国立感染症研究所

 

 

国立感染症研究所

2023年 1月13日 9:00 時点

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変異株の概況

  •   現在、流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は、第23報時点と同様に、B.1.1.529系統とその亜系統(オミクロン)が支配的な状況が世界的に継続している。2022年12月2日~2023年1月2日に、世界でゲノム解析され GISAID データベースに登録されたウイルスの98.4%をオミクロンが占め、その他の系統はほとんど検出されていない(WHO, 2023a)。オミクロンの中では多くの亜系統が発生しているが、BA.5系統が63.7%、BA.2系統が15.2%、 BA.4系統が0.7%(いずれも亜系統を含む)と、引き続き世界的にBA.5系統が流行の主流となっている(WHO, 2023a)。日本国内でも2022年7月頃にBA.2系統からBA.5系統に置き換わりが進み、BA.5系統が主流となったのち、10月以降BQ.1系統(BA.5.3系統の亜系統)及びBA.2.75系統の占める割合が上昇傾向にある。また、国内外でオミクロンの亜系統間のさまざまな組換え体も報告されている。世界保健機関(WHO)は、これらのB.1.1.529系統とその亜系統および組換え体を全て含めて「オミクロン」と総称する一方、いくつかの亜系統や組換え体(BA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、XBBの各系統および、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するもの)を「監視下のオミクロンの亜系統(Omicron subvariants under monitoring)」としている。

  •   BQ.1系統、XBB系統(BJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体)をはじめ、特徴的なスパイクタンパク質の変異がみられ、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。特に北米で増加しているXBB.1.5系統のように、いくつかの地域で既存の流行株に比して感染者数増加の優位性がみられる亜系統も報告されているが、特定の変異株が世界的に優勢となる兆候は見られない。

  •   現時点では、オミクロンと総称される系統の中で、主に免疫逃避に寄与する形質を持つがその他の形質は大きく変化していない変異株が生じていると考えられる。世界の人口の免疫状態や、介入施策も多様になる中で、変異株の性質が流行の動態に直接的に寄与する割合は低下していると考えられる。変異株の発生動向や病原性・毒力(virulence)、感染・伝播性、ワクチン・医薬品への抵抗性、臨床像等の形質の変化を継続して監視し、迅速にリスクと性質を評価し、それらに応じた介入施策が検討される必要がある。 

  •   2022年11月以降、中国で急速な感染拡大が報告されている。感染者数、重症者数、死亡者数などの信頼できるデータは不足しているものの、メディア情報などをもとにした推計では、2023年1月以降も流行は継続していると推測される。中国ではゼロコロナ政策がとられていたが、12月7日以降感染対策を緩和しており、今後、1月下旬の春節に向けて、さらに流行が拡大するリスクがある。中国からGISAIDに登録されたゲノム解析結果では、BA.5.2系統、BF.7系統が主流となっていると考えられ、いずれも日本国内でも検出されている系統であった。日本では2022年12月30日より中国(香港・マカオを除く)に渡航歴(7日以内)のある全ての入国者と、中国(香港・マカオを除く)からの直行便での入国者については全員入国時検査を実施しており、これら入国者からもBA.5.2系統、BF.7系統が主に検出されている。引き続き中国での状況を注視する必要がある。 

 

第23報からの変更点

  •   各変異株の国内外での発生状況の更新
  •   中国における変異株の状況についての追加

 

 

BA.5系統について

  •   BA.1系統、BA.2系統、BA.3系統に加え、2022年1月にBA.4系統が、2月にBA.5系統がいずれも南アフリカ共和国で検出された。以降BA.5系統は世界的に検出数が増加し、2022年50週(12月12日~12月18日)時点で BA.5系統とその亜系統が全世界で登録された株の63.7%を占め、主流となっている (WHO, 2023a)。

