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2012年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第22週以降に大阪府で保育所の給食を原因とした食中毒(O26 VT1)が発生した影響で、第23週に156例と一時的なピークを形成した。その後第24~29週までは横ばいで、第30週から再び増加し始め、第32週の289例をピークに、以降減少し、第36週135例、第37週は122例であった(図1)。本年第37週までの累積報告数2,708例は、2000年以降の各年の同週までの累積報告数と比較して2003年、2000年、2002年に次いで4番目に少ない報告数である(2000年2,628例、2001年3,805例、2002年2,652例、2003年1,945例、2004年2,922例、2005年2,740例、2006年2,942例、2007年3,230例、2008年3,301例、2009年2,755例、2010年3,272例、2011年3,131例)。また、患者(有症状者)に絞った累積報告数は、2007年以降*で比較すると1,700例で最も少なく(2007年2,173例、2008年2,197例、2009年1,891例、2010年2,164例、2011年2,167例)、さらに例年最も多い血清群であるO157感染(複数菌感染を除く)の患者に限った累積報告数でみると、2012年は1,030例で最も少ない(2007年1,667例、2008年1,535例、2009年1,352例、2010年1,602例、2011年1,339例)(図2)。
第1~37週の累積報告数2,708例について都道府県別にみると、北海道(279例)が最も多く、次いで大阪府(225例)、福岡県(176例)、東京都(169例)、岡山県(142例)、愛知県(123例)、神奈川県(108例)、宮城県(107例)の順となっている〔速報グラフ(PDF)2012年第37週「都道府県別腸管出血性大腸菌感染症累積報告状況」参照;http://www.niid.go.jp/niid/ja/ehec-doko.html〕。
性別では男性1,256例、女性1,452例、年齢群別では0~9歳898例(うち5歳未満592例)、10~19歳378例、20~29歳373例の順に多かった。
第32週以降に起きた集団発生として、特に北海道で白菜の浅漬けを原因とした食中毒(O157VT1・VT2)が発生し、高齢者関連施設内での集団発生を含め、道内の広域にわたり、かつ道外でも患者が確認され、これまでに当該食中毒患者と認定されたのは延べ169例で、そのうち死亡が7例である(9月21日正午現在、北海道ならびに札幌市発表資料より)。
保育施設における集団感染も目立っており、第32週に長野県(O26 VT1)、岡山県(O26 VT1)、宮崎県(O111 VT1・VT2、O26 VT1)で、第33週に宮崎県(O103 VT1)などでそれぞれ報告されている。
また、白菜の浅漬け以外の食中毒として、第34週に青森県の飲食店(O157 VT1・VT2)、および三重県の飲食店(O157 VT1・VT2)で、第37週には山形県の焼肉店(O157 VT2)で発生している。
腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第37週までに累計66例(男性27例、女性39例)報告されており、年齢群別では0~4歳25例、5~9歳17例、10~14歳2例、15~64歳9例、65歳以上13例であった。死亡例は7例(4歳男性1例、4歳女性1例、70代男性2例、80代女性2例、90代以上女性1例)報告されており、6例がO157(VT1・VT2 3例、VT2のみ3例)、1例がO不明VT1・VT2の感染であった。
例年の状況から、発生のピーク時期を過ぎたと考えられるが、過去には10~11月に大規模な食中毒や集団発生が起きたこともあり、引き続き予防対策の徹底が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。特に、保育施設における集団発生が多くみられており、日ごろからの注意として、オムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要である。また、過去には動物とのふれあい体験での感染と推定される事例も報告されており、動物との接触後の充分な手洗いにも注意が必要である。
* 腸管出血性大腸菌感染症の届出基準は、2006年4月よりHUS発症例に限って、菌分離されていなくても、便からのVT検出あるいは血清でのO抗原凝集抗体又は抗ベロ毒素抗体の検出によって診断した場合に届出することとなった。
(補)菌の検出状況については、(グラフ)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1524-iasrgb.html、(集計表)http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/1525-iasrb.html をご参照ください。 |