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フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後にZika feverと診断された日本人旅行者の2例

(IASR Vol. 35 p. 45-46: 2014年2月号)

 

フランス領ポリネシアのボラボラ島に渡航した後、Zika熱(Zika fever)と診断された輸入症例2例を報告する。今回の2症例は本邦で初めてZika feverと診断された症例である。

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家族内感染が疑われたオセルタミビル投与前の小児患者から分離された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス―三重県

(IASR Vol. 35 p. 43-45: 2014年2月号)

 

2013/14シーズン、国内で分離されたA(H1N1)pdm09ウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて、31株中6株(19%)がオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスであった1)(2014年1月6日現在)。

これらの抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルスのうち5株は、2013年11月および12月に札幌市で発生した散発事例2)である。今回、本県において2013年12月に札幌市に滞在していた抗インフルエンザ薬の投与歴のない患児より、抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルスが分離されたので報告する。

本県では、2013年9月3株、12月下旬1株、2014年1月上旬に3株の計7株のA(H1N1)pdm09ウイルスが分離された(2014年1月14日現在)3)表1)。これらの7株についてNA遺伝子を対象とした遺伝子塩基配列の解析およびTaqMan RT-PCR法の2法を用いた275位のアミノ酸におけるヒスチジン(H)からチロシン(Y)への置換(H275Y耐性変異)のスクリーニングを実施した。

H275Y耐性変異のスクリーニング
H275Y耐性変異の検出には臨床検体およびMDCK細胞により分離したA(H1N1)pdm09ウイルス株から抽出したRNAを用いた。

NA遺伝子塩基配列の解析により7株のうち1株(A/Mie/27/2013)が、臨床検体およびMDCK細胞分離株ともにH275Y耐性変異を有することが判明した。さらにA/Mie/27/2013株を用いたTaqMan RT-PCR法による解析からも同様の結果(耐性株)を得た。

なお、A/Mie/27/2013(耐性株)のNA蛋白は、札幌市の耐性ウイルス株と同様2)にV241I、N369K、N386Kの変異を有していた。

ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬に対する感受性試験
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターで実施されたA/Mie/27/2013(耐性株)のNA阻害薬に対する感受性試験では、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビル、ラニナミビルに対するIC50値は364.80nM、16.52nM、0.18nM、0.93nMで、感受性参照株と比較してオセルタミビルおよびペラミビルに対する感受性が著しく低下していたが、ザナミビルおよびラニナミビルに対しては感受性を保持していた。

HA遺伝子系統樹解析
今シーズンに本県で分離された7株中6株のA(H1N1)pdm09ウイルスについてHA遺伝子系統樹解析を実施した。これらの株はすべて、HAタンパク質にD97N、S185Tのアミノ酸置換を持つクレード6に分類された(図1)。

A/Mie/27/2013(耐性株)は、2013/14シーズン初期(2013年9月)にインドネシアへ渡航歴のある患者から分離された株(A/Mie/22/2013株、A/Mie/23/2013株)4)とのHAアミノ酸と比較すると、3カ所(アミノ酸番号:15、269、283)が異なっていた。

H275Y耐性変異株が分離された罹患者の疫学情報
本事例の患児は、オランダから帰国後、2013年12月20~24日まで札幌市に滞在していた。その後、三重県へ帰省し、同年12月25日に亀山市のインフルエンザ定点医療機関(小児科)を受診した。検体採取前に抗インフルエンザ薬の投与は受けておらず、薬剤により患児の体内で耐性ウイルスが選択的に発生した可能性は否定される。 

また、患児がインフルエンザ症状を発症する前に、父母に発熱症状が確認されていた。父親についての詳細な検査情報はないが、母親は患児が発症する前日に医療機関を受診し、インフルエンザ迅速診断キットによりA型インフルエンザと診断されたがA(H1N1)pdm09ウイルスへの罹患の有無は検査には至っておらず不明ではあるが、家族内感染の可能性が考えられた事例だと思われた。なお、母親にはザナミビルが処方されていた。その後、本患児は受診しておらず、予後および感染拡大等の詳細は不明である。

2013年11月には、A(H1N1)pdm09ウイルスによる健康成人の重症インフルエンザ肺炎の症例報告5)がされており、特に2009年の流行時に重症化となる傾向がみられたハイリスクグループ(基礎疾患、乳幼児、妊婦等)への感染6)には注視する必要があると思われる。本事例は、札幌市で耐性株がまとまって検出された時期に患者家族が札幌市に滞在していたことと、遺伝子配列が札幌市の耐性株と全く同じであったことから、札幌で耐性株に感染し、三重県に持ち帰ったケースと考えられる。今後、国内でのA(H1N1)pdm09ウイルスの流行動向および抗インフルエンザ薬耐性株の出現状況を注意深くモニタリングし、医療機関における投与薬剤の選択戦略を検討するための情報提供をしていきたいと考えている。

