(掲載日 2014/8/26) (IASR Vol. 35 p. 218-220: 2014年9月号)
熊本県では2014年1月~6月中旬にかけて、感染症発生動向調査で搬入された手足口病等の臨床検体からエンテロウイルス(EV)71が多数検出されたので報告する。
患者発生状況:熊本県における手足口病の患者報告数は、全国よりも早く第14週(3/31~4/6)から増加し始め、第29週(7/14~7/20)でピーク(定点当たり2.72)となり、その後横ばいの状態である(図1)。また、ヘルパンギーナの患者報告数も手足口病とほぼ同様の傾向がみられた。
材料および方法:2014年1~6月に、手足口病、ヘルパンギーナまたは発疹症と診断された患者の咽頭ぬぐい液等73件(手足口病:38件、ヘルパンギーナ:23件、および発疹症:12件)を検査材料とした。EVの遺伝子検査は、IshikoらのRT-PCR法1)でスクリーニング後、Nixらのプライマー2)でVP1領域をPCR増幅し、ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。型別同定には、オランダ(RIVM)の型別分類ウェブサービス(http://www.rivm.nl/mpf/enterovirus/typingtool#/)を使用した。また、ウイルス分離には4種類の細胞(RD-A、VeroE6、HEp-2、およびMRC-5)を使用し、2週間間隔で2代目まで観察した。
結果と考察:検査した73件のうち、29件からEVが検出または分離された。内訳は、EV71が18件(手足口病:15、ヘルパンギーナ:2、発疹症:1)、コクサッキーウイルスA4(CA4)が3件、CA9が1件、エンテロウイルス型別不明(NT)が7件であった(表1)。ウイルス分離では、PCRでEV陽性であった29件中13件(RD-A細胞のみ:4件、VeroE6細胞のみ:2件。両細胞:7件)からEVが分離され、12件がEV71および1件がCA9と同定された。なお、昨年~本年にかけて検出された16件のEV71の系統樹解析では、14件がサブグループB5および1件がサブグループC2に分類された(図2)。
以上のことから、2014年の上半期、熊本県における手足口病の主な病原体はEV71(サブグループB5)であることが明らかとなった。なお、本年のEV71による手足口病患者の年齢は0~7歳で、1~2歳児が過半数を占めた(図3)。臨床症状は、昨年のCA6によるものより発熱が少なく、比較的軽症のようである。しかしながら、EV71による手足口病は、過去、中国や東アジア地域では、中枢神経合併症を伴う重症例も多数報告されていることから、今後もEV71の動向に注意する必要がある。
熊本県保健環境科学研究所 吉岡健太 戸田順子 大迫英夫 原田誠也
熊本県水俣保健所 清田直子