Q7. 日本脳炎ワクチン未接種者に対する対応について

 日本脳炎について教えてください。1期を何も受けずに、2期を9歳で接種希望の方に対し2期としてワクチン接種してよろしいでしょうか。


(神奈川県 保健師 女性)

 答え

  平成22年度は、3歳のお子様については積極的な勧奨が再開されていますが、http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/nouen/index.html、その他の1期の対象年齢の方(生後6か月~90か月未満)については、積極的な勧奨は行われていないものの、定期接種として接種が可能です。

 今回ご質問の方は9歳とのことですので、1期の対象年齢は既に過ぎており、2005年の積極的勧奨の差し控えにより、受けそびれた方に該当されるのかと思いますが、今後、このような方への接種方法についても、方針が定められると思います。

 残念ながら、2010年6月現在、2期の定期接種として乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが使えるという状況になっておりませんが、こちらについても、定期接種として接種が可能となるよう、現在、検討が行われているところです。

 なお、昨年度の研究班で、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンに関する追加接種の有効性・安全性の検討が行われ、5月にワクチン添付文書の改訂が行われていますので、定期外接種(任意接種)として、この年齢の方が乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの接種を受けることは可能です。

 東南アジア等、日本脳炎が流行している国https://www0.niid.go.jp/vir1/NVL/JEVMeeting.htm(日本脳炎発生地域の世界地図)に渡航する予定のある方については、定期接種、定期外接種(任意接種)にかかわらず、日本脳炎を予防するという観点から、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンを受けてから渡航された方が良いと思われます。

(2010/7/21 IDSC 更新)
 Q6. ベトナム渡航時の日本脳炎ワクチンについて

 12歳の女児が、6月にベトナムに旅行に行きます。日本脳炎の第1期は接種しています。渡航前日あるいは前々日に第2期を接種したいのですが、可能でしょうか。日本脳炎ワクチン接種に係るQ&Aに記載されている「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンを用いた第2期の接種については、その有効性と安全性について研究を実施しており、第2期の接種で使用可能とするかどうかを今夏までに明確にできるよう速やかに検討を行う」ということについて、現在の最新情報を知りたいです


(東京都 20代 女性)

 答え

 現在使用されている日本脳炎ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)は、「定期接種」としては第1期のみの使用に限られていますが、第2期でも使用できるように最終的な検討が行われている最中です。


 また、従来の日本脳炎ワクチン(マウス脳由来日本脳炎ワクチン)は、第2期でも使用可能でしたが、今年の3月に有効期限を過ぎてしまいました。したがって、現在のところ「定期接種の第2期」として使用できる日本脳炎ワクチンはありませんが、まもなく新しい日本脳炎ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)による接種が可能となります(平成22年6月現在)。

 ただし、「任意接種」として日本脳炎ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)を接種することは今でもできますので、予防接種を受ける病院や診療所の先生とご相談ください。

 ベトナムには、デング熱やマラリアなどの病気もありますので、蚊に刺されないような予防策が重要です。 

(2010/6/29 IDSC 更新)
■ Q5. インド渡航時のワクチンについて

 9月に2週間、インドにある施設へ、ボランティアに行きます。施設の中には、さまざまな病気を持った方が多数いらっしゃいます、マスク、手袋着用を奨めると書いていました。インド入国に際して、予防接種は義務付けられていないようですか、水を中心に、いろんな病気が心配されます。インドへ行く際に、考えられる予防接種を教えていただきたいです。また、予防接種はどこの病院でも受けることができるのでしょうか?予防接種で発熱をする人もいると聞きましたが・・・。何ヶ月か前にうけるべきなのでしょうか?