  •   国内では2022年6月以降、BA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進行した。BA.5系統は2022年第17週(4月18日~24日)に日本から初めてGISAIDに登録され、第27週(7月4日~10日)に50%を、第28週(7月11日~17日)に75%を、30週(7月25日~31日)に90%を超えた(covSPECTRUM, 2022)。国内民間検査機関2社に集められた週800検体のゲノム解析結果を用いたゲノムサーベイランスでも、2022年22週(5月23日~29日)に初めて検出されたのち、第27週に50%を、第28週に75%を、30週に90%を超えた(国立感染症研究所, 2022a)。

 

BA.2.75系統、BA.4.6系統について

  •   2023年1月2日時点でGISAIDに、BA.2.75系統(亜系統を含む)が99か国から71,970件、BA.4.6系統(亜系統を含む)が97か国から59,785件登録されている(covSPECTRUM, 2023)。日本では、1月8日時点で、BA.2.75系統(亜系統を含む)が検疫で199件、国内で3,089件、BA.4.6系統(亜系統を含む)が検疫で17件、国内で256件登録されており (GISAID, 2023)、BA.2.75系統は国内でも増加傾向にある(国立感染症研究所, 2023)。BA.2.75系統はBA.2系統と比較して中和抗体からの逃避能が上昇しているとの報告もある(Cao Y. et al., 2022a) 。一方で、ワクチン接種による中和抗体からの逃避能は、BA.2系統と比較して同等、BA.4/BA.5系統に比して低いという報告もある (Shen X. et al., 2022)。BA.4.6系統はBA.4系統と比較して、中和抗体からの逃避能が上昇しているとの報告がある(Jian F et al., 2022)。BA.2.75系統はインド、BA.4.6系統は米国での検出状況からBA.2系統、BA.5系統に対する感染者数増加の優位性が示唆されたが、いずれの国においても9月以降、XBB系統やBQ.1系統への置き換わりが進んでいる(covSPECTRUM, 2022)。

 

オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について

  •   世界各地でBA.2系統やBA.5系統を起源とする亜系統が多数発生し、それらの有するスパイクタンパク質の変異から、中和抗体からの逃避能の上昇が懸念されている。米国ではXBB.1.5系統が、欧州ではBQ.1系統や、CH.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)、XBB.1.5系統が、アジアではBQ.1系統やXBB系統、オセアニアではBQ.1.1系統、CH.1.1系統が、これまでに各地で主流となっている系統に比較して、感染者数増加の優位性を見せている(covSPECTRUM, 2022)。一方で、これらの系統の割合の上昇傾向は地域によって異なっており、オミクロンの中で特定の亜系統が世界的に優位となる傾向は現在みられない。

  •   これらの亜系統が有するスパイクタンパク質における変異はR346、K444、V445、G446、N450、L452、N460、F486、F490、R493といった共通の部位に集中する傾向がみられており、ウイルスの収斂進化が起きているとの指摘がある(Cao Y, 2022b)。BA.5系統に比較して、BQ1.1系統、BM.1.1.1系統などは中和抗体からの逃避能が高く、特に比較された中ではXBB系統が最も逃避能が高いことが示唆されている(Cao. Y, 2022b)。ただし、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、これらの亜系統に関して重症度の上昇など、逃避能以外の形質が大きく変化しているという知見はない。

  •   これらの系統について、WHOはBA.2.3.20、BA.4.6、BA.2.75、XBBの各系統および、BA.5系統にN450D変異もしくはR346/K444/V445/N460のいずれかの箇所に変異を有するものを「Omicron subvariants under monitoring」に指定している。欧州疾病予防対策センター(ECDC)は、 BA.2.75系統及びその亜系統(BN.x系統、CH.x系統、その他の亜系統含む)、BQ.1系統、XBB系統を「Variants of interest」、BA.2.3.20系統、BF.7系統、BN.1系統(BA.2.75.5系統の亜系統)、CH.1.1系統を「Variants under monitoring」に指定している。英国健康安全保障庁(UKHSA)は、BA.2.12.1系統、BA.2.75系統、BA.4.6系統、XE系統、BQ.1系統、XBB系統を「Variants」、BA.2.75.2系統、BQ.1.1系統、BA.5.2.35系統、BN.1系統、BA.2.3.20系統を「Signals in monitoring」に指定している(ECDC, 2022a、WHO, 2023b、UKHSA, 2022)。

