国立感染症研究所

 

国立感染症研究所

2023年4月21日9:00時点

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English(summary)

変異株の概況

  •    現在流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)変異株は、第26報時点と同様に、B.1.1.529系統とその亜系統(オミクロン)が支配的な状況が世界的に継続している。オミクロンの中では多くの亜系統が派生しており、また、国内外でオミクロンの亜系統間の様々な組換え体が報告されている。WHOは2023年4月12日時点で、XBB.1.5系統を「現在流行中の懸念される変異株(Currently circulating variants of interest (VOIs))」、BA.2.75系統、CH.1.1系統、BQ.1系統、XBB系統、XBB.1.16系統、XBB.1.9.1系統、XBF系統を「現在流行中の監視下の変異株 ((Currently circulating variants under monitoring(VUMs)」としている。ただし、亜系統間で感染者数増加の優位性、免疫逃避の可能性以外に、重症度や感染・伝播性などのウイルスの形質が大きく変わるという知見はなく、国立感染症研究所では当面は現行の変異株の分類を継続する。引き続き、特定の亜系統に限らず、国内や検疫におけるゲノム解析による変異株の発生動向の監視や知見の収集を幅広く実施していくことが重要である。 2023年第12週(3月20日~26日)には、XBB.1.5系統が検出された亜系統の47.9%を占めており、次いでXBB.1.5系統、XBB.1.9.1系統、XBB.1.16系統を除くXBB系統(17.6%)、XBB.1.9.1系統(7.6%)が多く検出された(WHO, 2023a)。日本国内では2022年7月頃にBA.2系統からBA.5系統に置き換わりが進み、BA.5系統が主流となったが、10月以降はBQ.1系統およびBA.2.75系統の占める割合が上昇傾向にあり、2023年1月以降はXBB.1.5系統の占める割合が上昇している。

  •    BQ.1系統、XBB系統をはじめとした、特徴的なスパイクタンパク質の変異が見られ、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの免疫逃避の可能性や、感染者数増加の優位性が示唆される亜系統が複数報告されている。特に北米などで増加しているXBB.1.5系統、欧州などで増加しているXBB.1.9系統、インドなどで増加しているXBB.1.16系統など、いくつかの地域で既存の流行株に比較して感染者数増加の優位性が見られる亜系統も報告されている。しかし、特定の変異株が世界的に優勢となる兆候は見られない。

  •    現時点では、オミクロンと総称される系統の中で、主に免疫逃避に寄与する形質を持つがその他の形質は大きく変化していない変異株が生じていると考えられる。世界の人口の免疫獲得状況や、介入施策が多様になる中で、変異株の形質が流行動態に直接寄与する割合は低下していると考えられる。変異株の発生動向や病原性・毒力(virulence)、感染・伝播性、ワクチン・医薬品への抵抗性、臨床像等の形質の変化を継続して監視し、迅速にリスクと性質を評価し、それらに応じた介入施策が検討される必要がある。

第26報からの更新点

  •    国内外で検出されたオミクロンの亜系統とその特性についての追加
  •    各変異株の国内外での発生状況の更新
  •    XBB.1.16系統の亜系統に関する知見の追加
  •    中国における変異株の状況の更新を終了

目次

  •    国内外で検出されたオミクロンの亜系統とその特性について
  •    BA.5系統について
  •    BA.2.75系統について
  •    オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について
     ・XBB系統について
     ・BQ.1系統について
  •    参考  表 主な変異株とその亜系統の各国における位置付け(2023年4月17日時点)

国内外において検出されたオミクロンとその特性について

  •    新型コロナウイルスのB.1.1.529系統の変異株は、2021年11月に南アフリカ共和国、ボツワナ共和国などで初めて報告された。特に南アフリカのハウテン州を中心に急速な感染拡大が見られ、ウイルス特性の変化が懸念されたことから、WHOは同年11月24日にVariant under Monitoring(VUM)に指定し、同年11月26日に「オミクロン」と命名し、Variant of Concern(VOC)に指定した。オミクロンはそれまでの変異株と比較して、潜伏期間の短縮や免疫逃避性の上昇などの形質の変化が著しく、それまで世界的に主流であったデルタからの置き換わりが見られた。オミクロンが主流となって以降、BA.1系統、BA.2系統をはじめとしてオミクロンの中で多くの亜系統が派生し、デルタの流行時まではわずかであった系統間の組み換えによる変異株も、オミクロン流行以降ではさまざまな種類が検出されるようになった(表1)。