(滋賀県: 30代 学生)

 答え

  予防接種には、弱毒化した生きた病原体を含む弱毒生ワクチンと、生きた病原体は含まれておらず、不活化された病原体の全部あるいはその一部を含む不活化ワクチンの二種類があります。

 基本的に、1つずつ別々にワクチンを受けるのであれば、次の接種を受けるまでには、弱毒生ワクチンは接種後最低4週間、不活化ワクチンは接種後最低1週間の間隔をあけなければなりませんが、同じ日に別々の場所に複数のワクチンを接種することは可能です。まだ渡航まで3か月以上ありますから、余裕をもってご相談いただいていると思いますが、渡航者のための予防接種外来等では、5種類あるいは6種類のワクチンの同時接種もよく行われています。同時に複数のワクチンを受けても有効性や安全性には問題はありません。

 インド渡航にあたり、予防接種で予防できる感染症を考えますと、以下の様になるかとおもいます。


【弱毒生ワクチン】
 ポリオ(インドは現在も野生株ポリオが流行している国の1つです。小児期に2回生ポリオワクチンを接種されていると思いますので、3回目のワクチン接種を受けてから渡航されると良いと思います。母子手帳で受けた回数をご確認ください。)

 他に、麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜなども、もし海外で発症すると大変です。まだ渡航までに余裕がありますので、かかってない、かつ予防接種も受けたことがないものがあれば、接種を検討された方が良いと思います。麻疹と風疹に関しては、子どものころから合わせて合計2回の接種が完了されていれば、十分であると考えます。現在は、麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が使用されています。


【不活化ワクチン】
 A型肝炎、B型肝炎、破傷風、日本脳炎、狂犬病は受けておかれた方が良いと思います。

 インフルエンザは、インドでの流行状況に合わせての接種が良いと思いますが、こちらではインドの行かれる地域で、どのような流行状況かを把握できませんので、事前の情報があれば、それに従って、接種医の先生と相談のうえ、決められると良いと思います。

 不活化ワクチンは、間隔をあけて複数回の接種が必要ですので、これまで過去に接種したワクチンの履歴を合わせて、回数を考える必要があります。

 接種するワクチンの種類、回数、スケジュールを接種医となる医師と十分に相談のうえ、余裕を持って、接種を完了するようにしてください。


【予防接種を受けられる場所】
 予防接種外来を実施している医療機関であれば、黄熱ワクチン以外の大抵のワクチンは接種可能ですが、どこの医療機関が予防接種外来を行っているかの情報は把握しておりませんので、最寄りの医療機関、医師会、自治体、検疫所等にお問い合わせください。


【その他】
 
また、できれば渡航1か月前くらいまでに必要な予防接種が済んでいるとより良いと思います。

 感染症の中で、予防接種で予防できるものはほんのわずかですから、一般的な感染症予防(マスク・手袋の着用、手洗いの徹底、生水・氷は摂らない等)を徹底し、自分で予防できるものは十分に予防するようにして下さい。

 検疫所のHPには、インドでの感染症情報が詳しく掲載されていますので、是非、ご参照ください。http://www.forth.go.jp/

(2010/6/29 IDSC 更新)
 Q4. 大人になってからの予防接種について

 最近、ミニブタのいる牧場に頻繁に遊びに行きます。そこには蚊などの虫もたくさんいますので、ふと、日本脳炎について心配になりました。私は昭和50年代生まれで、母子手帳を見ますと、幼少時に日本脳炎の予防接種を5度ほど受けています。しかし今は30代になり随分と年月が経っているので、いまも効き目があるのか、素人としては心配です。

 日本脳炎をはじめ、子供のころに予防接種を受けている病気に対して、その効き目は今もあるのでしょうか?子供のころに予防接種を受けていても、大人になってから再度接種すべきワクチンはあるのでしょうか?