  •   また、オミクロンとデルタの組換え体である、XBC系統についても、ECDCは「Variants under monitoring」、UKHSAは「Signals in monitoring」に指定している(ECDC, 2022a、UKHSA, 2022)。

 BQ.1系統について

  •   2022年9月にBA.5.3系統の亜系統であるBQ.1系統がナイジェリアから報告され、またBQ.1系統にR346T変異が追加されたBQ.1.1系統などBQ.1系統の亜系統も報告されている(Cov-lineages.org, 2023)。 BQ.1系統とその亜系統(以下BQ.1系統)は2023年1月2日時点で、GISAIDに欧米を中心に106か国から215,537件が登録されている(covSPECTRUM, 2023)。2022年第50週(12月12日~12月18日)時点で、BQ.1系統は全世界で検出された株の44.9%を占め、割合は上昇傾向が続いている(WHO, 2023a)。米国では8月以降BQ.1系統の占める割合が上昇し2022年48週(11月27日~12月3日)には60%を占めたが、11月以降XBB.1.5系統の占める割合が増加しており、BQ.1系統の占める割合は減少すると予測されている (CDC, 2023a)。欧州では9月末頃から一部の国でBQ.1系統の占める割合が上昇し、スペイン、アイルランド、ポルトガル、フランス、スウェーデン、ベルギーなど複数の国でBQ.1系統が主流となっている(ECDC, 2022b)。日本では、2023年1月8日時点でBQ.1系統が検疫で89件、国内で3,995件検出されている(GISAID, 2023)。民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、2022年第43週(10月24日~30日)には1.4%であったが、第49週(12月5日~12月11日)には9.8%と割合が上昇しており(国立感染症研究所, 2022b、国立感染症研究所, 2022c)、2023年第1週(1月2日~1月8日)においては32%を占めると推定されているが、現在の検出割合は推定値を下回っている(国立感染症研究所, 2023)。

  •   BQ.1系統はBA.5系統から、スパイクタンパク質にK444T、N460K変異を獲得しており、中和抗体からの逃避能が上昇する可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いことが示唆されている(Cao Y. et al., 2022b) 。一方で、ハムスターを用いた動物実験では、BQ.1.1系統の病原性はBA.5系統と同等またはより低かった(Ito J. et al., 2022)が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。感染者数増加の優位性もBA.5系統などと比較して高い可能性があるものの、ヒトにおける重症度の上昇を示唆する疫学的な所見はない (WHO, 2022)。従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている(Kurhade C. et al.,2022)。一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりもBQ.1系統に対する免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2022)。また、ワクチンの重症化予防効果には影響がないと予測されている (WHO, 2022)。ただし、治療薬やワクチンの有効性について、疫学的な評価はされていない。今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 XBB系統について