謝辞:本報告を行うにあたり、NA阻害薬に対する感受性試験の実施および貴重なご意見をいただきました国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの高下恵美先生、藤崎誠一郎先生、小田切孝人先生、田代眞人先生にお礼申し上げます。

 

参考文献
1) 国立感染症研究所, 抗インフルエンザ耐性株サーベイランス
http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2068-flu/flu-dr/
2) 高下恵美,他, IASR 35: 42-43, 2014
http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrs/4232-pr4081.html
3) 三重県感染症情報センター, 2013/14シーズンのインフルエンザウイルス分離・検出状況   http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/influ/bunri/bunrihyou1314.htm
4) 矢野拓弥,他, IASR 34: 343-345,2013  
http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/3989-pr4051.html
5) 武井健太郎,他, IASR 35: 41-42, 2014 
http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrs/4216-pr4073.html
6) 熊野浩太郎,臨床とウイルス38(1): 106-120,2010

 

三重県保健環境研究所   
 矢野拓弥 前田千恵 赤地重宏 山寺基子 松野由香里 永井佑樹
 小林章人 楠原 一  小林隆司 福田美和 中川由美子 高橋裕明
 奈良谷性子 山内昭則 天野秀臣 西中隆道  
鈴鹿保健所 太田茂治 坂井温子  
落合小児科医院 落合 仁  
独立行政法人国立病院機構三重病院 庵原俊昭

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2013/14シーズンに札幌市で検出された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス

(IASR Vol. 35 p. 42-43: 2014年2月号)

 

2013/14シーズン当初の日本国内におけるインフルエンザウイルスの検出は、A(H3N2)の割合が最も多く、次いでA(H1N1)pdm09、B型ウイルスの順となっている。札幌市では12月27日までにA(H3N2)ウイルス13株、A(H1N1)pdm09ウイルス5株、B型ウイルス1株が分離されている。A(H1N1)pdm09ウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて、札幌市で検出されたA(H1N1)pdm09ウイルスがいずれもNA蛋白にH275Y耐性変異をもち、オセルタミビル(商品名タミフル)およびペラミビル(商品名ラピアクタ)に耐性を示すことが確認されたので報告する1)

日本国内におけるインフルエンザウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスは、国立感染症研究所(感染研)と全国の地方衛生研究所が共同で実施している。2013/14シーズンに札幌市の患者から分離されたA(H1N1)pdm09ウイルス5株について、札幌市衛生研究所において遺伝子解析による薬剤耐性マーカーの1次スクリーニングを行ったところ、5株すべてがH275Y変異をもつことが明らかになった。そこで、引き続き感染研においてオセルタミビル、ペラミビル、ザナミビル(商品名リレンザ)およびラニナミビル(商品名イナビル)に対する薬剤感受性試験を実施した。その結果、H275Y変異をもつ5株はいずれもオセルタミビルおよびペラミビルに対して耐性を示すことが確認された。一方、ザナミビルおよびラニナミビルに対しては感受性を保持していた。

一方、11月中旬に札幌市内の病院で、健康成人の重症インフルエンザ症例の発生があり、国立病院機構仙台医療センターでの患者臨床検体の検査によってA(H1N1)pdm09ウイルスの遺伝子が検出された2)(本号11ページ参照)。そこで、このウイルスRNAについて、感染研において遺伝子塩基配列の解析を行った結果、札幌市衛生研究所で分離された5株と同様にH275Y変異をもつことが明らかになった。

2013/14シーズンに札幌市で検出されたオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルス計6株は、4例が10歳以下の小児、2例が成人から検出された。いずれも散発例であり、各々の患者の間での直接の感染伝播は無かったと判断された。しかし、6株のウイルスのHA遺伝子およびNA遺伝子の塩基配列はほぼ同じであり、同一の耐性ウイルスが札幌市内で伝播されている可能性が高い。6名の患者は検体採取前に抗インフルエンザ薬の投与を受けておらず、薬剤により患者の体内で耐性ウイルスが選択された可能性は否定される。日本国内における薬剤未投与例からの耐性ウイルスの検出率はシーズンごとに増加傾向にあり、海外の状況も同様である3)。一方、札幌市以外の北海道内においては、今シーズンにこれまで検出されている9検体のすべてはA(H3N2)ウイルスであり、A(H1N1)pdm09ウイルスは検出されていない。