(群馬県在住 30代 主婦)

 答え

  ワクチンには大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2つがあります。 日本で使われている日本脳炎ワクチンは「不活化ワクチン」です。

 生ワクチンは、生きたウイルスや細菌などが含まれていますが、弱毒化されていますので(病気を起こす性質を弱くしていますので)、予防接種を受けた後にその病気と同じくらいの症状が出ることはなく、全く症状がなく免疫だけが獲得できることもよくあります。しかし、接種されたワクチンに含まれるウイルスなどは体の中で増え、その感染症に軽くかかったような状態になることから、一般に1回の予防接種でしっかりと、長く持続する免疫ができるとされています。

 一方、不活化ワクチンには生きたウイルスなどは含まれておらず、予防接種を受けた後に体の中で増えることはないので、1回の予防接種では十分な免疫ができず、十分な免疫ができるように何回か予防接種を受ける必要があります。また、免疫が持続する期間は生ワクチンと比較すると短くなります。

 日本の定期予防接種(法律に定められた予防接種で、市区町村の公費補助がある予防接種)のほとんどは子どもが対象となっていますが、少なくとも麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、日本脳炎、百日咳では、子どもの頃に受けた予防接種でできた免疫が大人になって弱くなってくることが分かってきています。

 免疫がどれくらい持続するかは人によって異なり、また、病気にならないためにどれくらいの免疫があれば良いかは病気によって異なるため、ひとまとめに言うことは難しいですが、麻疹、風疹、日本脳炎、百日咳は子どもだけでなく、大人でも免疫がなければかかってしまう病気ですので、すべて任意接種(費用は個人負担)となりますが、予防接種を受けて、免疫を強くしておくのも選択肢の1つと考えます。

 個人個人それぞれの免疫の状態というわけではありませんが、各年齢における免疫状況の傾向について、最近の調査結果が下記のWebページでご覧いただけますので、参考にしてください。Webページ:https://idsc.niid.go.jp/yosoku/index.htmlグラフ/抗体保有状況から疾病を選ぶと結果を見ることができます。

 例えば、日本脳炎の場合、2009年に30~34歳の人は約40%が抗体(免疫)を持っていますが、残りの約60%の人は抗体を持っていません。

 あとは、その感染症にかかるリスクを考慮して、定期予防接種に含まれていないワクチンであっても、例えば水ぼうそうやおたふくかぜなどは、大人になってからかかると、重症になることが知られていますので、予防接種を受けたことがなく、またかかったこともないのであれば、予防接種を受けておかれると良いと思います。

(2010/6/15 IDSC 更新)
 Q3. 日本脳炎ワクチンの定期接種について

 2009年に、一度問い合わせをいたしました。そのころは新型インフルエンザがかなり騒がれている時期でしたが、春に入り、日本脳炎ワクチンを受けられなかった人対象に受けられる日程は決まりましたでしょうか?

 日本脳炎ワクチンが決して中止ではなくて続けられていたとのことを知りショックでしたので、無料接種できるよう早めのお知らせをいただけると嬉しく思います。


(京都府 30代 女性)

 答え

  日本脳炎の予防接種につきましては、平成22年4月1日付で、厚生労働省から通知が都道府県知事宛に送付されています。

 行政文書で専門的な言葉が多く難しいのですが、平成22年度は3歳のお子様の初回接種については積極的な勧奨が再開されます。受けそびれた方への措置は、3頁目にありますが、今年度は、ワクチンの供給量がまだ十分ではないため、定期接種対象となる年齢の方すべてに積極的な勧奨が再開されるのは難しいようです。 

 その他の年齢の方で、現在、定期予防接種の対象年齢の方については、https://idsc.niid.go.jp/vaccine/dschedule/Imm10-00JP.gifをご覧下さい

 なお積極的な勧奨の再開には至っていませんが、希望される方には定期接種(費用は市町村特別区の全額負担かあるいは一部負担)として受けることが可能となっています。(厚生労働省のQ&A:リンク

 お子様の年齢がわかりませんので、まずは、お住まいの市町村にお問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。

(2010/6/15 IDSC 更新)