  •    特に2022年以降、世界各地でBA.2系統やBA.5系統を起源とし、中和抗体からの免疫逃避が起こる可能性が高まる懸念のある亜系統が多数発生した。一方で、これらの系統が占める割合の上昇傾向は地域によって異なっており、オミクロンの中で特定の亜系統が世界的に優位となる傾向は現時点では見られない。
  

表1 2023年4月までに確認された、主なオミクロン亜系統の検出時期と特性

※(国立感染症研究所. 2023d)

 

BA.5系統について

  •    BA.1系統、BA.2系統、BA.3系統に加え、2022年1月にBA.4系統が、2月にBA.5系統がいずれも南アフリカ共和国で検出された。以降BA.5系統は世界的に検出数が増加したが、2023年第8週(2月20日~26日)時点で BA.5系統とその亜系統が全世界でGISAIDに登録された株に占める割合は20.1%(WHO, 2023d)と、第3週以降BQ.1系統とその亜系統を含めてBA.5系統は減少傾向が続き、世界的にXBB系統への置き換わりが進んでいる(WHO, 2023a)。日本国内では2022年6月以降、BA.2系統からBA.5系統への置き換わりが進行した。BA.5系統は2022年第17週(4月18日~24日)に日本から初めてGISAIDに登録され、30週(7月25日~31日)に90%を超えたが、2022年9月頃をピークにBQ.1系統とその亜系統を除くBA.5系統の登録数は減少傾向にある(covSPECTRUM, 2023、国立感染症研究所, 2022)。また、国内民間検査機関2社に集められた検体のゲノム解析結果を用いたゲノムサーベイランスでは、2022年40週(10月3日~9日)頃から、BQ.1系統とその亜系統を除くBA.5系統の占める割合は低下している(国立感染症研究所, 2023e)。

BA.2.75系統について

  •    BA.2.75系統(亜系統を含む)は、2023年4月10日時点で、GISAIDに118か国から163,928件登録され、うち日本からは12,158件登録されている(covSPECTRUM, 2023)。BA.2.75系統はBA.2系統と比較して中和抗体からの免疫逃避が起こる可能性が高くなっているとの報告がある(Cao Y. et al., 2022a) 。一方で、ワクチン接種による中和抗体からの免疫逃避については、BA.2系統と比較して同等、BA.4/BA.5系統に比較して低いという報告もある (Shen X. et al., 2022)。BA.2.75系統はインドでの検出状況からBA.2系統、BA.5系統に対する感染者数増加の優位性が示唆されている。国内においては、2022年10月以降XBB系統やBQ.1系統などと共にBA.2.75系統の亜系統であるCH.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)やBN.1系統(BA.2.75.5系統の亜系統)が検出されている(国立感染症研究所, 2023d)。しかし、これら亜系統間において感染・伝播性や重症度が上昇するという知見は得られていない。

 

オミクロンの新規亜系統の世界的な発生状況について

  •    世界各地でBA.2系統やBA.5系統を起源とする亜系統、これらの組換え体が多数発生し、それらの有するスパイクタンパク質の変異から、中和抗体からの免疫逃避が起こる可能性が高まっていることが懸念されている。BQ.1系統、CH.1.1系統などの亜系統が一時期、感染者数増加の優位性を見せていたが、2023年3月頃からは全世界的にXBB系統(BJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体)の亜系統の検出割合が上昇傾向にあり、米国ではXBB系統の亜系統であるXBB.1.5系統が主流となったほか、英国を含む欧州やオセアニアではXBB.1.5系統、XBB.1.9系統が、アジアではXBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統が、これまでに各地で主流となっている系統に比較して、感染者数増加の優位性を見せている(covSPECTRUM, 2023)。一方で、これらの系統が占める割合の上昇傾向は地域によって異なっていること、また、国によってはBQ.1系統、CH.1.1系統、BQ.1系統を除くBA.5系統などが優位となっている国もあることなど、オミクロンの中で特定の亜系統が世界的に優位となる傾向は現時点では見られていない。
  •       これらの亜系統においては、特定のスパイクタンパク質における変異が注目されており、XBB.1.5系統やXBB.1.9.1系統が持つF486P変異や、BQ.1.1.29系統やCH.1.1系統、EG.1系統(XBB.1.9.1系統の亜系統)の有するQ613H変異などが免疫逃避に影響することが示唆され、注目されている。一方で、他に獲得した変異と影響を及ぼしあう可能性もあり、これらの変異を獲得したことで、実際にウイルスの形質に影響を及ぼすとは限らないとしている意見もある(GitHub, 2023)。既知の亜系統の中では、BQ1.1系統、BM.1.1.1系統などがBA.5系統に比較して中和抗体からの免疫逃避が起こる可能性が高く、特に比較された中ではXBB系統が最も高いことが示唆されている(Cao. Y, 2022b)。ただし、これらの亜系統に関して、重症度の上昇などの免疫逃避以外の形質が大きく変化しているという知見はない。