米国においては、2013/14シーズン(第51週まで)に768株のA(H1N1)pdm09ウイルスが解析され、10株(1.3%)のオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスが検出されている4)。その大半は、ルイジアナ州で検出されており、ルイジアナ州におけるA(H1N1)pdm09耐性ウイルスの検出率は57%となっている。また、ルイジアナ州および隣接するミシシッピ州で検出された5株のオセルタミビル・ペラミビル耐性ウイルスのうち、少なくとも4例は薬剤未投与例であったことが確認されている。遺伝子配列からは、札幌市の耐性ウイルスはルイジアナ州の耐性ウイルスとは区別される。

2007/08シーズンヨーロッパで出現したオセルタミビル耐性のソ連型A(H1N1)ウイルスは、2008/09シーズンには世界中に拡がり、日本でも耐性株がほぼ100%を占めて大きな問題となった。一般に、H275Y変異をもつオセルタミビル耐性ウイルスは、野生型の感受性ウイルスに比べてウイルスの安定性・適応性が低く、伝播・生存には不利だと考えられてきた。しかし、世界中に拡がったオセルタミビル耐性ソ連型A(H1N1)ウイルスのNA蛋白には、H275Y変異に加えて、新たにR222QとV234Mの2つの変異が起こっており、さらにHA蛋白にはT82K、K141EおよびR189Kの3つの変異が加わっていた。その結果、ウイルスの安定性や適応性が保持されて、野生株である感受性ウイルスを凌駕する結果になったと考えられている5,6)。一方、A(H1N1)pdm09ウイルスについては、NA蛋白のV241I、N369KおよびN386Sの3つの変異がH275Y変異ウイルスの安定化に寄与することが報告されている7)。今シーズンにおける米国ルイジアナ州の耐性ウイルスは、この3つの変異のうちV241IおよびN369Kの2つのみもっていた。これに対して、札幌市の耐性ウイルス6株のすべては、V241IとN369Kの2つに加えて、N386K変異をもっていた。386番目のアミノ酸のKがSと同様にH275Y変異ウイルスの安定化に寄与するかどうかは現時点では不明であるが、その可能性は否定できない。

NA蛋白にH275Y変異をもつインフルエンザウイルスに関しては、オセルタミビルの臨床効果の低下が、特に小児において顕著に認められることが報告されている8,9,10)。また、ペラミビルの作用機序はオセルタミビルと同様であり、オセルタミビル耐性ウイルスはペラミビルに対して交叉耐性を示すことが報告されている11,12)。しかし、作用機序の異なるザナミビルとラニナミビルには交叉耐性を示さない。A(H1N1)pdm09ウイルスについては、日本国内で使用されている4種類の抗インフルエンザ薬のすべてに耐性を示す変異ウイルスは、これまでに1例も報告されていない。今回の札幌市の耐性ウイルスについても、オセルタミビルとペラミビルに対する感受性は500倍以上低下していたが、ザナミビルとラニナミビルに対する感受性は低下していなかった。地域における耐性ウイルスの検出状況を考慮し、臨床経過から薬剤耐性が疑われる場合には、交叉耐性を示さない薬剤を使用することを考慮すべきであろう。

オセルタミビル、ペラミビルおよびザナミビルは研究用試薬を購入し、ラニナミビルは第一三共株式会社から研究用に提供を受けた。

 

参考文献
1) Takashita E, et al., Euro Surveill 19: pii: 20666, 2014
2) 武井健太郎, 他, IASR 35: 41-42, 2014 http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrs/4216-pr4073.html
3) Takashita E, et al., Influenza Other Respir Viruses 7: 1390-1399, 2013
4) US CDC, FluView 2013-2014 Influenza Season Week 51 ending December 21, 2013
5) Bloom JD, et al., Science 328: 1272-1275, 2010
6) Ginting TE, et al., J Virol 86: 121-127, 2012
7) Hurt AC, et al., J Infect Dis 206: 148-157, 2012
8) Kawai N, et al., J Infect 59: 207-212, 2009
9) Kawai N, et al., Clin Infect Dis 49: 1828-1835, 2009
10) Saito R, et al., Pediatr Infect Dis J 29: 898-904, 2010
11) Baum EZ, et al., Antiviral Res 59: 13-22, 2003
12) Baz M, et al., Antiviral Res 74: 159-162, 2007

 

