国立感染症研究所

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2015年から検出が続いているG型ムンプスウイルスの分子系統解析―大阪府

(IASR Vol. 37 p.189-191: 2016年10月号)

大阪府では全国的な傾向1)と同様に2015年の夏季より流行性耳下腺炎の患者数の増加傾向が認められ, 2016年第30週まで増加が続いた。流行曲線では2016年第30週をピークとした2年にわたる一つの大きな流行であるようにみえる(図1)。しかし, 検出されたムンプスウイルスの分子系統解析を実施した結果, 流行時期により検出される遺伝子系統が変化していることが明らかになった。

調査方法

1. 対象および疫学情報収集
2015年4月1日~2016年8月26日の期間に大阪府内の定点医療機関から当所に搬入された流行性耳下腺炎および無菌性髄膜炎患者検体のうち, ムンプスウイルス遺伝子が検出された合計51名分(流行性耳下腺炎患者検体:35, 無菌性髄膜炎患者検体:16)の検体を対象とした。検体情報は, 感染症法に基づく感染症発生動向調査事業によって得られた調査票より収集した。

2. ウイルス遺伝子の検出および分子系統解析
検体から抽出したウイルスRNAに対し, ムンプスウイルスSH領域を標的としたnested RT-PCR2)を実施した。さらに, 増幅産物のダイレクトシークエンスを行い, 得られた塩基配列に対する分子系統解析を実施した。

結 果

51名中, 男性は34名(67%), 患者年齢の中央値は6歳7か月(範囲:1歳9か月-14歳4か月)であった。ムンプスウイルス遺伝子は, 2015年5月~2016年8月まで2015年9月以外は毎月検出され, 2016年6月に最も多く検出された(図2)。遺伝子型はすべてGで, 分子系統解析を実施したところ, Geの1系統およびGwの4系統に分類された。検出された時期で色分けすると, 2015年5月~8月に検出された株(青)はすべて系統1に分類され, 2015年10月~2016年4月に検出された株(黄)は系統1および2に, 2016年5月以降に検出された株(赤)はすべての系統に分散した(図3)。

考 察

2000年以降, 国内のムンプスウイルス感染症の流行は遺伝子型Gのみで占められている。GはさらにGeおよびGwの2系統に分類され3), 2015年以降, 石川県での流行ではすべての株がGwであったと報告されている4)。大阪府においても2016年5月までの検出株についてはすべてがGwに分類されたが, 流行曲線の急激な立ち上がりに伴いGeを含む5系統に分散した。

通常, 学童期が好発年齢となる感染症は長期休暇により流行が収束に向かうと考えられる。ムンプスウイルス感染症の場合, 潜伏期間が2週間程度と比較的長いため, 8月上旬までは流行が収まらないことが想定される。しかし, 今季の流行は, 予想に反して夏休みが終了する時期まで持続していた。今回の分子系統解析の結果, 最流行期には検出されたウイルス遺伝子の系統が多様に変化したことが明らかになった。これは, 夏季休暇中に旅行等で感染者が移動することで, 流行している他地域から異なる系統のウイルスが持ち込まれたためと推察された。

大都市圏では人の往来が活発なため, 地域へのウイルス流入や流出が起こる確率が高い。流行を監視する観点からもウイルス遺伝子の詳細な分子系統解析が重要であると考えられた。

 

参考文献

大阪府立公衆衛生研究所
 中田恵子 西村公志 弓指孝博 久米田裕子
国立感染症研究所ウイルス第三部第三室 木所 稔

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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