国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室
全国地方衛生研究所 |
・ | ペラミビル治療患者からのH275Y耐性ウイルス検出事例報告 |
・ | 新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)オセルタミビル耐性株(H275Y)の国内発生状況 [第2報] |
・ | 新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)オセルタミビル耐性株(H275Y)の国内発生状況 [第1報] |
・ | 2008/09インフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y)の国内発生状況 [第2報] |
・ | 2008/09シーズンにおける季節性インフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株検出情報 |
・ | 2007/08シーズンにおけるインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y)の国内発生状況 [第2報] |
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室
全国地方衛生研究所 |
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国立感染症研究所・感染症情報センターには地方衛生研究所(地研)から「病原体個票」が報告されている。これには感染症発生動向調査の定点およびその他の医療機関、保健所等で採取された検体から検出された病原体の情報が含まれる(参考図)。 |
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*2013/14シーズンは2013年第36週/9月~2014年第35週/8月(検体採取週)。 図の元データは、以下の速報グラフ(病原体個票による報告)。 データは、土日祝日を除く2日前に地研から報告された情報。過去の週に遡っての追加報告もある。現在報告数は、地研より報告された日を表す。
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国立感染症研究所感染症疫学センター 病原微生物検出情報事務局 |
(掲載日 2014/2/10)
今シーズン流行初期である2014年1月中旬に、生来健康な9歳児がインフルエンザ脳症を発症し、発症から2日目に死亡した。患児の鼻咽頭から検出されたウイルスがA(H1N1)pdm09 であった。A(H1N1)pdm09による小児重症例が認められたことにより、今シーズンA(H1N1)pdm09による急性脳症に関して注意を喚起すべきと考えられたため報告する。
症 例
9歳男性。今シーズンインフルエンザワクチンは未接種。2014年1月9日より咳嗽、鼻汁出現。1月10日朝6時38.5℃の発熱出現。同日、前医A(総合病院小児科)を受診、鎮咳去痰薬と解熱剤(アセトアミノフェン)が処方された。抗インフルエンザ薬は投与されず。11日咳嗽、鼻汁が増悪したが、お昼に少量食事摂取(プリン)。「ドスン」というベッドから落ちるような音が聞こえ、うなり声、尿便失禁、開眼しているも視線合わず、顔色不良という状況で発見された。13時50分に救急要請、前医Aへ搬送された。搬送中に嘔吐あり、呼びかけには反応なし。同医で迅速診断キットにてインフルエンザA陽性。集中治療目的で当院にドクターヘリ搬送となった。当院到着時、Glasgow coma scale(GCS); E1V1M4で、眼球左方偏位、左上肢屈曲位で硬直していた。痙攣持続していると判断され、気道確保など集中治療開始したが、ショック状態は続いていたため、人工心肺装置を装着し循環管理開始した。また、出血傾向あり播種性血管内凝固症候群(DIC)も合併していた。抗インフルエンザ薬(ペラミビル)に加えて、ステロイドパルス、シクロスポリンなどインフルエンザ脳症に対する特異療法を開始した。しかし、脳波は平坦となり、入院翌日には瞳孔散大と対光反射の消失を認めたため、人工心肺中止し、永眠された。Autopsy imaging(AI)としてのMRI撮影、病理解剖を行い、脳幹、視床、基底核中心に高信号域を認め、大脳皮質にも一部広がりを認めた。
Sick contact:児発症と同時期に父、弟2人(5歳、2歳)が迅速診断キットでインフルエンザA陽性であった。
既往歴・家族歴:特記すべきことなし
剖検結果:肉眼的には、脳浮腫が強く、小脳扁桃ヘルニアや孔ヘルニアなどの脳ヘルニアをきたしていた可能性が高い、また散在性に脳壊死を認めた。
ウイルス学的検査:咽頭と鼻腔ぬぐい液(2014年1月11日17時採取)を長野県環境保全研究所に送付し、RT-PCR法を用いて遺伝子検査を実施したところ、A(H1N1)pdm09が検出された。また、MDCK細胞で分離されたA(H1N1)pdm09株に対し、TaqMan RT-PCR法を用いてNA(ノイラミニダーゼ)遺伝子を解析したところ、オセルタミビルおよびペラミビルの臨床効果の低下に関与しているといわれている耐性変異(H275Y変異)は検出されなかった。
考 察
本症例はA(H1N1)pdm09による急性脳症を発症し、集中治療にもかかわらず死亡された症例である。原因微生物と思われるA(H1N1)pdm09ウイルスは、今シーズン国内からも報告され1)、重症例の報告もある2)。A(H1N1)pdm09ウイルスによる急性脳症は、2009/10年流行期には331例と、それ以前の季節型インフルエンザ流行期での急性脳症発症数に比べて多いという報告がされている(Guら)3)。今シーズンA(H1N1)pdm09ウイルスの再流行により、急性脳症症例が増加することが懸念されるため報告した。
急性脳症は、感染症(多くの場合、ウイルス感染症)を契機に急激に生じた脳機能の全般的な障害と水口4)は定義している。急性脳症は様々な分類がなされているが、本症例は、顕著なDICとショックを合併し、Hemorrhagic shock with encephalopathy syndrome(HSE症候群)に合致する。HSE症候群は、「サイトカインの嵐」を主病態とする予後不良で、急性期死亡率が高い疾患である。本症例は、救急要請から2時間半後の集中治療室入室時にはすでにショック、DIC状態と病勢が強く救命しえなかった。
小児のインフルエンザ脳症の生存率を向上できる画期的な治療法の開発が待たれる。
参考文献
1) IASR 34: 343-345, 2013
2) IASR 速報(2013年12月24日) http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrs/4216-pr4073.html
3) Gu Y, et al., PLoS One 2013; 8(1): e54786
4) 水口雅, 小児感染免疫 20(1): 43-50, 2008
長野県立こども病院小児集中治療科 笠井正志 黒坂了正
同臨床検査科 小木曽嘉文
長野県環境保全研究所感染症部 小林広記
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注目すべき感染症
2013年第48週~2014年第4週(2013年11月25日~2014年1月26日)に診断された麻しん(2014年2月3日現在)は61例であり、前年同時期の26例よりも倍増した。性別では男性32例、女性29例であり、平均年齢は17.0歳(中央値15歳、5カ月~60歳)であった。遺伝子型別が判明したものが24例含まれ、B3型22例、D8型1例、D9型1例であった(図)。 この間の都道府県別の報告数は京都府21例、愛知県8例、神奈川県7例、東京都5例、岡山県3例、埼玉県、千葉県、兵庫県、広島県、福岡県各2例、新潟県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、山口県、宮崎県各1例であった。感染地域は国内が37例(61%)であり、国外が24例(39%:フィリピン17例、スリランカ2例、インドネシア2例、グアム1例、インド1例、オーストラリア1例)と報告され、フィリピンが最多であった。ワクチン接種歴別報告数では、61例中接種歴のない、または不明の症例が52例(85%)であった。 2013年末から2014年初頭の発生動向で特記すべきこととして、輸入例の増加が続いていることが挙げられる。感染地として海外が推定されていた症例の、2013年第1~47週の週当たり平均報告数は0.32例であったが、2013年第48週~2014年第4週では2.7例に増加した。
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