国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター  
  高下恵美 江島美穂 伊東玲子 三浦 舞 小田切孝人 田代眞人
札幌市衛生研究所 保健科学課 微生物係
  大西麻実
札幌市保健所 感染症総合対策課 感染症総合対策係
  川西稔展
国立病院機構仙台医療センター 臨床研究部 ウイルスセンター
  西村秀一

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侵襲性肺炎球菌感染症・侵襲性インフルエンザ菌感染症の発生動向
     ―2013年4月からの5類全数届出の状況について―

(IASR Vol. 35 p. 46-48: 2014年2月号)

 

背 景:1981年7月に開始された感染症サーベイランス事業によって、肺炎球菌およびインフルエンザ菌を原因とする髄膜炎は定点医療機関からの細菌性髄膜炎の報告の一部として収集され、1999年4月に感染症法が制定された後も、感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類定点疾患として全国約460カ所の基幹定点からの週ごとの報告が2013年3月まで行われてきた。

7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)は2009年10月にわが国で承認され、2010年11月から5歳未満の小児に対するPCV7接種の公費助成が開始された。2007年から始まった厚生労働省班研究(庵原・神谷班)における、2011年10月時点でのワクチン公費助成前後の比較では、髄膜炎で71%の減少、非髄膜炎で52%の減少となっている1)。一方、2008年12月にはHaemophilus influenzae b型(Hib)ワクチン接種が開始され、2010年11月に5歳未満の小児に対するHibワクチン接種は公費助成対象となり、2013年4月の予防接種法の改正に伴いHibワクチンは定期接種に組み込まれた。厚生労働省班研究(庵原・神谷班)の調査結果から、2011年10月時点でのワクチン公費助成前後の比較では、髄膜炎で92%の減少、菌血症を伴う非髄膜炎で82%の減少となっている2)

2013年4月にPCV7とHibワクチンが定期接種(A類)の対象となったことを踏まえ、同時期から侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease: IPD)および侵襲性インフルエンザ菌感染症(invasive Haemophilus influenzae disease:ここでは以下IHDとする) が感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類全数届出疾患となった。今回、感染症法に基づく届出状況について、2013年の患者発生動向の概要を中間報告する。

方 法:感染症サーベイランスシステム(NESID)に2013年4月1日~11月7日までに登録された症例に対し、患者の性別・年齢、症状や診断状況および病型などの疫学情報を集計した。また、届出情報に含まれる臨床情報や病原体検査所見から侵襲性感染症(菌血症、髄膜炎、肺炎)の確定診断を以下のように定義した。すなわち、1.菌血症:血液検体から培養またはPCR法で菌の遺伝子が検出された症例、2.髄膜炎:症状欄に「項部硬直」または「髄膜炎」の記載があるか、髄液から培養またはPCR法で菌が検出されたか、ラテックス法または イムノクロマト法にて菌抗原を検出した症例、3.肺炎:症状欄に「肺炎」の記載がある症例。これらの診断を基本として、1.菌血症(肺炎、髄膜炎を伴わない)、2.菌血症を伴う肺炎、3.髄膜炎(菌血症、肺炎の有無を問わない)の3つの臨床像に分類して集計した。

結 果:上記期間中の総報告症例数はIPD 671例、IHD 89例であった。IHDの総症例数はIPDの13.3%であった。表1にはIPD、IHDの臨床像別の症例数を示した。図1にはIPDとIHD症例の年齢別構成を臨床像別に示した。年齢構成は、IPD、IHDともに5歳未満の小児と60歳以上の高齢者に症例の集積があり、二峰性の分布を示している。とりわけ、わが国の高齢者におけるIHDの集積は、今回初めて明らかになった。IPD、IHDのいずれにおいても男性が6割程度を占めた。IPD、IHDの致命率はそれぞれ5.8%、8.0%であり、死亡例はいずれの場合も高齢者に集中していた。小児のIPDでは、菌血症(64%)が最多で、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎がそれに続いた。一方、成人のIPDでは、菌血症を伴う肺炎、菌血症がいずれも約4割であり、髄膜炎は2割程度であった。小児のIHDでは、菌血症(64%)が最多で、髄膜炎がそれに続いた。成人のIHDでは、菌血症を伴う肺炎(60%)が最多であり、菌血症がそれに続いた。髄膜炎は6%にとどまった。