  •       これらの系統について、WHOは2023年4月12日時点で、XBB.1.5系統を「Currently circulating variants of interest」、BA.2.75系統(BN.x系統、CH.x系統、その他の亜系統含む)、CH.1.1系統、BQ.1系統、XBB系統、XBB.1.16系統、XBB.1.9.1系統、XBF系統の7系統を「Currently circulating variants under monitoring」に指定している。欧州疾病予防対策センター(ECDC)は、BA.2.75系統、BQ.1系統、XBB系統(XBB.1.5系統(とその亜系統)以外の下位の亜系統を含む)、XBB.1.5系統の4系統を「Variants of interest」、BN.1系統、CH.1.1系統、XBB.1.16系統を「Variants under monitoring」に指定している。英国健康安全保障庁(UKHSA)は、BA.2.75系統、BA.4.6系統、XE系統、BQ.1系統、CH.1.1系統、XBB系統、XBB.1.5系統を「Designated Variants」、XBB.1.9.1系統、XBB.1.9.2系統、XBB.1.16系統を「Signals in monitoring」に指定している(ECDC, 2023a、WHO, 2023b、UKHSA, 2023)。 
  •       また、オミクロンとデルタの組換え体についても、ECDCはXBC系統とXAY系統(いずれもBA.2系統とデルタ組換え体)を「Variants under monitoring」に指定している(ECDC, 2023a)。

 