  •   2022年9月にシンガポールや米国からBJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体であるXBB系統が報告され、その後遡ってインドから8月に検出された検体の登録がされている。2023年1月2日時点で、GISAIDに87か国から30,755件が登録されており(亜系統を含む)、インド、バングラデシュ、シンガポールなどアジア各国のほか、米国、英国、オーストラリアなどから多く登録されている (covSPECTRUM, 2023)。2022年第50週時点で、XBB系統とその亜系統は全世界で検出された株の6.8%を占め、前週から割合が上昇している(WHO, 2023a)。シンガポールにおいては、9月末からXBB系統の占める割合が上昇したが、10月中旬以降下降し、同時期よりBQ.1系統の占める割合が上昇傾向にある(outbreak. info, 2023)。シンガポールの感染者数、入院者数は10月に増加した一方で、重症者数は横ばいであり、10月後半以降、感染者数は減少傾向にある。インドとバングラデシュではXBB系統が主流となっているが、感染者数の増加は見られていない(outbreak. info, 2023、Our World in Data, 2023)。一方で、米国では2022年11月からニューヨーク州など東海岸を中心にF486P変異を有するXBB系統の亜系統であるXBB.1.5系統が検出され始め、12月以降、他の系統に比べて感染者数増加の優位性(growth advantage)が顕著でありその割合が増加している。2023年第1週(1月1日〜7日)には米国で検出された株の27.6%を占めると予測されていることから(CDC, 2023a)、動向を注視していく必要がある。2023年1月10日時点で欧州、アジアなど34か国からGISAIDに5,247件の登録があるが、米国から4,308件のほか、英国430件、デンマーク114件、カナダ106件、ドイツ27件、フランス34件など、米国以外からの登録数は限られている(GISAID, 2023)。
    日本では2023年1月11日時点でXBB系統(亜系統を含む)が検疫で49件、国内で286件検出されており、うちXBB.1.5系統が国内で7件検出されている(GISAID, 2023)。また、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、XBB系統(亜系統を含む)は、2022年第43週(10月24日~30日)は0.25%、第48週(11月28日~12月4日)にも0.25%と横ばいで推移しており (国立感染症研究所, 2022b、国立感染症研究所, 2022c)、第52週(12月26日~2023年1月1日)においては1%を占めると推定されている(国立感染症研究所, 2023)。

  •   XBB系統はスパイクタンパク質の受容体結合部位中のR346T、N460K、F486Sなどのアミノ酸変異を有し、中和抗体からの逃避能が上昇する可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体からの逃避能が高いこと(Cao Y. et al., 2022b)や、従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている(Kurhade C. et al.,2022)。一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりも免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2022)が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、感染者数増加の優位性もBA.2.75系統やBA.4.6系統と比較して高い可能性があるものの、XBB系統が占める割合の上昇と感染者数の増加との明確な関連性はなく、臨床的な所見からは、重症度の上昇は示唆されていない(WHO, 2022)。再感染のリスクが高まる可能性も示唆されているが、オミクロン既感染者の再感染についての証拠はない(WHO, 2022)。また、治療薬やワクチンの有効性について、疫学的な評価はされていない。XBB.1.5系統はXBB系統と同等の免疫逃避能を持ち、かつACE2受容体への結合親和性がXBB系統より高いことから、感染・伝播性がより高くなっている可能性が指摘されている(Yue C. et al., 2023)。ただし、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、XBB.1.5系統の感染性や重症度に関する疫学的、臨床的な知見はない。
    WHOは2023年1月11日にXBB.1.5系統に関するRapid Risk Assessmentを発出した。この中で、今後XBB.1.5系統は世界的な症例数の増加に関与する可能性があるとしているが、他の変異株に対するXBB.1.5系統の感染者数増加の優位性の推定データが米国からのものに限られることから、今後、感染者数増加の優位性、免疫逃避能、重症度を評価するために、加盟国に対して更なる調査を呼びかけている(WHO, 2023c)。XBB.1.5系統は米国で増加しているものの、国内を含め米国以外の国での報告数が少ないことから、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 