考 察:2013年4月から約7カ月間におけるわが国のIPDおよびIHDの発生動向とそれぞれの臨床像の概要を明らかにした。今回の小児IPDの症例数では髄膜炎は16%にとどまり、菌血症が64%を占めていたが、この結果は、前述の庵原・神谷研究班で、PCV7導入前に比較して、髄膜炎が70%減少し、非髄膜炎は50%減少にとどまっている結果と矛盾しない1)。また、わが国における小児のIPDの臨床像は菌血症が大半を占めていたが、この結果はPCV7定期接種導入前のオーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州から報告された小児IPDの病像と一致する結果であった3)。今回の成人IPD症例の臨床像では菌血症を伴う肺炎と菌血症の両者が約4割を占めたのに対し、NSWにおける成人のIPDでは菌血症を伴う肺炎が 7~8割と大半を占めた点で今回のわが国の結果とは異なっていた2)。また、肺炎球菌による髄膜炎の症例数は小児より成人が多かった。

庵原・神谷研究班における小児IPD症例から分離された肺炎球菌の血清型分布の検討では、PCV7公費助成前には6B、14、23F、19Fの順に多かったのに対して、PCV7公費助成後には、血清型の割合は19A、6B、14、23Fの順に多いが、PCV7非含有血清型である19A、15A、 15B、15C、22F、6C等が増加している1)。結果的に、PCV7公費助成前のIPDの原因菌の血清型カバー率は77.2%であったのに対し、公費助成後には44.4%まで減少しており、PCV7導入後の短期間で原因血清型の変化が明確になっている。このような非PCV7血清型によるIPDの対策として、2013(平成25)年11月からはPCV7に代わって13 価結合型肺炎球菌ワクチンが定期接種ワクチンとして導入され、今後は少なくとも血清型19AによるIPDは減少すると予想される。

Hibワクチン導入前に比較して、小児のIHDのうち髄膜炎は9割、菌血症を伴う非髄膜炎は8割が減少した背景もあり2)、今回の小児のIHD症例数は小児、成人の総症例数の25%に過ぎなかった。一方、今回わが国の成人におけるIHDの発生動向が明らかになり、成人とりわけ60歳以上の壮年~高齢者を中心に菌血症を伴う肺炎が多数例検出されたことは注目に値する。米国での1999~2008年におけるIHDの患者発生動向調査においても、小児では菌血症が主体であるのに対し、成人ではとりわけ高齢者で菌血症を伴う肺炎が大半を占めることが報告されている4)

IHD患者由来の菌株の莢膜型は、任意接種前にはHibが97%、型別不能株(non-typable H. influenzae; NTHi)は3%に過ぎなかったが、公費助成開始後にはHibが83%、NTHiが17%とNTHiの割合が増加している2)。このようなHibワクチン導入後のNTHiによるIHDの増加は海外でも報告されており5,6)、さらに近年ではa型の莢膜株(Hia)によるIHDの増加も報告されている7)

このような小児におけるPCVおよびHibワクチンの定期接種化後のIPDおよびIHDの原因血清型の変化から、今後もこれらの侵襲性感染症の感染症発生動向のみならず、原因菌の血清型の動向を継続して監視する必要がある。しかしながら、感染症発生動向調査による届出は研究を目的としたものではないことから、原因菌の血清型診断はほとんどの症例で届出時には記載されていない。このため、平成25年度から厚生労働省班研究「成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究」において、10道県におけるIPDおよびIHDの原因菌の調査を開始しており8)、今後地方衛生研究所に対する血清型診断の技術研修を支援する予定である。

(謝辞) 感染症発生動向調査には地方情報センター、保健所、医療機関の皆様のご協力に感謝申し上げます。

 

参考文献
1) IASR 34: 55-56, 2013
2) IASR 34: 185-186, 2013 
3) McIntyre P, et al., NSW Public Health Bulletin 14: 85-89, 2003
4) Livorsi DJ, et al., J Infect 65: 496-504, 2012
5) Dworkin MS, et al., Clin Infect Dis 44: 810-816, 2007
6) Kastrin T, et al., Eur J Clin Microbiol Infect Dis 29: 661-668, 2010
7) Ulanova M, Tsang RSW, Lancet Infect Dis 14: 70-82, 2014
8) 成人の侵襲性細菌感染症サーベイランス構築に関する研究
     (http://www.niid.go.jp/niid/ja/ibi.html

 

国立感染症研究所 感染症疫学センター   
  牧野友彦 高橋琢理 大日康史 松井珠乃 砂川富正 石岡大成 大石和徳  
国立感染症研究所 細菌第一部 
  大西 真 常 彬  
国立感染症研究所 細菌第二部 
  柴山恵吾 佐々木裕子

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The Topic of This Month Vol.35 No.2(No.408)

日本における重症熱性血小板減少症候群

(IASR Vol. 35 p. 31-32: 2014年2月号)

 