 Q2. 海外渡航時の麻疹ワクチンについて

 今年8月に海外研修(2週間程度)があり、50~60名の生徒をカナダに連れて行きますが麻しんの予防接種を2回してから出国した方がよいか迷っています。

 2007年カナダでの日本人生徒の麻しん発症や、それによる他生徒の出国延期を考慮しますと強制ではありませんが参加生徒が2回接種を済ませていただいた方が良いだろうと考えております。ただ、カナダ入国の際2回接種の義務づけはないそうで、どうしたらよいのか決めかねています。お忙しいところ大変恐縮ですが、麻しん予防接種についてご助言いただければ幸いです。

(都内高等学校 養護教諭)
 答え

  カナダは、確かに入国者全員に対して麻疹の2回の予防接種が完了していることを義務付けているわけではありません。しかしながら、おっしゃる通り、2007年の日本の修学旅行生が引き起こした麻疹の事例は、カナダおよび日本の双方に対して、多大なる損害を与えるものであったことは確かです。

 2回の接種を実施している理由は、1回の接種では免疫がつかなかった、あるいは十分ではなかったものに対して、再度、免疫を与えることで、麻疹に対して、一層強固な免疫を確実にすること、加えて、1回目を接種しそびれたものにもう一度チャンスを与えることにあります。ですので、免疫が確実につくということを想定すると、

1.抗体検査は実施せずに、2回目の接種を完了してから渡航する

2.修学旅行前に抗体を検査し、抗体の有無を確認するとともに、抗体のないものに対して再度、接種を実施するが考えられると思います。

1の場合、1回目の接種のチャンスは子どもの頃と思われますが、必ず、母子手帳等を利用して、記録で確認してください。記憶はだめです。子どものころの接種が記録で確認できない場合は、今回が初めての接種であると考え、最低1回、あるいは4週間以上の間隔をあけて2回の接種を済ませてから渡航します。

2の場合、抗体検査の結果は、あくまでも採血時点のものであり、それが永久的に継続するものではないことに注意が必要です。定期接種の対象(高校3年生に相当するもの)であるときは、抗体の有無に関わらず、接種を受けるようにしてください。また、高校3年生に相当する時期に受けるワクチンは麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)が原則です。

 今回は麻疹対策として予防接種を考慮されていますが、風疹も予防が非常に重要な感染症ですので、このあたりの確認もあわせてよろしくお願い申し上げます。

 抗体検査にもいろいろ種類がありますので、検査を実施する臨床医と十分に相談されてください。EIA法やPA法、中和法が望ましいと考えられていますが、医療従事者を対象とした日本環境感染学会から出しているガイドラインによると、基準はかなり高く設定されていますので、そのまま高校生にあてはまるものではありませんが、EIA法であれば16.0以上、PA法であれば1:256以上、中和法であれば1:8以上の抗体があれば十分と考えられています。他にHI法やCF法等がありますが、前述の方法に比べますと感度等に問題がありますので、お奨めできません。

 理想的には、全員が2回目の接種を完了してから渡航するのが望ましいと思いますが、接種や抗体検査等の費用面、および渡航までの時間等に応じて、臨機応変に対応することが肝要と存じます。また、接種を受けたくても受けられない医療上の理由をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますので、その辺りの配慮も必要です。

 カナダではバンクーバーオリンピックに起源すると思われる麻疹患者の発生が見られており、海外からの渡航者と何らかの関連があるのではないかと考えられています。幸い、日本ではないようですが、世界的に“麻疹の輸出・輸入”に関しては、日本よりも厳格に取り扱われるのが現状ですので、十分に準備をされてから渡航してください。

 また、以前、大変なご苦労をされた高等学校の先生のお話しを伺いましたが、渡航に際して、求められる・求められないに関わらず、口頭でワクチンを受けたあるいは麻疹に罹ったことがあるという説明では、全く役に立たなかったことを伺っておりますので、是非、英文での2回の予防接種済み証明書(あるいは最近受けた抗体検査結果を英文で書いたもの)を持参して渡航されることをお奨めいたします。

(2010/5/28 IDSC 更新)



 

 

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