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薬剤耐性マラリアの最新疫学知見

(IASR Vol. 39 p173-174: 2018年10月号)

1.アルテミシニン誘導体と耐性

アルテミシニン誘導体は1970年代に中国でヨモギ属の植物であるクソニンジン(Artemisia annua)の抽出成分から作られた抗マラリア薬であり, 治療後数時間でヒト体内の99.99%のマラリア原虫を消失させる。2000年代半ばから, 本誘導体を中心薬とした併用療法が世界中の流行地で導入されたことによりマラリア死亡者は著明に減少した。この貢献により, 本誘導体の開発者である屠呦呦が2015年にノーベル医学生理学賞を受賞したのも記憶に新しい。アルテミシニンは赤血球に感染したマラリア内で活性化されラジカルを形成する。このラジカルが, 原虫蛋白, 脂質, 核酸などを損傷することにより抗原虫作用を示すと考えられている。

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