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)は、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスSFTS virus(SFTSV)(図1)によるマダニ媒介性全身性感染症で、2011年に中国の研究者らにより発表された(本号3ページ)。潜伏期は6~13日で、主徴は、発熱、消化器症状(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、下血等)である。末梢血液検査では白血球減少および血小板減少が、骨髄検査では細胞低形成と血球貪食像が、生化学検査ではAST、ALT、LDHの上昇が、そして尿検査では血尿および蛋白尿が高頻度で認められる。意識障害等の神経症状が認められる場合は、予後不良とされる。SFTSは2011年の中国での発見の後、2013年に日本と韓国から報告されている。 

SFTSVの自然界における存在様式とヒトへの感染経路:SFTSVの感染サイクルは、経卵性伝搬で成ダニから幼ダニへSFTSVが受け継がれる経路(マダニ-マダニサイクル)と、マダニが感染哺乳動物を吸血しSFTSVを獲得する経路(マダニ-哺乳動物サイクル)の二つがある。中国では、患者の生活圏に生息するフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)およびオウシマダニ(Rhipicephalus microplus)のそれぞれ約5%と0.6%からSFTSV遺伝子が検出もしくはウイルス自体が分離されたことから、SFTSVの宿主はこれらのマダニと考えられている。日本の場合には、国内のSFTS患者の体表から発見されたフタトゲチマダニまたはタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)(図2)がSFTSVを媒介していると考えられる。

ヒトは主にSFTSV保有マダニに咬まれることにより感染するが、中国からの報告によると、血液・体液を介し患者から家族や医療従事者に感染することもある。空気感染、飛沫感染は確認されていない。

日本におけるSFTSの発見と後方視的臨床的・疫学的調査研究:2012年秋に、発熱、嘔吐、血性下痢等の症状を呈した海外渡航歴のない成人が、多臓器不全で死亡した。この患者の血液から分離されたウイルスがSFTSVと同定され、また、病理学的検査でもいくつかの臓器にSFTSV抗原が存在していたことから、当該患者がSFTSに罹患していたことが日本で初めて証明された(IASR 34:40-41, 2013)。この事例を踏まえ、SFTS患者情報を効率的に収集することを目的とした症例定義(http://www.niid.go.jp/niid/images/iasr/rapid/graph/pt39811.gif)が2013年1月30日に通知され(本号4ページ)、この通知に基づくSFTSに関する後方視的調査研究が実施された。その調査で確認されたSFTS患者8名(日本で初めてSFTSと診断された患者を含む)の詳細は既に報告されている(IASR 34:108-109 & 110, 2013)。その後、2012年以前にさらに3名のSFTSによる死亡または重症な経過をとった患者の存在が分かった。これらSFTS患者計11名の解析から、すべての患者は4月~12月にかけて西日本に発生し、そのうち6名が死亡していた。臨床的な特徴として、骨髄検査が実施された5名の患者すべてで血球貪食症候群の所見が認められ、多くの患者で血液凝固系の異常や多臓器不全が認められた。また、これらの患者の8名からSFTSVが分離され、その遺伝子情報を基に、中国分離株と系統樹解析により比較したところ、日本分離株はすべて中国株とは異なるグループを形成した。つまり、日本分離株は独自の進化を経ている、いわゆる土着のウイルスであることが明らかにされた(本号5ページ)。

2013年の日本におけるSFTSの患者報告状況:2013年3月4日にSFTSは感染症法で全数把握の4類感染症(届出基準:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-43.html)に、SFTSVは三種病原体に指定された(IASR 34:110-111, 2013、本号7ページ)。医師はSFTSと診断した場合には24時間以内に最寄りの保健所に届け出なければならない。

感染症法に基づく感染症発生動向調査による届出患者報告数は、2013年末までに48例で、そのうち、2013年の発病が40例(本号8ページ)、2012年以前の発病が8例(2005年2例、2010年1例、2012年5例:IASR 34:110, 2013)であった。患者発生時期は5月がもっとも多く(図3)、患者発生地域は九州、四国、中国地方の西日本の13県であった(図4)。男性22例、女性26例で、中高年に多かった(48~95歳、年齢中央値は72歳)(図5)。死亡した者は17例であった。

2013年にSFTSの存在が認知され、SFTS検査が実施される患者が増加したことにより、比較的軽症のSFTS患者の存在も明らかにされた(本号9ページ、IASR 34:207-208, 2013)。また、マダニに咬まれた事実が確認されない患者も報告されているため、SFTSが疑われる患者には、マダニの刺し口の有無にかかわらずSFTSの検査をすることが望ましい(本号8ページ)。