中国における感染拡大と変異株の状況について

  •   中国から公式に報告されたCOVID-19の患者数は2022年11月から急激に増加し、12月2日に1日当たり40,790.57人(7日間移動平均)、人口100万人当たり28.61人となり、過去最高を記録した(Our World in Data, 2022) 。
    中国国家衛生健康委員会や中国CDCが報告する患者数は減少傾向だが、12月7日以降に実施されたPCR検査の実施方針の変更、無症状病原体保有者の報告の中止などのサーベイランスに関する方針変更により、これまでと同様の基準による感染者数の比較は困難である。中国政府からの公式情報では確認できないが、メディア情報では、地方都市で1日当たり数十万人の陽性例があるとする報道(Bloomberg, 2022a)や、中国国家衛生健康委員会の内部情報として、1日当たり3,700万人の感染者が出た可能性があるとする報道がある (Bloomberg, 2022b)。また、浙江省は発熱外来に1日当たり最大40万人以上の受診があり、12月25日時点で13,583例が治療中であると発表した(杭州市人民政府, 2022)。浙江省では6,595の発熱外来で1日60万人程度の患者に対応できるとしている。
    中国国家衛生委員会、中国CDCの公式発表では死者数の増加は見られていないが、中国では肺炎及び呼吸不全による死亡の場合のみCOVID-19の死亡者として計上しており(BBC, 2022) 、関連死等を含めた死亡者数は不明である。メディア情報では、火葬場が切迫しているといった報道(CNN, 2022)もみられるが、COVID-19の死亡者数の増加による影響だけかどうかは不明である。

  •   2022年12月1日から2023年1月9日までに、中国本土からGISAIDに622件のゲノム解析結果が登録された。うち、BF.7系統を除くBA.5.2系統が253件、BF.7系統(BA.5.2系統の亜系統)が201件、BQ.1系統が80件、BA.2.75系統が20件、XBB.1系統が17件であった(いずれも亜系統を含む)(GISAID, 2023)。また、XBB.1系統のうち3件がXBB.1.5系統であったが、いずれも輸入例であることがGISAIDの登録情報で判明している(GISAID, 2023)。GISAIDへの登録情報からはBF.7系統、BA.5.2系統が国内で主流となっていることと想定される。また、2022年12月12日付の現地メディアの報道によれば、中国CDCウイルス病研究所の所長のコメントとして、現在中国で主流となっている亜系統はBA.5.2系統とBF.7系統で、BA.5.2系統は31地区、BF.7系統は24地区で見つかっており、北部の北京ではBF.7系統が、南部の広州ではBA.5.2系統が主な変異株であるとしている(中国中央電視台, 2022a) 。
    WHOのウイルス進化技術諮問グループ(TAG-VE)の声明でも、中国とWHOの会議で提示された2000件以上のゲノム解析情報から、BF.7系統、BA.5.2系統が全体の97.5%を占め、また新規の変異株は確認されていないとしている。中国を含む全世界で引き続きゲノムサーベイランスでの監視の継続が重要としている(WHO, 2023d)。
    なお、中国で主流となっていると想定される亜系統に関して、日本では、BA.5.2系統は2022年5月ころから検出が始まり、以降2023年1月2日時点でGISAIDに亜系統を含めて13万件以上が登録されており、日本国内で検出されたBA.5系統のうち大半を占めていたが、BQ.1系統への置き換わりにより日本国内での検出数は減少傾向にある(covSPECTRUM, 2023)。また、BF.7系統は2022年6月に初めて検出され、2023年1月2日時点でGISAIDに2,541件が登録されている(covSPECTRUM, 2023)。民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは検体数全体に占めるBF.7系統の割合は10月以降緩徐に上昇し、第49週(11月28日~12月4日)時点で6.65%を占めているが、上昇の程度はBQ.1系統の方が顕著である(国立感染症研究所, 2022c)。
    BF.7系統は欧州では、ベルギー、デンマーク、ドイツ、米国などで2022年10月頃に一時的に検出割合の上昇がみられたものの、その後BQ.1系統への置き換わりが進み、各国で検出割合は下降している(covSPECTRUM, 2022)。BA.5系統に比較して感染者増加の優位性を見せていたものの、BQ.1系統、XBB系統に比較して感染者数増加の優位性があるとする知見はみられない。ECDCは今回中国で検出された株がすでにEU/EEA圏内で検出されている株であり、圏内で集団免疫が高まっていること、そのほかの変異株に置き換わりが進んでいることから、中国での症例の増加がEU/EEA圏内に影響を与えるとは想定されないとしている(ECDC, 2023)。

