中東呼吸器症候群(MERS)のリスクアセスメント(2017年6月16日現在)
国立感染症研究所
1. 事例の概要と日本での経緯
2012年9月以降、世界では、中東地域に居住または渡航歴のある者を中心に中東呼吸器症候群(MERS)の患者が報告されている。2017年6月16日現在、日本での報告例はない。ヒトコブラクダがMERS-CoVの主宿主であり、ヒトへの感染源となっているが、限定的なヒト-ヒト感染が、感染対策が不十分な医療施設や家族内を中心に確認されている。2015年、韓国では中東で感染した1人のMERS患者を発端として、主に医療機関で感染が拡大し、計186名の確定患者が報告された。サウジアラビアでも院内感染による患者の報告が断続的に報告されている。わが国では、中東呼吸器症候群(MERS)は2015年1月21日付けで、感染症法上の2類感染症に追加された。
また、平成27年9月18日健感発0918第6号(以 下「平成27年9月18日通知」)により、MERSに罹患した疑いのある患者が発生した場合の情報提供を求めてきた。2015年9月19日以降これまでに、渡航歴、接触歴、症状などからMERSの検査を実施した事例があったが、結果は全て陰性であった。全ての患者にアラビア半島またはその周辺の国への渡航歴があった。接触歴については、ラクダの騎乗、ヒトコブラクダの騎乗と生乳摂取、MERS患者との接触の疑い等であった。これらの所見から、これまでのMERS疑似症の定義では、蓋然性が低い患者もMERS疑似症として取り扱われていたことが推察される。
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