令和元年台風19号の発生を受け、被災地の避難所管理者や被災された方、及びボランティア活動等現地に支援に入られる方に向けて、感染症対策について、地域の感染症発生状況と共に以下にまとめました。

 

基本的な注意

 

人から人に感染する感染症の中には、適切な手洗いと咳エチケット(咳やくしゃみの際はティッシュや二の腕で口と鼻を覆うhttps://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disasters/coughetiquette20160424.pdf)などの標準予防策で予防が可能な疾患があります。

避難所など、人が密集する環境では、特に食事、調理の前やトイレの後の手洗い、咳エチケットを行うよう心掛けてください。

被災地でボランティアを計画されている皆様の感染症予防については、こちらのページを参照してください(https://www.niid.go.jp/niid/ja/disaster/r1-typhoon19/2478-idsc/9158-r1-typhoon19-2.html。また、ワクチンで予防可能な疾患については、ボランティアに参加する前の予防を心がけてください。

なお、全国の感染症発生状況についてはIDWR(https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2019.html)を、地域の感染症発生状況については各自治体の感染症情報センターのホームページを参照してください。

 

避難所で特別な注意を要する感染症とその流行状況

  • インフルエンザ:避難所で流行することがあり、注意が必要です。手洗いの徹底や咳エチケットが重要です。地域においてワクチン接種が可能な場合にはワクチン接種も勧められます。今年は全国的に患者の増加が例年よりやや早い状況となっており、流行入りの目安を超えた地域があります。最近ではAH1pdm09が多く報告されています。最新のインフルエンザ流行状況はこちらをご確認ください(https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html)。避難所内で急な発熱を伴う症状の患者がいる場合には、避難所管理者は医療機関の受診を勧め、保健所等と相談の上、感染伝播予防策を検討してください。
  • 感染性胃腸炎:過去には、災害時に避難所で胃腸炎の発生や食中毒事例が報告されており、手指衛生対策強化に加えて、適切な食品衛生の管理とトイレの衛生状態の保持が重要です。避難所内で嘔吐や下痢を起こした時は、避難所管理者に申告していただくこと、また、避難所管理者は保健所等と共に速やかに対応することが重要です。全国レベルでは流行は例年並みですが、今後、ノロウイルス感染症の流行時期にも入りますので、発生動向には十分にご注意ください。
  • 麻疹:重症化することがあり、避難所に乳児、妊婦、ワクチン未接種者等がいる場合、特に注意が必要です。発熱と風邪様の症状、発疹が認められた場合には速やかな受診が必要です。定期接種対象者で必要回数受けていない場合は、早めに接種を受けることが重要です。近畿以北では9月30~10月6日の間に、東京都(6人)、神奈川県(3人)、千葉県(1人)で症例が報告されました(https://www.niid.go.jp/niid/ja/hassei/575-measles-doko.html)。
  • 風疹:昨年から始まった全国流行は、まだ終息には至っておらず、首都圏を中心に報告が続いています。発症者の多くは、予防接種歴なし、あるいは接種歴不明の30~50代の男性です。第5期定期接種対象年齢の男性(昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれ)は、クーポン券を使って、なるべく早めに風疹の抗体検査と、抗体価が低い場合はワクチンの接種を受けておくことが大切です(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html)。

近畿以北では9月30~10月6日の間に、神奈川県(3人)、北海道(2人)、東京都(1人)、埼玉県(1人)、長野県(1人)で症例が報告されました(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/700-idsc/2131-rubella-doko.html)。

 

その他の注意を要する感染症

  • 破傷風:がれきや泥の撤去作業時に感染することがあります。作業時の感染予防として手袋や厚底の靴などの使用が必要です。1968年以前に生まれた人は、破傷風を含むワクチンを小児期に受けていないため、作業をする場合は注意が必要です。必要な方は、破傷風トキソイドの接種が任意接種として可能です。

  • 創傷関連皮膚・軟部組織感染症:予防のために野外作業の際には、肌を露出しない服装で手袋や厚底の靴などを使用し作業を行う必要があります。
  • ダニ関連感染症:秋に増えるため、肌を露出せず、ダニを目視で確認しやすいよう明るい色の服装で、虫除けスプレーを使用し作業を行うことが重要です。
  • レプトスピラ症:野生動物のし尿などで病原体に汚染された水に触れることで感染し、洪水に関連して発生することがあります。特に皮膚に傷がある場合、感染しやすくなることが知られています。症状には高熱、筋肉痛・関節痛、結膜充血などがあります。野外作業の際には、肌を露出しない服装で手袋や長靴を使用しましょう。
  • 結核:避難所での滞在が長期になった場合に問題となることがあります。咳が2週間以上続く場合、結核の可能性も考え、医師に診察してもらうことが重要です。治療中の避難者は、確実な服薬継続が重要です。
  • 百日咳:被災地の一部地域で流行しているところがあります。長期に咳症状が持続する場合には乳児への接触を控え、咳エチケットを遵守するとともに、医療機関を受診することが重要です。百日咳菌に効果のある抗菌薬を決められた期間服用することで、菌の排出を抑制することが可能です。

(文責)国立感染症研究所感染症疫学センター

 

  • 真菌症:免疫不全患者の侵襲性真菌感染症(医療機関の方々へ):台風等の水害発生後に、カビへの曝露によって病気になった患者を治療する場合は、侵襲性真菌感染症の可能性について留意してください。関連情報はこちらです。
  • (文責)国立感染症研究所真菌部

 

 


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