XBB系統について

  •            2022年9月にシンガポールや米国からBJ.1系統(BA.2.10系統の亜系統)とBM.1.1.1系統(BA.2.75.3系統の亜系統)の組換え体であるXBB系統が報告され、その後遡ってインドから8月に検出された検体が登録されている。2023年4月10日時点で、GISAIDに122か国から261,364件が登録されている(亜系統を含む)(covSPECTRUM, 2023)。2023年第8週時点で、XBB系統とその亜系統は全世界で検出された株の77.1%(うちXBB.1.5系統が47.9%)を占め、前週からその割合は上昇している(WHO, 2023a)。 米国では2022年11月からニューヨーク州など東海岸を中心にF486P変異を有するXBB系統の亜系統であるXBB.1.5系統が検出され始めた。XBB.1.5系統は12月以降全国的にその割合が上昇し、2023年第14週(4月2日〜4月8日)には米国で検出された株の88.3%を占めると予測され、主流となっている(CDC, 2023a)。2023年4月10日時点で欧米を中心に97の国と地域からGISAIDに184,652件が登録されており(covSPECTRUM, 2023)、2023年第12週(3月20日~26日)には最も検出割合の高い亜系統となっている(WHO, 2023a)。 また、欧州を中心に、XBB.1.5系統と同じくF486P変異を有するXBB.1.9系統とその亜系統が2022年10月頃から検出され始め、2023年4月10日時点で74の国と地域から20,096件がGISAIDに登録され、特に英国から3,921件が登録されている(covSPECTRUM, 2023) 。特にF486P変異を有するXBB.1.9.1系統が欧州を中心に感染者数増加の優位性をみせており、WHOやECDCでVUMに指定されている。また、インドではE180V、K487R変異を有するXBB.1.16系統が2023年1月頃から検出され始め、検出割合が上昇傾向にある。4月10日時点でXBB.1.16系統は31の国と地域から2,794件がGISAIDに登録され、さらにT547I変異を獲得したXBB.1.16.1系統も報告されている(covSPECTRUM, 2023、GitHub,2023)。 日本からは2023年4月10日時点でXBB系統(亜系統を含む)が1,553件登録されており、うちXBB.1.5系統が691件、XBB.1.9系統が266件、XBB.1.16系統が68件登録されている(それぞれ亜系統を含む) (covSPECTRUM, 2023)。また、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは、XBB.1.5系統は、2023年第1週(1月2日~8日)は0.13%であったが、第12週(3月20日~26日)には15.6%と検出割合が上昇傾向にあり、また、XBB.1.9系統は第12週には11.8%を占めている(国立感染症研究所, 2023a、国立感染症研究所, 2023c)。
  •             XBB系統はスパイクタンパク質の受容体結合部位中のR346T、N460K、F486Sなどのアミノ酸変異を有し、中和抗体からの免疫逃避が起こる可能性が示唆されている。また、実験的にも中和抗体から逃避する可能性が高いこと(Cao Y. et al., 2022b) や、従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている (Kurhade C. et al.,2022)。一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりも免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2023)。また、感染者数増加の優位性もBA.2.75系統やBA.4.6系統と比較して高い可能性があるものの、XBB系統が占める割合の上昇と感染者数の増加との明確な関連性はなく、臨床的な所見からは、重症度の上昇は示唆されていない(WHO, 2022)。再感染のリスクが高まる可能性も示唆されているが、オミクロン既感染者の再感染のリスクが高まるかどうかについての証拠はない(WHO, 2022)。
  •       XBB.1.5系統はXBB系統と同等の免疫逃避が起こる可能性があり、かつACE2受容体への結合親和性がXBB系統より高いことから、感染・伝播性がより高くなっている可能性が指摘されている(Uriu K. et al., 2023)。また、XBB.1.5系統の感染性や重症度に関する疫学的、臨床的な知見はない。米国から、2022年12月から2023年1月の期間に、18~49歳の免疫不全のない成人において、XBB系統、XBB.1.5系統における2価ブースターワクチンの発症に対する接種後2~3か月以内のワクチン効果は、BA.5系統と比較して差はなかったとの報告がある(Link-Gelles R. et al., 2023)。 WHOは2023年2月24日にXBB.1.5系統に関するリスク評価を改正し、感染者数増加の優位性および免疫逃避に関する知見がある一方で、重症度の上昇の兆候は見られず、現時点で他のオミクロンの亜系統と比較して公衆衛生上のリスクの増加につながる証拠はないとしている(WHO, 2023c)。その後、米国から、XBB.1.5系統が主流であった2022年11月から2023年1月までのニューヨーク州において、XBB.1.5系統の感染者の重症度はBQ.1系統の感染者と比較して上昇していないと報告された(Luoma E. et al., 2023)。 XBB.1.16系統はインドで既存の亜系統に比較して感染者数増加の優位性を見せている。加えてBA.2感染後およびBA.5感染後の血清を用いた実験で中和抗体から逃避する能力が高いことが示唆されている(Yamasoba D. et al., 2023)。ただし、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。 一方で、XBB.1.9系統は欧州で既存の亜系統に比較して感染者数増加の優位性を見せているものの、免疫逃避が起こる可能性、受容体への結合親和性に関するウイルス学上の知見、感染性や重症度の上昇を示唆する所見はなく、また、全世界的に報告数が少ないことから、今後の国内外での検出状況、感染者数や重症者数の推移を注視する必要がある。

 

BQ.1系統について

  •       2022年9月にBA.5.3系統の亜系統であるBQ.1系統がナイジェリアから報告され、またBQ.1系統にR346T変異が追加されたBQ.1.1系統などBQ.1系統の亜系統も報告されている(Cov-lineages.org, 2023)。 BQ.1系統とその亜系統(以下BQ.1系統)は2023年4月5日時点で、GISAIDに欧米を中心に137か国から458,314件が登録されている(covSPECTRUM, 2023)が、2023年第2週(1月9日~15日)時点で、BQ.1系統の占める割合は全世界で検出された株の46.9%となったのをピークに低下傾向にあり、2023年第12週(3月20日~26日)時点では5.1%となっている (WHO, 2023a)。米国では8月以降BQ.1系統の占める割合が上昇し2022年51週(12月18日~12月24日)には60%に達したが、11月以降XBB.1.5系統への置き換わりが進み、2023年第14週(4月2日〜4月8日)には1.6%まで低下すると予測されている (CDC, 2023a)。欧州でも9月末以降複数の国でBQ.1系統の占める割合が上昇し、BQ.1系統が主流となった国もあるが、2023年3週頃からXBB.1.5系統への置き換わりが進んでいる(UKHSA, 2023、ECDC, 2023b)。日本からは2023年4月10日時点で、BQ.1系統が16,690件GISAIDに登録されており、そのうちBQ.1.1系統とその亜系統が13,479件と多くを占めている(covSPECTRUM, 2023)。民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスでは2023年第4週(2023年1月23日~1月29日)には22.3%まで割合が上昇したが、以降低下傾向にある (国立感染症研究所, 2023b)。

