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赤痢菌広域株の検出について, 2010~2020年

(IASR Vol. 43 p32-33: 2022年2月号)

 国立感染症研究所(感染研)細菌第一部では赤痢菌分離株について, 反復配列多型解析(multilocus variable-number tandem repeat analysis:MLVA)もしくはパルスフィールドゲル電気泳動(pulsed-field gel electrophoresis:PFGE)を用いた分子疫学解析を実施している。2010~2021年にかけて複数機関にまたがって検出された類似株のクラスターをまとめた。

 2010~2021年に感染研に送付された赤痢菌は約1,200株であった。このうち, 3機関以上から検出され, 分子疫学解析から一致もしくは類似(MLVAで一領域違い, single locus variant:SLV)した株からなるクラスターは9つあった()。いずれもShigella sonneiで, それぞれのクラスターに関与した機関数は3-19, 菌株数は9-76であった。すべてのクラスターが複数の地域(ブロック)にわたり検出された。主な推定感染地は国内が多く, クラスター3および9は集団事例に関連した株を含んでいた。

 各クラスターのMLVAによるminimum spanning treeは, 優勢株とそのSLVからなるものがほとんどであった()。クラスター7は優勢株が存在せず, 互いにSLVの関係にある株の集積のような形状を示した。

 感染研では迅速性と分解能の観点から, S. sonneiについてはMLVAによる分子疫学解析を実施している(IASR 30: 319, 2009)。それ以外の菌種についてはPFGEを実施しているが, 今後は, 順次ゲノム解析による分子疫学解析を導入していく予定である。引き続き菌株送付にご協力をお願いしたい。


 
国立感染症研究所細菌第一部
 泉谷秀昌 明田幸宏

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