高病原性鳥インフルエンザの発生状況
2016年12月21日現在
高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)
世界のトリでの発生状況(FAO: http://empres-i.fao.org/eipws3g/に基づく):
低病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスは1975年以降,広い地域で検出されていたが,高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスの家禽での最初の発生は2014年であり,中国から報告された.2016年1月から同年12月20日までの期間に報告されたトリでのアウトブレイクは,5か国から50件である(韓国25件,ベトナム8件,中国7件,日本8件,香港2件).現在のところ,高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスはヒトに感受性を持つような変異やタミフル耐性になるような変異は見られず,また,哺乳動物に対して病原性が強くなる性質を持つような変異も見られていない.
日本のトリでの発生状況(環境省HP: http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/に基づく):
2016年10月31日~12月20日の期間,14道県から高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスが陽性となったトリ等の報告例があった(北海道5例,青森県4例,秋田県6例,岩手県2例,新潟県10例,福島県1例,宮城県2例,栃木県1例,茨城県5例,愛知県8例,三重県1例,兵庫県1例,鳥取県5例,鹿児島県30例).トリの内訳は,野鳥56例,家禽5例,環境試料6例,動物園の飼育鳥14例であった.また,宮崎県では家禽における鳥インフルエンザ感染について確定検査中である.各都道府県の対応としては,秋田県の動物園では園内のトリを132羽殺処分,青森県では家禽23,080羽を殺処分,新潟県では家禽55万羽を殺処分,愛知県の動物園では鳥インフルエンザの感染が確認された2羽を殺処分し,動物園エリアを休園とし,北海道では家禽28万羽を殺処分している.また,鳥インフルエンザ疑い例或いは,確定例が報告された道県では,何れも野鳥監視重点区域での監視を強化している.これまでのところ,日本で分離された高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスについてもヒトに感受性を持つような変異は検出されていない.
世界のヒトでの発生状況:
鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスでヒトへの感染が報告されている症例は下記の表の通りである.2014年5月に初発例が確認され以後,2016年12月5日現在までに計16例(うち死亡10例)の報告があり,すべて中国からである.年齢中央値は40歳(11~65歳),男性7例,女9例だった.16例中13例に鳥との接触を認めている.ヒト-ヒト感染の報告はない.
表. 鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスのヒトへの感染例 n=16, 2014~2016年(12月21日現在)
*WHO本部およびWHO西太平洋地域事務局の情報に加え,他の政府系公式情報源より得られた情報を含む
高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)
世界のトリでの発生状況(OIE: http://www.oie.int/animal-health-in-the-world/update-on-avian-influenza/2016/に基づく):
高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)ウイルスは2014年にはじめて確認され,年々新規の報告国は増加している.現在流行中の株は,2016年6月にロシアにおいて野鳥から検出され,同年11月頃より野鳥の渡りの経路に沿って、アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカから立て続けに報告されている.現在,20か国(オーストリア,クロアチア,デンマーク,ドイツ,ハンガリー,インド,イスラエル,オランダ,ポーランド,ロシア,スイス,イラン,スウェーデン,フィンランド,ルーマニア,フランス,エジプト,セルビア,チュニジア,台湾)から報告されている.また,2016年12月19日、韓国の農林畜産食品部は、ソウルの南に位置する京畿道で採取された野生の鳥の糞試料から高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)ウイルスが検出された(*)と報告した2014年/2015年シーズンの高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)の解析では,ヒトに感受性を持つような変異は検出されていない.
*出典(韓国語サイト):http://www.mafra.go.kr/list.jsp?newsid=155448883§ion_id=b_sec_1&pageNo=1&year=&month=&listcnt=5&board_kind=C&board_skin_id=C3&depth=1&division=B&group_id=3&menu_id=1125&reference=&parent_code=3&popup_yn=&tab_yn=.日本のトリでの発生状況(環境省HP: http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/に基づく):
日本では,2014年にはじめて家禽および野鳥から高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)が検出された.2016年は現在のところ,家禽および野鳥のいずれからも高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)は検出されていない.
世界のヒトでの発生状況:
現在までのところ,高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)のヒトの感染例は報告がない.