ヘルペス脳炎は、4類感染症定点把握疾患の「急性脳炎(日本脳炎を除く)」を代表する重要な疾患であり、全国約500 の基幹病院定点より毎週報告されている(註:2003年11月施行の感染症法一部改正により、5類感染症全数把握疾患の急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び 日本脳炎を除く)に変更)。単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus type 1:HSV-1)あるいは2型(herpes simplex virus type 2 :HSV-2)の初感染時または再活性化時に発症し、発症年齢(新生児、年長児、成人)によってその病態はかなり異なる。年長児から成人のヘルペス脳炎の ほとんどの症例はHSV-1によるものであり、新生児のヘルペス脳炎においては、森島らの全国調査(1993)によりHSV-1がHSV-2 より約2:1の比率で多いと報告されている1) 。HSV が中枢神経系に移行する経路は、上気道感染から嗅神経を介してのルート、血行性ルート、感染した神経節からのルートの3通りが考えられている。新生児の場 合は全脳炎のパターンをとることが多いが、年長児、成人においては、上記のルートを介して好発部位である大脳辺縁系にウイルスが到達し、病変を起こすとされている。

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan