2012年14週(第14号)
(4月2日~4月8日)発生動向総覧/病原体情報(麻疹ウイルス)/速報-従事者衣服からノロウイルスを検出した集団食中毒事例について-長野県〔2012年4月20日発行〕
発生動向総覧 〈第13週コメント〉 4月4日集計分 ◆全数報告の感染症 注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。 *感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。 インフルエンザ:定点当たり報告数は第6週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(25.09)、福島県(23.84)、山形県(19.04)、佐賀県(17.26)、新潟県(17.09)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は832例と3週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約81%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(0.65)、福岡県(0.57)、宮崎県(0.56)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では富山県(5.76)、大分県(3.78)、鳥取県(3.32)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(14.5)、愛媛県(13.5)、福岡県(12.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(2.52)、福井県(2.36)、沖縄県(2.35)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(1.18)、石川県(0.87)、香川県(0.60)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(1.47)、徳島県(0.96)、島根県(0.83)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.21)、高知県(0.17)、大分県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(0.22)、熊本県(0.21)、長崎県(0.11)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(1.72)、山形県(1.53)、熊本県(1.27)が多い。 基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では宮城県(1.83)、石川県(1.80)、愛知県(1.69)が多い。
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発生動向総覧 ◆全数報告の感染症 注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。 *感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。 インフルエンザ:定点当たり報告数は第6週以降減少が続いている。都道府県別では福島県(34.26)、山形県(30.71)、福井県(25.47)、岩手県(24.14)、新潟県(24.00)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は950例と2週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約80%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(0.75)、熊本県(0.67)、富山県(0.66)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では富山県(5.76)、鳥取県(4.32)、北海道(4.01)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福岡県(12.6)、山口県(12.3)、大分県(11.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(3.08)、鹿児島県(2.83)、福井県(2.64)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(0.85)、滋賀県(0.56)、富山県(0.38)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(1.11)、徳島県(0.61)、愛媛県(0.54)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(0.14)、高知県(0.13)、広島県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では熊本県(0.10)、徳島県(0.09)、大分県(0.08)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(2.00)、佐賀県(1.50)、愛媛県(1.27)が多い。 基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.71)、宮城県(2.33)、埼玉県(2.11)が多い。 |
2012年12週(第12号)
(3月19日~3月25日)発生動向総覧/病原体情報(感染性胃腸炎関連ウイルス)/速報-劇症型溶血性レンサ球菌感染症 2006年(4月)~2010年/海外感染症情報〔2012年4月6日発行〕
EV71は高い遺伝子多様性を有し、カプシドVP1遺伝子の分子系統解析により、A、B1~B5およびC1~C5の遺伝子型に分類されている。日本を含むアジアの多くの地域では、複数の遺伝子型によるEV71流行が報告されている一方、中国では、ほぼ唯一の遺伝子型C4のみが伝播している1,2) 。主要な抗原決定部位を含むカプシド遺伝子領域の多様性はEV71株間の抗原性の違いに関与するため、不活化EV71ワクチン開発のためには、免疫原性の高いEV71株の選定および異なる遺伝子型のEV71株に対する交叉中和活性の解析が重要となる5) 。力価の高いウイルスを産生する培養系の確立は、不活化ワクチン製造コストに関わる重要な要因なので、その意味からも適切なウイルス株-培養細胞系の選択が重要である6,7)。ワクチン有効性評価のための感染動物モデルは、いまのところ限られているが、マウス馴化EV71株あるいは乳のみマウスにおける、EV71抗原による抗体誘導および感染防御効果が報告されている3) 。
重症EV71感染症の大規模な流行の経験を有する台湾および中国を中心としたアジア諸国では、近い将来の実用化を目指したEV71ワクチン開発が進められている(表)。台湾国家衛生研究院(National Health Research Institute)では、Vero細胞バイオリアクターで増殖したEV71株(遺伝子型B4)を用いた基盤研究をもとに、不活化EV71抗原を用いたワクチン候補の臨床開発を進めている6,7) 。一方、中国では、数施設により不活化EV71ワクチン開発が進められており(表)、国内標準品および標準的試験法の整備が行われている8) 。中国Sinovacは、EV71株(遺伝子型C4)を用いた不活化EV71ワクチンが、第二相試験において優れた安全性および免疫原性を示したことから、大規模な第三相試験を開始することを最近発表した。不活化EV71ワクチンの臨床開発および将来的な実用化にあたっては、有効性評価のための臨床的エンドポイント(手足口病あるいは中枢神経疾患)や、手足口病およびEV71感染症の疾病負荷に対するワクチン導入の費用対効果、あるいは、接種対象や接種スケジュール、等に対する考え方の整理が必要となる9) 。わが国では幸い、多数の死亡例を伴う重症EV71感染症の大規模流行は発生しておらず、国内でEV71ワクチン開発は行われていない。しかし、国内外における重症EV71感染症の発生に備え、アジア諸国におけるEV71ワクチン開発・導入状況を、今後も注視する必要がある。
参考文献
1) IASR 30: 9-10, 2009
2) WHO/WPRO, A Guide to Clinical Management and Public Health Response for Hand, Foot and Mouth disease (HFMD) (http://www.wpro.who.int/publications/PUB_9789290615255/en/), 2011
3) Lee MS, et al ., Expert Rev Vaccines 9: 149-156, 2010
4) Xu J, et al ., Vaccine 28: 3516-3521, 2010
5) Mizuta K, et al ., Vaccine 27: 3153-3158, 2009
6) Liu CC, et al ., PLoS One 6: e20005, 2011
7) Chang JY, et al ., Vaccine 30: 703-711, 2012
8) Liang Z, et al ., Vaccine 29: 9668-9674, 2011
9) Lee BY, et al ., Vaccine 28: 7731-7736, 2010
国立感染症研究所ウイルス第二部 清水博之