国立感染症研究所

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2013年に発症した重症熱性血小板減少症候群40例のまとめ―感染症発生動向調査より

(IASR Vol. 35 p. 38-39: 2014年2月号)

 

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)は2013年1月に日本で初めて報告され1)、同年3月4日に感染症法上の届出対象疾患となった。同12月18日までに、法律施行前に診断された4例を除く48例が報告された。今回は、その中から2013年発症と報告された40例についてのまとめを報告する。

発症時期は3~12月であり、5月が12例と最も多く、次いで7月8例であった(本号2ページ図3参照)。感染地域は兵庫県以西の西日本12県(2012年以前の症例を報告している佐賀県を合わせると13県)であった(本号2ページ図4左参照)。性別は男性が16例(40%)で、年齢は中央値73歳で、40~90代に及んだ(図1)。生存27例は男性13例(48%)、年齢中央値71歳であった。死亡13例(33%)の性別は男性が3例(23%)で、年齢は中央値83歳であり、死亡例は高齢者に多かった(p<0.01, Wilcoxon rank sam test)。曝露から発症までは中央値5日(四分位範囲3~7.5日、n=18)であり、発症から死亡までは中央値で8日(四分位範囲5~12日)であった。症状は発熱、血小板減少、白血球減少が全例で認められており、消化器症状が37例(93%)で認められた(図2)。マダニの刺し口は18例(45%)で認められ、マダニに咬まれたという自己申告がなされた3例と合わせて21例(53%)でマダニ刺咬が認められた。職業は、無職が21例(53%)と最も多く、次いで農業7例(18%)であった。

わが国のSFTSの流行時期、死亡例は高齢者に多いという特徴は、中国からの報告と矛盾しない2)。職業は年齢を反映して無職が多く、特定の職業でSFTS患者が発生しているということは確認されていない。ただし、SFTSの発症に関連する行動を含めたリスク因子は比較対照研究などを通じて明らかにしていく必要がある。SFTS疑い患者情報の収集のために、2013年1月30日付の厚生労働省課長通知で伝えられた情報提供を求める患者の要件(症例定義)3)に含まれていた発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少がほぼ全例で認められていることや、中国からの報告による致死率(6.3~30%)4,5)と比べ国内症例の致死率が高いことは、現在の報告症例が重症例を中心とした症例であることを端的に示している。今後、軽症例も診断される体制を構築し、SFTSの日本における疫学をより詳細に明らかにしていく必要がある。上記1月30日付通知で示された症例定義を満たしているか、重症であるかどうか、マダニ刺咬の既往やマダニ刺し口の有無にかかわらず、疑いを持った患者には積極的に確定検査をしていく必要がある。今回の報告にあたり、症例報告に携わられた関係者の方々に感謝する。

 

参考文献
1) Takahashi T, et al., J Infect Dis, 2013 Dec 12, doi: 10.1093/infdis/jit603 [Epub ahead of print]
2) Zhang YZ, et al., Clin Infect Dis 54(4): 527-533, 2012
3) 厚生労働省健康局結核感染症課長通知「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の国内での発生について(情報提供および協力依頼)」健感発0130第1号, 平成25年1月30日
4) Yu XJ, et al., New Engl J Med 364(16): 1523-1532, 2011
5) Ding F, et al., Clin Infect Dis 56(11): 1682-1683, 2013

 

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