日本における検査体制:ウイルス学的診断法としては、急性期の血液やその他の体液(咽頭ぬぐい液や尿)からのSFTSVの分離、RT-PCR法等によるSFTSV遺伝子の検出、急性期および回復期のペア血清を用いたSFTSVに対するIgG抗体価の有意な上昇の確認、等の検査がある。現在、国立感染症研究所(感染研)ウイルス第一部および全国の地方衛生研究所(地衛研)において、RT-PCR法によるSFTSV遺伝子検査が実施できる体制が整備された。感染研および一部の地衛研では、SFTSV感染細胞を抗原とした間接蛍光抗体法やSFTSV抗原を用いたIgG-ELISA法による抗体測定法も整備され(本号10ページ)、国内に生息するマダニからのSFTSV遺伝子検出や動物のSFTSV抗体保有状況の調査も実施されている(IASR 34: 303-304, 2013)。

今後の課題:2013年1月に日本でSFTS患者が初めて確認され、さらに前方視的および後方視的な調査により、SFTSが日本で発生していることが明らかにされた。今後、感染研および地衛研におけるSFTSの検査体制を協力して維持・発展させていく必要がある。厚生労働省の助成により平成25年度から3年間をめどに、SFTS対策を目的とした厚生労働科学研究費補助金研究事業「SFTSの制圧に向けた総合的研究(研究代表者・倉田毅)」が立ち上げられ、SFTS対策のための研究が開始された。有効な感染症対策を立てるには、1) SFTS発生の詳細な解析、臨床的特徴や病態の解明およびそれに基づく治療法の開発、2) SFTSの迅速診断キットの開発、3) ワクチン開発のための基盤整備、4) SFTSV感染リスク評価とそれに基づくリスクコミュニケーションのあり方の開発、5) 日本に生息するマダニにおけるSFTSV陽性率・SFTSV陽性マダニの分布・野生動物における血清疫学調査、それに基づくSFTSV分布域の解明、等の調査研究が必要である。

 

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<速報>フィリピン渡航者からの麻疹ウイルス遺伝子型B3の検出―川崎市

(掲載日 2014/2/19)

 

現在、わが国では麻疹排除に向けた取り組みが進んでおり、川崎市においても麻疹含有ワクチン接種の推奨や検査診断の推進など総合的な対策が進められているところである。市内における麻疹の検査確定例は、2012年は0例、2013年は1例(遺伝子型D8)のみであった。しかしながら、2014年1月に届出のあった川崎市内在住者3例全例から麻疹ウイルス遺伝子型B3が検出され、いずれもフィリピン渡航歴があったため、概要を報告する。

症例1:生後9カ月の男児で、2013年12月15日~2014年1月1日までフィリピンに渡航していた。2014年1月8日に発熱、咳、鼻汁、1月12日に発疹を認め、1月14日に医療機関を受診し、咽頭ぬぐい液、尿および血液を採取され入院となった。同居の兄は2回の麻疹含有ワクチン接種歴があったが、兄以外の家族にワクチン接種歴や麻疹罹患歴が不明の濃厚接触者がいたにもかかわらず、二次感染者の発生はなかった。また、感染可能期間中に、入院医療機関以外の医療機関にも受診歴があったため、管轄の区役所保健福祉センターより当該医療機関への情報提供と注意喚起を行った。その後の調査では、院内感染例や周囲への拡大は確認されていない。

症例2:12歳の女児で、2013年12月20日~2014年1月4日までフィリピンに渡航していた。2014年1月12日に発熱、1月14日に発疹を認め、市内医療機関を受診した。児は2回の麻疹含有ワクチン接種歴があり、典型的な麻疹の発疹とは異なることから、当初は水痘と診断されていた。しかしながら経過中に色素沈着を認め、フィリピン滞在中に麻疹と診断された患者との濃厚接触があり、曝露から発症までの期間が潜伏期間と一致することから、麻疹疑い例として1月16日に咽頭ぬぐい液、尿および血液を採取された。管轄の区役所保健福祉センターが積極的疫学調査を実施したところ、児は発症の2日前まで登校しており、同学年にワクチン未接種者が2名いることが判明したが、家族を含む接触者から二次感染者の発生は認めなかった。

症例3:33歳の女性で、2013年12月23日~2014年1月11日までフィリピンに渡航していた。2014年1月12日より発熱、1月15日に発疹を認め、1月17日に医療機関を受診し1月22日に咽頭ぬぐい液および尿を採取された。同居の子どもはワクチン接種歴があったが、夫はワクチン接種歴、麻疹罹患歴とも不明であった。また、区役所保健福祉センターによる調査の結果、感染可能期間内に他区の医療機関を受診していたことが判明し、医療機関を管轄する保健福祉センターから、情報提供と接触者に対する注意喚起およびワクチン接種の啓発を行った。その後の調査では、接触者からの二次感染者の発生はなかった。

