国立感染症研究所

高病原性鳥インフルエンザの発生状況

2017年5月10日現在

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高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)

世界のトリでの発生状況

(FAO: http://empres-i.fao.org/eipws3g/ および農林水産省HP: http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/に基づく):
低病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスは1975年以降,広い地域で検出されていたが,高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスの家禽での最初の発生は2014年であり,中国から報告された.2016年1月から2017年4月12日までの期間にFAOに報告されたトリでのアウトブレイクは,6か国と2つの地域から166件(内訳は,上記URL参照)である.哺乳類への感染として、中国(1)と韓国(2)でネコへの感染が報告されている.しかし現在のところ,高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスはヒトに感受性を持つような変異やタミフル耐性になるような変異は見られず,また,哺乳動物に対して病原性が強くなる性質を持つような変異も見られていない.

日本のトリでの発生状況

(環境省HP: http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/および農林水産省HP: http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/ に基づく):
2016年11月以降、2017年4月31日の期間に報告のあった高病原性インフルエンザA(H5N6)ウイルス陽性となったトリ等の事例は,家禽においては9道県12事例,野鳥等については22都道府県218事例であった(内訳は,上記URL参照).これまでのところヒトに感受性を持つような変異は検出されていない.

世界のヒトでの発生状況:

鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスでヒトへの感染が報告されている症例は下記の表の通りである.2014年5月に初発例が確認され以後,2017年4月18日現在までに計16例(うち死亡10例)の報告があり,すべて中国からである.年齢中央値は40歳(11~65歳),男性7例,女9例だった.16例中13例に鳥との接触を認めている.ヒト-ヒト感染の報告はない.

表. 鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスのヒトへの感染例 n=16, 2014~2017年(4月18日現在)

virdfluH5N6 20170510

*WHO本部およびWHO西太平洋地域事務局の情報に加え,他の政府系公式情報源より得られた情報を含む

 

高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)

世界のトリでの発生状況

(OIE HP: http://www.oie.int/animal-health-in-the-world/update-on-avian-influenza/2016/ ,FAO HP: http://www.fao.org/AG/AGAINFO/PROGRAMMES/EN/empres/H5N8/situation_update.html および農林水産省HP: http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/に基づく):

2016年以降,2017年4月18日現在,43か国(内訳は,上記URL参照)から報告されている. 韓国については韓国農林畜産食品部によると2016年11月から2017年4月10日までに,家禽で38事例,野鳥で13事例の報告がある.2014年/2015年シーズンの高病原性鳥インフルエンザA(H5N8)ウイルスの解析では,ヒトに感受性を持つような変異は検出されていない.

日本のトリでの発生状況

(環境省HP: http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/に基づく):

日本では,2014年にはじめて家禽および野鳥から高病原性鳥インフルエンザA (H5N8) ウイルスが検出された.2016年以降は現在のところ,家禽および野鳥のいずれからも高病原性鳥インフルエンザA (H5N8) ウイルスは検出されていない.

世界のヒトでの発生状況:

現在までのところ,高病原性鳥インフルエンザA (H5N8) ウイルスのヒトの感染例は報告がない.

 

高病原性鳥インフルエンザA(H7N9)

世界のトリでの発生状況

(FAO HP: http://www.fao.org/ag/againfo/programmes/en/empres/H7N9/situation_update.html およびhttp://empres-i.fao.org/eipws3g/ に基づく):

高病原性鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは2017年1月に中国で初めて確認され,4月5日までにFAOに報告のあったトリ等の事例は,2か国から(中国,アメリカ合衆国)であった.中国の事例は,広東省のトリと環境中から,湖南省の大規模農場のトリから検出された.アメリカ合衆国農務省の報告によると,検出されたウイルスは北アメリカの野鳥に由来するものであり,中国で流行している株とは遺伝子学的に異なるものであった.

日本のトリでの発生状況:

2013 年 3 月以降、日本では,家禽および野鳥のいずれからも高病原性および低病原性鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは検出されていない.

世界のヒトでの発生状況:

(FAO HP: http://www.fao.org/ag/againfo/programmes/en/empres/H7N9/situation_update.html およびWHO HPに基づく)

2016年10月以降の第5波では,高病原性鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染事例は,3例(中国2例,台湾1例)報告されており,いずれの症例も中国広東省在住もしくは広東省へ旅行歴があった.この高病原性ウイルスは家禽に対して高病原性であるが,現時点ではヒトでの病原性や伝播性に対する影響を示唆する科学的根拠は得られていない(http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/avian_influenza/riskassessment_AH7N9_201702/en/)。また,これらの高病原性ウイルスによるヒト感染例ではノイラミニダーゼ阻害剤に対し低感受性を示すウイルス遺伝子変異が検出された(http://www.who.int/csr/don/27-february-2017-ah7n9-china/en/)が,この抗ウイルス剤耐性は当該症例に対するノイラミニダーゼ阻害剤の投与により誘導された可能性が考えられる( http://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flutoppage/2276-flu2013h7n9/a-h7n9-niid/7161-riskassess-170327.html#ref13)。

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