国立感染症研究所

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2011~2017年の沖縄県における梅毒患者発生状況

(IASR Vol. 39 p47-48: 2018年3月号)

国内の梅毒患者届出数は2010年以降, 増加に転じており1), 本県においても1999~2010年まで2~11例であった届出数が, 2011年以降は11~43例と増加している(図1)。女性患者も2011年以降は毎年届出され, 2017年は1999年以降で最多となった。そこで今回, 本県の梅毒患者発生状況の詳細を把握するため, 2011~2017年に県内で届出された梅毒患者の性別, 年齢, 推定感染経路および病型を集計し, 検討を行った。

2011~2017年, 本県では181例の梅毒患者が届出された。そのうち男性は160例 (88.4%) で年齢の中央値は38歳(範囲0-85歳), 女性は21例(11.6%)で年齢の中央値は39歳(範囲24-87歳)であった。推定感染経路は, 男性では同性間性的接触(異性間との重複を含む)が83例(51.9%)と最も多く, 次いで異性間性的接触38例(23.8%), 性的接触(詳細不明)24例(15.0%), その他・不明14例(8.8%)であり, 2016年には1例(0.6%)の母子感染があった。女性では異性間性的接触が11例(52.4%)と最も多く, 次いでその他・不明6例(28.6%), 性的接触(詳細不明)4例(19.0%)であり, 同性間性的接触および母子感染はみられなかった。

同性間性的接触による患者, 男性83例と, 異性間性的接触による患者, 男性38例と女性11例の合計49例について比較, 検討を行った。患者の年代は, 同性間性的接触では20~40代が22~25例(26.5~30.1%) と多くを占めた(図2)。異性間性的接触では, 20代および30代が14例および17例(28.6%および34.7%) と多くを占め(図3), 少数ではあるが, 11例の女性のうち, 3例が20代, 7例が30代であった。そして, 異性間性的接触では32例(65.3%) が, 特に20代では14例中12例(85.7%) が2016年以降の届出であった(図3)。

患者の病型は, 同性間性的接触では早期顕症梅毒II期が35例(42.2%) と最も多く, 次いで無症状病原体保有者30例(36.1%), 早期顕症梅毒I期13例(15.7%), 晩期顕症梅毒5例(6.0%) であった。異性間性的接触では早期顕症梅毒II期が25例(51.0%) と最も多く, 次いで早期顕症梅毒I期13例(26.5%), 無症状病原体保有者9例(18.4%), 晩期顕症梅毒2例(4.1%)であった。

2011~2017年に本県で届出された梅毒患者は, 約9割が男性で, その約半数を占めた同性間性的接触による患者は, 20~40代と幅広い年代でみられた。本県では, 男性同性愛者を対象とした性感染症に関する普及啓発事業を実施している。異性間性的接触による患者に対して同性間性的接触で無症状病原体保有者が多いのは, この事業が積極的な検査受診に繋がっているためと考えられた。しかし, 早期顕症梅毒II期が多いことから, 早期顕症梅毒I期の症状について啓発を行い, 早期の医療機関受診を促す等の取り組み強化が必要と考えられた。

男性患者の約4分の1と女性患者の約半数を占める異性間性的接触による患者は, 2016年以降, 20~30代で, 特に20代を中心に急増していたことから, 若年層に向けた普及啓発が必要と考えられた。患者は早期顕症梅毒II期が多いことから, 同性間性的接触と同様に, 早期顕症梅毒I期の症状について啓発が必要である。また, 同性間性的接触と異なり, II期に次いでI期が多いことから, 県内保健所で実施している梅毒等の無料・匿名検査の利用や, 医療機関受診や, 女性であれば妊婦健診により感染が判明した際の, パートナーの検査受検を啓発する必要があると考えられた。

女性患者の発生状況については今回, 患者数が少なく, 詳細は不明である。しかし, 全国の傾向2)と同様に女性患者の届出も増加しており, 2016年には先天梅毒症例が1例届出された。引き続き女性患者の発生動向を注視するとともに, 早期の対策が重要と考えられた。

 

参考文献

 

沖縄県保健医療部地域保健課 仁平 稔 山内美幸
沖縄県衛生環境研究所企画管理班 伊波善之

Copyright 1998 National Institute of Infectious Diseases, Japan

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