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カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(carbapenem-resistant Enterobacteriaceae, CRE)病原体サーベイランス, 2018年

(IASR Vol. 40 p157-158:2019年9月号)

2017年3月の通知(健感発0328第4号)に基づき, カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)病原体サーベイランスが開始された。本稿では, 検体採取日が2018年1月1日~12月31日の1,684株(2019年6月28日現在)の報告概要を示す。

1,684株のうち, 感染症発生動向調査(NESID)届出IDの記載があった1,425株(84.6%)は1,402名由来であった。NESID届出(患者届出)数は2,289例(2018年第1~52週, 2019年5月31日現在)であり, 患者届出の約70%の患者分離株の試験検査結果が報告されたと考えられた。

1,684株の分離検体は, 尿(n=450, 26.7%), 血液・髄液(n=395, 23.5%), 呼吸器検体(n=300, 17.8%), 腹腔内検体(n=153, 9.1%), 皮膚・軟部組織検体(n= 137, 8.1%), 穿刺液(n=86, 5.1%)の順に多かった。菌種は, Klebsiella aerogenes(n=631, 37.5%), Enterobacter cloacae(n=460, 27.3%), Klebsiella pneumoniae(n=168, 10.0%), Escherichia coli(n=154, 9.1%), Serratia marcescens(n=80, 4.8%), Citrobacter freundii(n=39, 2.3%)の順に多く, 分離検体および菌種の分布は患者届出とほぼ同様であった。

各検査実施数と陽性数をに示す。1,684株のうち, いずれかのカルバペネマーゼ遺伝子陽性株は297株(17.6%)であった。カルバペネマーゼ遺伝子陽性株の遺伝子型内訳は, IMP型が254株(85.5%)と大半を占め, NDM型10.4%, KPC型3.4%と続いた。2017年の遺伝子型内訳1)はIMP型95.0%, NDM型3.3%, KPC型1.3%であったことから, 海外型カルバペネマーゼ遺伝子であるNDM型, KPC型の増加が示唆された(本号12ページ)。また, GES型2株(いずれもGES- 24), IMI型(IMI-1)1株が報告された。菌種別のIMP型検出割合は, E. cloacae 17.8%, K. pneumoniae 37.5%, E. coli 41.6 %であり, CREとして最も報告数の多いK. aerogenesでは2株のみであった。IMP型検出254株の菌種は全国ではE. cloacae(n=82, 32.3%), E. coli(n=64, 25.2%), K. pneumoniae(n=63, 24.8%)の順に多いが, 近畿はE. coli(55.1%), 中国四国はE. coliK. pneumoniae(いずれも34.6%)が最も多く, 2017年報告1)と同様の地域差を認めた()。IMP遺伝子型別報告のある18府県123株の内訳は, IMP-1が16府県57株ですべての地域より報告があったのに対し, IMP-6は6府県64株で主に近畿, 中国四国より報告された。IMP-11(近畿)とIMP-19(関東甲信静)が1株ずつ報告された。

1,684株のうち原則実施する検査項目がすべて報告された1,653株(98.2%)を, 患者届出数2,289例で除した値を報告率とすると, 72.2%となり, 2017年の48.1%2)に比べ大幅に上昇した。また都道府県別報告率の中央値は85.7%で2017年の55.6%に対して全国的に上昇したものの, ブロック別報告率は北海道東北新潟73.2%, 関東甲信静66.9%, 東海北陸46.2%, 近畿90.0%, 中国四国86.9%, 九州76.0%と地域によってやや差がみられた。カルバペネマーゼ遺伝子検出率や検出菌種には地域差があることから, さらに報告率を上げ, 今後も全国的かつ継続的なCRE病原体サーベイランスの実施により, カルバペネマーゼ遺伝子保有状況やその推移を正確に把握していくことが必要と思われる。

 

参考文献
 
 
国立感染症研究所薬剤耐性研究センター
国立感染症研究所感染症疫学センター
全国地方衛生研究所

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan