注目すべき感染症 ※PDF版よりピックアップして掲載しています。
◆直近の新型コロナウイルス感染症およびインフルエンザの状況(2020年11月6日現在)
新型コロナウイルス感染症:
2019年12月、中華人民共和国湖北省武漢市において確認され、2020年1月30日、世界保健機関(WHO)により「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言され、3月11日にはパンデミック(世界的な大流行)の状態にあると表明された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年11月6日15時現在、感染者数(死亡者数)は、世界で48,517,411例(1,231,784例)、192カ国・地域(集計方法変更:海外領土を本国分に計上)に広がった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14684.html)。
国内では、厚生労働省により公表されている、各自治体がプレスリリースしている個別の事例数(再陽性例を含む)を積み上げた情報によると、2020年11月6日0時現在、新型コロナウイルス感染症の検査陽性者は104,782例、死亡者は1,806例と報告されている。PCR検査実施人数は、暫定値として2,818,683例であった(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14684.html)。全国の報告日別新規陽性者数は、9月後半より増加傾向にあることが徐々に明らかとなっている。
COVID-19による全国の入院治療等を要する者の数の推移については(https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html#h2_1)、7月以降では8月10日の13,724例を最高に、その後大きく減少したが、9月下旬以降は横ばいになり、10月20日の5,031例を底に、再び増加に転じている。日本COVID-19対策ECMOnetが集計するECMO/人工呼吸装着数の推移(https://crisis.ecmonet.jp/)においては、7月中旬から8月後半にかけ増加し、その後減少に転じていたが、感染者数の増加に伴い、時間差をおいて10月下旬から増加の傾向にある。なお、全国的に、介護施設等を含む集団感染(クラスター)の発生が認められることから、重症患者の増加については警戒しなければならない。この重症患者数については、一部の都道府県においては、都道府県独自の基準にのっとって発表された数値を用いて算出されていることに注意する。
北海道では、11月に入り、検査数、新規陽性者数、陽性割合が急激に増加している。検査数が増えている中で、陽性割合が増加しており、COVID-19発生頻度が真に増加していると考えられる(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/ssa/singatakoronahaien.htm)。クラスターが数多く発生し、医療提供体制への影響が出始めていることから、11月27日までを集中対策期間として、道民・事業者・来道者に注意喚起を行うとともに、感染対策強化に関する協力を要請している。
東京都では検査数を高レベルで維持している中で、直近では陽性数、陽性率ともに微増になっており、接触歴等不明者の数と割合が高い傾向も見られている(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)。多くの地域で人の流れが継続して増加傾向にあることから、人々の接触機会の増加が考えられる。全国的に、今後、適切な感染防護策を講じない場合、感染者数、ひいては重症者数が増加することが懸念され、警戒が必要である。発熱等相談件数等の症候群サーベイランス(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/)やクラスター発生等、複数の情報源をモニタリングするサーベイランス体制等による継続した注視が必要である(https://apps.who.int/iris/handle/10665/332051)。
なお、感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスには、医療機関、保健所等で採取された検体から、各都道府県市の地方衛生研究所、保健所、ならびに検疫所で検出された病原体の情報が、任意ではあるが報告されている。2020年11月6日現在、地方衛生研究所および保健所から報告された、新型コロナウイルス感染症/新型コロナウイルス感染症疑い症例から検出された病原体は、SARS-CoV-2が7,572件(4月が最多の3,282件;8月までは陽性割合も4月が最高であった)、陰性が61,945件であった。これ以外にも検疫所で検出されたSARS-CoV-2が132件報告されている。
2020年5月29日以降、新型コロナウイルス感染症発生届に関する国への報告事務は、厚生労働省が運営する新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)を用いて行われることとなり、移行可能な自治体から順次、移行を実施し、現時点で全国の自治体で利用されている。厚生労働省においては、今後の統計情報の集計等については、HER-SYSに入力された情報に基づいて行うことを基本とするとしている。本稿では、HER-SYSに基づく情報は含めておらず、今後分析を行っていく予定である。
季節性インフルエンザ:
全国約5,000のインフルエンザ定点より報告された、2020年第44週(2020年11月4日現在)の定点当たりのインフルエンザ報告数は0.01(患者報告数32)となり、前週の定点当たり報告数0.01(患者報告数30)と同程度で推移している。都道府県別の第44週の定点当たり報告数(報告数)では滋賀県0.07(報告数4)、長崎県0.06(報告数4)、沖縄県0.05(報告数3)、三重県0.03(報告数2)、青森県0.02(報告数1)、新潟県0.02(報告数2)、岐阜県0.02(報告数2)、奈良県0.02(報告数1)、岡山県0.02(報告数2)、東京都0.01(報告数4)、静岡県0.01(報告数1)、愛知県0.01(報告数1)、大阪府0.01(報告数2)、北海道0.00(報告数1)、埼玉県0.00(報告数1)、千葉県0.00(報告数1)となっている。定点医療機関からの報告を基にした、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数は約0万人(95%信頼区間:0.0〜0.1万人)となった。また、全国約500の病原体定点からの報告による感染症発生動向調査(NESID)病原体サーベイランスにおける、インフルエンザウイルス分離・検出速報によると(https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-inf.html)、2020/21シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出報告はまだない。
WHOは(10月23日現在)、北半球の温帯地域の国々では、インフルエンザ検査数は維持、あるいは増加しているにもかかわらず、インフルエンザの報告数はこの時期における通常のレベルを下回ったままであること、東南アジアの国ではインフルエンザウイルスの検出数の増加が報告された国があること、世界においてインフルエンザウイルス検出の報告は非常に少ないが、約6割を占めたA型ではH3N2が、残るB型ではビクトリア系統がそれぞれ大部分を占めたこと等を報告している(https://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/
latest_update_GIP_surveillance/en/)。WHOは、世界の国々がCOVID-19伝播を減らすための対策を講じたことがインフルエンザの減少に影響した可能性がある、としている。今後も、インフルエンザの定点報告の継続と、インフルエンザ様疾患に対する病原体サーベイランスの継続が重要である。
国立感染症研究所 感染症疫学センター