  •   今回の中国での感染者増加を受け、日本では2022年12月30日より中国(香港・マカオを除く)に渡航歴(7日以内)のある全ての入国者と、中国(香港・マカオを除く)からの直行便での入国者については全員入国時検査を実施する、との水際措置の見直しが実施された。以降、2023年1月5日までにこの臨時措置に基づいて検疫で実施された検査数は4,895件であった。このうち陽性となったのは408件(陽性率:8%)であった。
    また、12月30日に中国(香港、マカオを除く)滞在歴のある入国者から検出されたウイルスに対して実施されたゲノム解析では、63件のPANGO系統が判明した。内訳はBF.7系統が31件、BA.5.2系統が28件、BA.5.2.27系統が3件、BA.5.2.20系統が1件とすべてBA.5.2系統とその亜系統であった。日本国内においても、2023年1月8日時点でGISAIDへBA.5.2.27系統が428件、BA.5.2.20系統が1,108件登録されている(GISAID, 2023)。また、過去に報告されていない新たなオミクロン亜系統やその他の変異株は検出されなかった。

 

参考 主な変異株の各国における位置付け(2023 年 1月 9日時点)

系統名

感染研

WHO*

ECDC

UKHSA

CDC

B.1.1.529系統

 (オミクロン)

VOC

currently circulating VOC

※BA.5(+R346X or +K444X or +V445X or +N450D or  +N460X)注1), BA.2.75, BA.4.6, XBB, BA.2.3.20: Omicron subvariants under monitoring

VOC

※BA.2, BA.4, BA.5: VOC

BA.2.75, BQ.1, XBB: VOI

BA.2.3.20, BF.7, XBC注2), BN.1, CH.1.1: VUM

BA.1, BA.3, BA.2+L452X, XAK、B.1.1.529+R346X, B.1.1.259+K444X,N460X, B.1.1.529+N460X,F490X: de-escalated variant

VOC

※BA.1, BA.2, BA.4, BA.5:  VOC

BA2.12.1, BA.2.75, BA.4.6, XE, BQ.1, XBB: Variants
BA.2.75.2,  BQ.1.1, BA.5.2.35, BN.1,  XBC注2): signals in monitoring

VOC


VOC: variant of concern(懸念される変異株)、Omicron subvariants under monitoring(監視下のオミクロンの亜系統)、VOI: variant of interest (注目すべき変異株)、VUM: variant under monitoring(監視下の変異株)、de-escalated variants(警戒解除した変異株)、signals in monitoring (監視中のシグナル)

注1)BF.7系統、BQ.1系統などを含む

注2)オミクロンとデルタの組換え体

 

 

 引用文献

 

注意事項

  •   迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

更新履歴

第 24 報 2023/ 1/13  9:00時点

第 23 報 2022/12/16  9:00時点

第 22 報 2022/11/18  9:00時点

第 21 報 2022/10/21  9:00時点

第 20 報 2022/09/08  9:00時点

第 19 報 2022/07/27  9:00時点

第 18 報 2022/07/01  9:00時点

第 17 報 2022/06/03  9:00時点

第 16 報 2022/04/26  9:00時点

第 15 報 2022/03/28 9:00 時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の変異株について」

第 14 報 2021/10/28  12:00 時点

第 13 報 2021/08/28  12:00 時点

第 12 報 2021/07/31  12:00 時点

第 11 報 2021/07/17  12:00 時点

第 10 報 2021/07/06  18:00 時点

第  9報 2021/06/11 10:00 時点

第  8報 2021/04/06 17:00 時点

>第  7報 2021/03/03 14:00 時点

第  6報 2021/02/12 18:00 時点

第  5報 2021/01/25 18:00 時点 注)タイトル変更
「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の新規変異株について」

第  4報 2021/01/02 15:00 時点

第  3報 2020/12/28 14:00 時点

第  2報 2020/12/25 20:00 時点 注)第1報からタイトル変更
「感染性の増加が懸念される SARS-CoV-2 新規変異株について」

第 1報 2020/12/22 16:00 時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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