果、神経から筋肉への伝達が障害され、麻痺に至る。ヒトでボツリヌス症を引き起こすボツリヌス神経毒素は、主にA型、B型、E型、まれにF型である。日本では、現在までにA型、B型、あるいはE型毒素産生性Clostridium botulinum、および、E型毒素産生性Clostridium butyricumによる感染事例の届出がなされた。

ボツリヌス菌およびボツリヌス毒素は、特定二種病原体等として、その所持に関して、厚生労働省の許可が必要と規定されている。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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