本症例は発症前日にフィリピンから帰国しており、機内や空港周辺ならびに空港からの利用交通機関等での感染拡大を懸念して、本市の感染症担当者より千葉県、国立感染症研究所(感染研)感染症疫学センターおよび厚生労働省(厚労省)健康局結核感染症課に情報提供を行った。

川崎市健康安全研究所において、上記3例から採取された検体を用いてRT-PCR法によるH遺伝子およびN遺伝子の増幅を試みた結果、すべての検体から麻疹ウイルスN遺伝子が検出された。N遺伝子のDNAシークエンス解析では3例の遺伝子配列は100%の相同性を示し、系統樹解析の結果、B3型のクラスターに属することが確認された(図1)。

B3型は近年、主にアフリカで流行がみられていた株であったが、2013年以降フィリピンでも大きな流行がみられ、フィリピン保健省によると、2013年1月1日~12月14日までに死亡例12例を含む1,848例の麻疹症例報告があった1)。またWHO西太平洋地域事務局によると、2013年のフィリピンにおける麻疹症例総数は死亡例26例を含む2,417例と報告されている2)。わが国においても、2014年2月5日現在、B3型は35件と他の型に比べ多く検出されている3)。また、2013年12月以降にB3型と診断された患者19例中、フィリピン渡航歴のあるものは16例にも上り、フィリピンでの感染リスクの大きさを示している。オーストラリアおよびニュージーランドにおいても、フィリピン、インドネシア、タイ、インド、スリランカ等アジア旅行の帰国者から麻疹患者が多数発生しており4)、西太平洋地域において遺伝子型が判明した麻疹症例のうちB3型の報告は、2012年はわずか8件であったにもかかわらず、2013年には137件と急増している2)

現在、フィリピンをはじめとするアジア、オセアニア地域で麻疹ウイルスに感染するリスクは非常に高くなっており、今後は海外渡航者による輸入麻疹例の増加、さらには国内での二次感染の可能性も危惧される。

今回の3事例においては、市内の各区役所保健福祉センターが協力して積極的な疫学調査を行い、本庁や健康安全研究所と情報共有しながら同時に対策にも着手することができた。さらに、感染研感染症疫学センター、厚労省健康局結核感染症課、成田空港のある千葉県など他機関との情報共有や連絡を密に行うことで、今後の対策にもつなげることができたと考える。

感染症の拡大に境界線はなく、強い感染力を持つ疾患の拡大防止対策には関係各所の連携が非常に重要である。今回の麻疹ウイルス遺伝子型B3のように全国的に感染者が確認される場合には、速やかに接触者の洗い出しや疫学調査を行い、その情報を自治体の枠を越えて各種関係機関と共有することで感染の拡大防止に努めることが必要である。

  

参考文献
1) Republic of the Philippines Department of Health, National Epidemiology Center, Weekly Disease Surveillance Report: 2013 Morbidity Week 50
http://nec.doh.gov.ph/images/dsr2013/weekdsr50.pdf
2) WHO Western Pacific Region Office (WPRO), Measles-Rubella Bulletin Vol 8 Issue 1 (January 2014) http://www.wpro.who.int/immunization/documents/MRBulletinVol8Issue01.pdf
3) IASR 麻疹ウイルス分離・検出状況 2013~2014年
http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-measles.html
4) Department of Health, Victoria, Australia, Measles in returned travellers - Philippines, Bali, Thailand, India and Sri Lanka
http://www.health.vic.gov.au/chiefhealthofficer/advisories/advisory-2014-01-measles-returnedtravellers.htm

 

川崎市健康安全研究所   
  石川真理子 中島閲子 松島勇紀 駒根綾子 清水英明 大嶋孝弘 丸山 絢   三﨑貴子 岩瀬耕一 岡部信彦  
川崎市川崎区役所保健福祉センター   
  小河内麻衣 占部真美子 瀧澤浩子 雨宮文明  
川崎市幸区役所保健福祉センター   
  村木芳夫 田巻いづみ 林 露子  
川崎市多摩区役所保健福祉センター   
  長妻由希子 大原千恵 吉岩宏樹 西村正道 林さわ子  
川崎市健康福祉局健康安全部健康危機管理担当   
  小泉祐子 平岡真理子 瀬戸成子

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