(掲載日 2015/11/2) (IASR Vol. 36 p. 228-229: 2015年11月号)
患者数の推移
本県の手足口病患者は例年夏季に多い傾向があるが、2015年は第9週から定点当たり1.00人以上の流行となり、第16週には定点当たり5.22人となり警報レベルを超える流行となった。その後、やや減少し、第20週には定点当たり1.65人となったが、第27週から再度、警報レベルを超える流行となり、第32週には定点当たり6.52人とピークとなった後漸減した。
また、各地域の定点当たりの患者数は、東部で第15~18週および第26~32週の間、中部で第28~32週の間、西部で第24週と第27週の2週、隠岐で第32~35週の間にそれぞれ警報レベルの患者数となっており、前半の流行は東部中心、後半の流行は全県的な流行であった(図1)。
一方、ヘルパンギーナについては、例年と比べ立ち上がりが遅く患者数も少なく、第35週に定点当たり1.17人となったが、その後減少傾向である。
地域別の定点当たりの患者数のピークは東部で第32週に2.14人、中部で第35週に1.14人、西部で第35週に1.86人、隠岐で第31週に1.00人であり、すべての地域で患者発生があったが、地域的な急増はみられなかった。
2015年1~8月までの手足口病70検体(咽頭ぬぐい液66、鼻汁3、便1)、ヘルパンギーナ4検体(すべて咽頭ぬぐい液)について、RDA、RDA-SCARB2(東京都医学総合研究所・小池 智先生より分与)、A549、FL、Veroの培養細胞を用いてウイルス分離を行った。また、ウイルスが分離されなかった検体についてはCODEHOP RT-PCRによる遺伝子検査を行い、陽性例は増幅産物をダイレクトシークエンスで塩基配列を決定し、BLAST検索で同定を行った。
ウイルス検出結果
手足口病70検体中58検体(検出率83%)からウイルスが検出された。内訳は38検体からコクサッキーウイルスA6型(CVA6)(RDAあるいはRDA-SCARB2; 25検体、CODEHOP RT-PCR; 13検体)、20検体からCVA16(RDAあるいはRDA-SCARB2; 19検体、CODEHOP RT-PCR; 1検体)が検出された。ヘルパンギーナ4検体中2検体からCVA10(RDAあるいはRDA-SCARB2)が検出された。
地域別では、東部・中部で2~5月にCVA6が多く検出され、6~8月にはCVA16が多く検出された。西部では4月および7月にCVA16、8月にCVA6が検出された(図2、3)。また、CVA10は8月に東部および中部から1株ずつ検出された。
考 察
2015年の本県の手足口病の流行は、4月と6~8月の夏季をピークとする2峰性であり、4月に警報レベルとなるような流行は全国的にも本県のみであった。
原因ウイルスとして、4月をピークとする流行はCVA6が主流であったと考えられ、夏季の流行ではCVA16が主流であったと考えられるが、全国的にはCVA16が流行した後、CVA6が流行しており(IASR:病原体別手足口病由来ウイルス、2014&2015年)、本県の流行形態と逆であった。
なお、西部では2~7月にCVA6の検出はなかったが、8月に検出されていることから、今後西部でCVA6が流行する可能性も考えられるため注意が必要である。
ヘルパンギーナについては、全国と比べ患者数が少ない状況にあり、ウイルスもCVA10のみが検出されている。
手足口病については、主に夏季に流行する疾患であるが、2015年の本県のように冬季~春季にかけて流行することがある。そのような場合は、夏季にウイルス株を変えて再度流行する可能性があるため、患者情報およびウイルス検出に注視していく必要がある。