  •       BQ.1系統はBA.5系統から、スパイクタンパク質にK444T、N460K変異を獲得しており、中和抗体から免疫逃避が起こる可能性が高くなることが示唆されている。また、実験でも中和抗体から免疫逃避が起こる可能性が高いことが示唆されている(Cao Y. et al., 2022b) 。一方で、ハムスターを用いた動物実験では、BQ.1.1系統の病原性はBA.5系統と同等またはより低かった (Ito J. et al., 2022)が、査読を受けていないプレプリント論文であることに注意が必要である。また、感染者数増加の優位性もBA.5系統などと比較して高いものの、BA.5系統と比較して入院リスクの上昇は見られなかった(UKHSA, 2023)。ワクチンの有効性に関しては、従来株、オミクロン対応2価の両ワクチンの感染予防効果が低下する可能性が示唆されている(Kurhade C. et al.,2022)。一方で、オミクロン対応2価ワクチンは従来株ワクチンよりもBQ.1系統に対する免疫原性が高い可能性が示唆されている(Zou J. et al., 2022)。また、ワクチンの重症化予防効果には影響がないと予測されている (WHO, 2022)が、治療薬やワクチンの有効性について、疫学的な評価はされていない。

 

参考  

表2 主な変異株とその亜系統の各国における位置付け(2023年 4月17日時点)

系統名

感染研(NIID)

WHO

ECDC

UKHSA

CDC

B.1.1.529 系統

(オミクロン)

VOC

※各亜系統を以下の通り分類

Currently circulating variants of interest (VOIs): XBB.1.5

 

Currently circulating variants under monitoring (VUMs): BA.2.75, CH.1.1, BQ.1, XBB, XBB.1.16, XBB.1.9.1,XBF

※各亜系統については以下の通り分類

VOI

BA.2.75, BQ.1, XBB, XBB.1.5

VUM

XBC注1), BN.1, CH.1.1, XAY注1), XBB.1.16

De-escalated variant:

BA.1, BA.2, BA.3, BA.4, BA.5, BA.2+L452X, XAK, B.1.1.529+R346X, B.1.1.529+K444X, N460X, B.1.1.529+N460X, F490X, BA.2.3.20, BF.7

※各亜系統については以下の通り

VOC: BA.1, BA.2, BA.4 BA.5.

Designated variants

XE, BA.2.75, BA.4.6, BQ.1, XBB, CH.1.1, XBB.1.5.

Signals in monitoring

XBB.1.9.1, XBB.1.9.2, XBB.1.16

VOC

VOC: Variant of concern(懸念される変異株)、VOI: Variant of interest(注目すべき変異株)、VUM: Variant under monitoring(監視下の変異株)、Designated variants (指定された変異株)、De-escalated variant(警戒解除した変異株)、Signals in monitoring (監視中のシグナル)

注1)  オミクロンとデルタの組換え体

引用文献

 

注意事項

迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は情勢の変化によって変わる可能性がある。

 

更新履歴

27 2023/ 4/21   9:00時点

26 2023/ 3/24   9:00時点

25 2023/ 2/10   9:00時点

24 2023/ 1/13   9:00時点

23 2022/12/16  9:00時点

22 2022/11/18  9:00時点

21 2022/10/21  9:00時点

20 2022/09/08  9:00時点

19 2022/07/29  9:00時点

18 2022/07/01  9:00時点

172022/06/03  9:00時点

162022/04/26  9:00時点

第15報 2022/03/28 9:00 時点

注)タイトル変更

「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の変異株について」

14 2021/10/28  12:00 時点

13 2021/08/28  12:00 時点

12 2021/07/31  12:00 時点

11 2021/07/17  12:00 時点

102021/07/06  18:00 時点

 9 2021/06/11 10:00 時点

 8 2021/04/06 17:00 時点

  7 2021/03/03 14:00 時点

  6 2021/02/12 18:00 時点

第  5 報 2021/01/25 18:00 時点

注)タイトル変更

「感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される SARS-CoV-2 の新規変異株について」

第  4 報 2021/01/02 15:00 時点

第  3 報 2020/12/28 14:00 時点

第  2 報 2020/12/25 20:00 時点

注)タイトル変更

「感染性の増加が懸念される SARS-CoV-2 新規変異株について」

第  1 報 2020/12/22 16:00 時点 「英国における新規変異株(VUI-202012/01)の検出について」

 

 

 

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